第3話 ダークエルフ一族
ある日、リーゼロッテが浮かない表情で話しかけて来た。
「オリビア・・・実は相談したい事があるのですが」
「はい、なんでしょうか?」
エルヴィーノを身籠った事に気付き迷ったあげくオリビアに打ち明けると、オリビアは驚いたが「ご懐妊おめでとうございます!」と祝福してくれた。
悩むリーゼロッテのお腹にいる子の父親が誰なのかダークエルフの2人は知っている。
オリビアとデイビットはダークエルフの存亡を強く願っていてリーゼロッテは産む事を凄く悩んでいたがオリビアから強く説得され決意する。
2人はデイビットを呼び、事の次第を打ち明けた。
デイビットは複雑な表情をしたが、オリビアに根気よく説得される。
オリビアの考えは、子供の父親の力を使いダークエルフの存在を認めさせ、今と変わり無い保護を要求する。
その説明でデイビットは理解したが心では納得いかない顔だ。
ただし、リーゼロッテの子である以上我らの大切な仲間だと割り切り首を縦に振る。
すると、リーゼロッテが命令した。
「あなた達は夫婦になって子供を作りなさい!」
「イヤッ!あのっ!まだ私達はそこまでは・・・」
デイビットはビックリした様子で言葉を詰まらせる。
オリビアは顔を赤らめてモジモジした様子。
リーゼロッテが思い立ったように叫んだ。
「これは私の立場であるダークエルフの族長としての命令です!」
二人の顔が引き締まり、続けて思いを告げた。
「私の子供と、あなた達の子供を結婚させます!」
デイビットとオリビアは顔を合わせ嬉しそうに感謝を告げる。
「「ありがたき御言葉!」」
(でも、それってどちらかが男の子と女の子を産み分けられるのかな?)
デイビットが疑問に思ったが口には出さなかった。
それから二人はリーゼロッテにお説教されながら子作りに励んでいた。
ダークエルフは長寿なので、なかなか子供が出来ず二人は悩んでいた。
そんな時にリーゼロッテに男の子が産まれたのだ。
母となったリーゼロッテは大層喜んだと聞いているが、父親は複雑な顔をしていたと言う。
関係者全員が、エルフが産まれると思っていたからだ。
所が赤ん坊は漆黒の髪で産まれたのだ。
ある日リーゼロッテからデイビットに怒った口調で聞かれた。
「あなたはオリビアをどう思っているのかしら?その・・・ちゃんと営みをしているのですか?」
一向に懐妊の気配が無いので苛つくリーゼロッテだが痺れを切らしたのだ。
「こればかりは神様からの贈り物ですから」
「そんな事はありません!」
オリビアは言い訳をするがリーゼロッテが断言してきた。
「あなたが強く望まないからです」
そして命令が下された。
「今日からは毎晩ですからね!」
驚いた二人だが顔を赤らめ返事するのであった。
※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez
時は流れて。
エルヴィーノが誕生して20歳位に近づくとある程度物事の道理を理解し初めた。
その頃に、あることに気付く。
20歳位と言っても見た目は人族の5歳位の子供の容姿だ。
人族と違いエルフは長寿である。
やんちゃな子供にとって1日などアッと言う間に過ぎてしまう。
当たり前だが、エルフは魔法が使える。
当然ダークエルフも同様だがエルヴィーノは幼い頃、魔法を知らなかった。
親たちが大きくなってから教えようと決めていたそうだ。
そしてダークエルフの方が、魔素が濃く保有量も大きい。
そんなエルヴィーノにダークエルフの魔力を押さえる処置をされた。
生まれたばかりの赤子に、この魔道具の首輪を付けたのはエルフ王だと聞いた。
エルヴィーノは首輪の効果で幼い頃は魔力を持っていても操作出来なかった。
ある時、森で1人遊んでいると、滑って転んで泥だらけになった時があった。
泥で汚れた服のままでは怒られると判断したエルヴィーノは、体を洗おうと小川に入り服や体を洗いながら何気に首輪も洗っていたら・・・
カチッ!っと、音がして首輪が取れてしまったのだ。
この時エルヴィーノは身体から
呆然とするなか思った。
「壊れた?怒られるよね?」
首輪を良く見てつぶやいた。
「元に戻らないかな?」
焦ったエルヴィーノは自分で首輪を付けてみると、カチッと音がした。
引っ張っても外れない。
「ハァ、ビックリした。取れるんだコレ?」
ホッと一息入れて再度体を洗い流す。
洗い終わり首輪をいじっていると、また音がして外れ、触ると音がして繋がる。
何度も出来る。
「壊れたのかな?怒られないように、このままにしておこう!」
勿論内緒にした。
そんなある日の朝、4人で朝食の会話をする中、デイビットとオリビアから驚きの報告を受けた。
なんと二人に赤ちゃんが出来ました。
エルヴィーノとリーゼロッテから祝福を受けて照れるデイビットと幸せそうなオリビア。
20年近く頑張ったデイビットが一つの仕事終えた満足げな顔をしていたのをエルヴィーノは覚えている。
その日からオリビアの仕事はエルヴィーノを含めた3人で分担して行なう事になる。
オリビアはリーゼロッテに恐縮していたが「私たちは4人しか居ないのですよ。今までも助け合って来たように、オリビアの大切な子の為に私が協力するのは当然です」とリーゼロッテになだめられる。
自分が大切にされて幸せな時間を過ごすオリビアだった。
1年後には可愛いダークエルフの女の子が産まれました。
名前はメルヴィ。
エルヴィーノが20歳になる前で春の出来事だった。
産まれた女の子メルヴィは虐げられた大人3人とエルヴィーノに希望をもたらしました。
「将来はエルヴィーノとメルヴィを結婚させよう!」
などと、事実上この五人しかダークエルフは存在しない事になっているので大人は夢に希望を膨らませて会話が弾んでいた。
エルヴィーノは(結婚ってなんだろう?) と思っていた。
エルヴィーノは物心付く頃には大人の真似をして魔法を使い、リーゼロッテに怒られたので密かに森で練習するようになる。
狩りで獲物を捕らえる為に森へ入るデイビットの後ろに付き、狩りの手ほどきを受け、畑仕事も手伝う。
獲物の探し方、魔法や武器による倒し方、捕らえた獲物の処理の仕方、大木や岩を退かしたり、浮かせたり、切ったり、砕いたりと魔法を見ていた。
その頃には、首輪を取った方が魔法の威力が高く、魔法操作しやすい事に気付く。
ある日、川で魔法の練習している所をデイビットとオリビアに見つかってしまう。
ヤバイと思ったが「二人が大変そうで、役に立つよう魔法の練習をしていた」と正直に言うと、デイビットは嬉しそうな顔して、オリビアは怒る事なく優しく魔法の手解きをしてくれた。
当然だがエルヴィーノの居ない時に二人の主であり、母親であるリーゼロッテへ報告している。
仕方ないがリーゼロッテには内緒だったのでしばらくドキドキしていた。
ダークエルフ族の紹介
第97代ダークエルフ王暗黒魔導騎士ディラン・デ・モンドリアン戦争で死亡。
王妃カリン・デ・モンドリアン戦争で死亡。
(エルフ王の長女、旧姓 Karin van de Brinks)
お姫様 暗黒魔法師リーゼロッテ・デ・モンドリアン捕虜(エルヴィーノの母親)
お姫様の子(主人公)暗黒魔法師見習いエルヴィーノ・デ・モンドリアン(私生児)
オリビア 暗黒魔法師 侍女 戦争後捕虜
デイビット 魔剣士 兵士 戦争後捕虜
オリビアとデイビットの娘 メルヴィ 暗黒魔法師になる予定
(ダークエルフ族は魔法使いの事を魔法師と呼称する)
☆
妹キャラの誕生です。今後とんでもない事になる宿命の娘です。
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