第6話 エルヴィーノとメルヴィ
メルヴィが産まれて数年経った。
メルヴィの事はエルフ達に知られないように細心の注意を払っていた。
エルヴィーノとは約30歳下の女の子で、家に居る時は嬉しくてずっと世話をしていた家族だ。
幼い女の子が可愛くて、可愛くて仕方がなかった。
初めての妹と呼べる存在に家族が増えて楽しくて仕方なかったのだ。
毎日毎日ベッタリと一緒に過ごすが、メルヴィが言葉を話せずに
因みにダークエルフは3歳までは人族と同じ成長で、そこからが異常に発育が遅くなる。
だから30歳で妹が出来たが、エルヴィーノの見た目は人族の5歳児程度の大きさだ。
メルヴィが20歳まではエルヴィーノから魔法を教えるのは禁止されていた。
子供が子供に魔法を教えることは駄目だと家族で決めた取り決めなので、メルヴィが教えてと甘えてきても「ダ~メ。大人になってからだよ」と言うと「わたし、もう大人だもん」と言い返されて、オリビアに説得してもらっていた。
端から見ていると小さな子供同士の可愛いやり取りだったのだろう。
20歳を越えるとエルヴィーノから魔法を教えることが解禁になり、少しずつ色んな魔法を覚えさせていった。
と言っても見た目は人族で例えるなら五歳児程度のメルヴィだ。まだまだ幼い。
勿論、純粋なダークエルフのメルヴィは神聖魔法が使えないので、それ以外の
まずは初期魔法で徐々に連度を重ねて行くのだ。
月日を重ねてアウクシリア
どれも基本となる初期魔法だ。
ある日、家でリーゼロッテとオリビアの話し声を偶然に聞いてしまった。
「そろそろメルヴィにも新しい服が必要ね」
「はい、今の服も大分小さくなってきましたから」
メルヴィの衣服はリーゼロッテとオリビアの服を仕立て直した物だ。
エルヴィーノの衣服は一応公認なのでリーゼロッテが手を回して入手しているが。
メルヴィは隠し子なので全て自分達で用意しなければならない。
自分達の成長速度が遅いから何十年も同じ服を着ていられるが、流石にもう小さくなっていた。
古い服を子供用に仕立て直している2人を見ていたら、幼いながらもエルヴィーノも役立つ事を考え始めていた頃だった。
メルヴィは10歳を過ぎて両親から、王妃に相応しい知識と礼儀作法を
幼いメルヴィにお嫁さんが何かは理解しなかったが、両親を見ている内に段々と解って来ていた。
メルヴィ目線
「物心付く頃には既に私にベッタリくっついて来て、こっそりと魔法を教えてくれるお兄ちゃん。お母さんと"リーゼ"からも早く大きくなってと言われるけど、今は魔法が上達する方が面白いし、お兄ちゃんと一緒に森を駆け巡る方が面白かった。勿論料理も好きよ。食べるのはもっと好き」
でも片付けるのが嫌いなメルヴィはオリビアにいつも怒られていた。
「お兄ちゃんは、魔法を教えてくれるのは良いけど、自分の都合でしか森に連れて行ってくれないし、私が誘っても魔導書を読んでいたら無視されて相手もしてくれないし。どうせまだ難しい文字は読めませんよぉだ。それにいつもお昼からなのよねぇ。朝から行けば良いのにさぁ」
多少の不満も有りました。
メルヴィの一日は、朝オリビアに起こされて身だしなみを整えて、朝食の準備をしてから父のデイビットを起こし、エルヴィーノを起こしに行く。
リーゼロッテは、ほぼオリビア同じ時間に起きていて一緒に朝食を作っている。
家族は少ないが女三人で手間暇かけて手の込んだ料理を作るのが日課だ。
デイビッドとエルヴィーノが魔法で畑を耕し、種を撒き野菜の手入れは全員でする。
移り住んだ早々からリーゼロッテが用意した山羊と羊も繁殖し、今では15頭居る。
徐々に増築した山羊達の小屋も、デイビットが作った物だ。
初期の小屋と比べると、五倍なっていると聞いていた。
山羊たちの横にチーズを作る場所も作ったからだ。
これは全てリーゼロッテの一言で始まったと言う。
”昔を思い出して食べたい”と。
それに反応したのがオリビアだ。
直ぐに行動に移したが、その都度用意するよりも自分達で作る方が面白いので、どうせなら羊も飼育して服も自分達で作ろうと、当時の女性2人は考えたそうだ。
まずはチーズを作る方法が出ている本を入手してから山羊を手配した。
どちらもリーゼロッテの極秘ルートだ。
そこは深く追求しないオリビアとデイビット。
飼育小屋はデイビットが用意し、山の中腹に草原地帯が有り、毎日山羊達を連れて行くのがデイビットの日課になっている。
エルヴィーノも当初は手伝っていたが、魔法と魔導具に目覚めてからはよっぽどの事が無い限り手伝わなくなっていた。
お蔭で朝食を済ませたら父と一緒に山羊達と山を登るのが日課のメルヴィだった。
そんな毎日でも教えてもらったカパシダ
アウクシリアル・デ・コンバッテと、
そしてメルヴィが50歳位になると、急にエルヴィーノに対して距離を取って来た。
ある時よそよそしいメルヴィにリーゼロッテが聞いたらしく「
エルヴィーノはその意味が全く解らず「なんで?」と聞き返していた。
息子には教えずに、可愛い嫁になるメルヴィ教えてあげた。
「それはね、恋って言うのよ。胸がキュンキュンするでしょ?」
うなずくメルヴィと2人で恋話に花を咲かせていたリーゼロッテだった。
エルヴィーノを異性として意識し始めたメルヴィは日に日に大人びて行ったが、一方の思い人は
この頃、性への興味は女の子の方が上だと、随分後になって聞かされた鈍感な男の子だった。
メルヴィの50歳台は”お兄ちゃん”と一緒に
まだまだ幼さの残る”兄妹”だが要領の良い妹と、異性として意識されている兄は幸せな日々を送っていた。
そしてエルヴィーノが100歳で奉公に出る時は、メルヴィが70歳間近くだ。
その事を初めて聞いた時はショックで山羊達と泣いていたと聞いたメルヴィ。
大好きなお兄ちゃんが家族の為に働きに出る事で、とても大切な事だと両親に
リーゼロッテからも「メルヴィが早く大きくなって、エルヴィーノと赤ちゃんを作って欲しいわ」と言われ顔を真っ赤にしていたと言う。
☆
メルヴィの幼少期でした。
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