第4話 魔法習得の準備期間
エルヴィーノは幼いころ大人3人の真似をして、こっそりと魔法を使っていた。
デイビットを見て。
ゴミの焼却で使っていた
狩りの時に使う
畑を耕す時に使っていた
オリビアを見て。
家の片付けや掃除で使っていた、手が離せない時に物を浮かせておく浮遊魔法(デイビットが使う魔法と違い、グラビダッドの簡易版だ)、食材や大切な物を保管して置く
母親のリーゼロッテを見て。
身体や衣服が汚れたら
暑い日に冷たい水を飲む時に入れる氷を作る
あの頃エルヴィーノは、それらの魔法がほとんど家の中で使うモノだと思っていた。
唯一、デイビットと狩りに行った時に遠くから隠れて見ていたのを思い出し
細分化された魔法は魔力の抑えられている今のダークエルフ一族が使いやすい低級の魔法だった。
自宅にはエルヴィーノのために母親が用意してくれた魔導書や本が沢山あった。
その中には冒険譚の本も含まれていた。
エルフの世界紀行や、冒険譚、人族の物語など、少年の心をくすぐられる物ばかりだった。
まさか、将来自らが執筆するなどとはこの頃のエルヴィーノには夢にも思わなかった。
それらを読み40歳位の時に1人森の中で魔法の練習をしていた。
以前デイビットに聞いた事を思いだす。
自分と回りの魔素を感じとり、頭の中で魔法を想像する。
そして体の中の魔素を感じとり放出したい場所に集中する。
手のひらや指先など集中した先に体から魔素が出てくる。
それを攻撃対象にブッ飛すわけだが、回りの魔素を感じていた方が命中しやすい。
生物の魔素は自然の植物などより魔素が強いので命中しやすくなる。
魔物となればなおさらだ。
ただし、上級の魔物になれば魔素を抑え弱く見せて、油断させてから襲いかかる怖い魔物もいるから注意しろとデイビットに言われたのを思いだす。
エルヴィーノは一本の木に目印を付け、離れた場所から目印に集中する。
右手を前に出しネグログロボを想像する。
体の中で何かが反応し肩から腕を通り手のひらに8cm位の黒い塊が出来る。
確認して木の目印に飛んで行けと念じると、ヒュンッと飛んで行き目印の木に当たりはじけた。
「何か・・・イマイチ」
エルヴィーノは首輪を外し、もう一度ネグロ・グロボと念じる。
すると、パッと40cm位の大きさで黒い玉が右手に浮かぶ。
あの木にぶつかれと思った途端!
バキバキッって音がして70cmはある木の幹に穴があり木が倒れてきた。
エルヴィーノはもうビックリしてその場を離れた。
木が倒れてから木の側に行き確認すると、丸くえぐりとられた後があった。
「ちょっとまずいな・・・」
しばしば考えて、首輪をつけて最初からやり直した。
要するに首輪を取れば普通に魔法は使えるが強弱のコントロールがまだできないので、首輪を付けたまましばらく練習してみる。
今は家族に見つからないのが重要だと思った。
エルヴィーノはオスクロ・マヒアの練習ばかりしていたので、たまに野生動物を見つけると魔法で仕留めていた。
オスクロ・マヒアは5cmのネグロ・グロボを1度に3個出して対象物に飛ばせ、幹が50cm位の木なら貫通出来る。
また、放つと直ぐに連続して使える。
そして形状も変えるようになる。
初めはデイビットが使っていた槍のように先が三角の形。
ただし、これは大きな猪など大物は致命傷にならないので更なる進化をさせる。
そしてオリビアが夕食の準備している時、エルヴィーノは天啓を受けた!・・・気がした。
包丁で肉や野菜を切っていたエルヴィーノは手伝いをやめて便所に入る。
便所で1人妄想する。
ネグロ・グロボや
「包丁は切るけど、魔法だとどうしよう?推進力だけで大丈夫かな?」
答えは出ず、自室に入って本を見ていたら声をかけられた。
「ご飯が出来たわよ!」
リーゼロッテの声がしたので、立ち上がり本を本棚に差し込んだ時に目に入ったある物!
エルヴィーノは一瞬固まり「これだ!」っと叫ぶ!
そこにあったのはデイビットが昔作ってくれた木トンボだった。
「そうだ!回転させれば良いんだ!」
そう思いデイビットに抱きついて礼を言う。
「ありがとうデイビット!」
「どうした?」
頭を傾げながら聞いてくるが新しい魔法の参考になったとは言えないので「木トンボありがとう!」と言う。
訳がわからないデイビットは自分の空腹を優先させた。
「そんな事より夕飯食べるぞ」
その日は明日の練習の事でなかなか眠れないのであった。
翌日午後から山に入り魔法の練習をする。
横向きで薄く平で長い黒い板をつくる長さ50cm位、幅10cm位。
(あとはこれを回転させる・・・回らない)
飛んで行け!と念じるとヒュンってカンッみたいに木に刺さり大木の半分ほどで止まる。
「やっぱり回転だな」
とりあえず小さな楕円形のネグロ・グロボを作りイロイロやってみた。
あまり想像出来ず、終日練習したがうまくいかない。
翌日リーゼロッテが魚を食べたいと言うので釣りに行く。
しばらく川を下り、デイビットから聞いていた釣り場に到着。
釣りを初めて回転魔法の事を考えていた。
すると、落葉が流れてきて大きな岩の流に入りくるくると渦を巻いていた。
エルヴィーノはしばし呆けて眺めていたりするといくつか落葉が集まり、落葉の塊がスッと渦に飲み込まれて行くのを見て閃いた。
1枚の落葉。
1度の回転魔法・・・
「フッ、俺って」
辺りを警戒し釣竿を置き、
そして、回転、強く回転と念じる。
ゆっくりと回りだす。
「よし!」
続けて回転、回転、回転・・・と更に同じ魔法をかけると回転が早くなり、川の向こう岸に行けと念じると、ヒュンって見えなくなると同時に木がバサバサ倒れて行く。
「これはかなり危険だ。練習しよう」
釣りを再開しリーゼロッテのおみやげを5匹釣り帰宅する。
練習は明日だ。
次の日から何度回転させれば良いかの実験を、回転回数を増やしながら試して見る。
石を貫通もしくは斬るには回転を5度重複させる必要があった。
エルヴィーノは更に工夫して回転させる魔法を5度かける魔法を1度にする魔法を考えだした。
名前は
更に回転数は名称の後に数字。
ロタシオン5とかロタシオン10とか。
回数が多くなると魔力を消費する。
首輪をしている状態では、ネグロ・タブラ1枚にロタシオン5が限度。
首輪無しだとネグロ・タブラが8位出た時はビックリした。
それぞれにロタシオン20が出来た。
我ながら凄いと思ったが、作り出したネグロタブラをどうするか困った。
暫く考えて魔力が無くなると消滅すると思い空に向かって打ち上げた。
また、魔法の重ね掛けも系統によって使えない事も解かった。
よってロタシオンは付与魔法の一種だと推測できた。
他の付与魔法が重ね掛け出来るのか知らないが、今のエルヴィーノにとっては深く考える必要の無い事だった。
43歳の頃に使えた魔法。()は首輪無し状態だ。
そして
デイビットに言わせるとエルヴィーノの技量は
50歳になるとデイビットが武器の使い方と補助魔法を教えてくれた。
剣と槍、素手の戦い方を教えてくれるが、エルヴィーノは嫌で逃げていた。
基本的に痛いのは嫌だし、デイビットと二人だと緊張感が無いとか言い訳をして逃げていた。
なのでエルヴィーノは武器による戦いが弱い。
デイビットに教えてもらったアウクシリアル・
カパシダ・
特にアタッケ・フィジィコ・デサティバドと、
山を駆け廻ったりして遊ぶ中で魔法を使いこなしていった。
調子に乗って木の根や、枝に
エルヴィーノがアウクシリアル・デ・コンバッテを使いこなし森の中を駆け巡るようになった事にデイビットが気付いた時には魔法の熟練度がかなり上がっていた。
☆
もう少し魔法関係続きます。
木トンボ=竹トンボと同意。
Cm=センチメートルでは無くセムと言い同意。
M=メートルでは無くメトロと言い同意。
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