#自分の誕生日祝いにリプきたセリフ全部ぶっ込んだSSを書く

長串望

第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部部室消失事件とその復活にまつわる顛末




 Twitterにて、タイトル通りのハッシュタグで遊んだ結果です。

 いただいたリプは以下の通りです。

 リプくださった皆さん、お付き合いくださりありがとうございました。


「死ぬこと以外かすり傷っていうじゃん」

「弱すぎてかすり傷でも致命傷だよ」

「みんな下がれ!早く!ボム兵司令官が爆発する!」

「た~けや~~さおだけ~~」

「いまだ! カルシウム光線ッ!」

「まさか!……この……魚の絵が描かれた……膨らみきった缶詰は……」

「銀水晶、ドラゴンの血、月の欠片、黄金蚕の繭、そして砂漠の結晶…これを鋳溶かして混ぜれば…純度120%のエリクサーの完成だ!」

「天に代わりて不義を討つ」

「この毒液ペットボトルロケットが貴様の実家を爆撃する!」

「お誕生日、おめでとう」




◆◇◆◇◆




 私立異世界転生市杉いせかいてんせいしすぎ高等学校の文化部棟には、公立高校ではまず存在すら許されないような有象無象魑魅魍魎の類である奇怪な部活動の部室がひしめいていた。これも私立高校の自由さゆえだ。

 三階中程に所在する第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部もまたその一つだった。


 読者諸君の一部には、いや、私立校であっても第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部の存在は許されないだろと考えるものもあるかもしれないが、それはおそらくあなたが公立高校出身者で私立高校の内情をよく知らないか、それともまだ私立高校に入学していないお子様だからだろう。

 なにしろ第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部の部員の半数は、第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部の存在を一般的なものとして認識しているし、実際ほかの有象無象魑魅魍魎部の数々から見てみれば、第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部は比較的邪悪でなく、法令を遵守しているほうだ。


 わかっている。

 もちろん、この長々とした名称が読者諸君の不安を誘っているのは百も承知だ。

 だがこの名称も、分解してひも解いてみれば極々普通の事柄が集まっているに過ぎないのだとすぐわかることだろう。


 まずなんでこんなに長い名称かと言えば、それは複数のクラブが、部員不足などを理由に合併を果たしたからである。

 同好会部などと言うどっちなんだという末尾も、同好会と部が合併したからで、なにも不自然ではない。

 頭の第三は確かに不思議に思うかもしれないが、それはこの団体がこれまでに何度か分裂と合併を繰り返しており、いまの形に落ち着くのが三度目だからである。これも不自然ではない。

 あとはもう、自然極まる個別のクラブの名称が並べられただけだ。

 悪魔召喚部、オカルト研究会、UFO同好会、闇に葬られし残虐デス指スマ部、そして錬金術部、これらが組み合わさってできたというだけのことなのだ。


 なので部活動の内容もそれはもう、高校生活にふさわしい青春あふれるものだとも。


「銀水晶、ドラゴンの血、月の欠片、黄金蚕の繭、そして砂漠の結晶…これを鋳溶かして混ぜれば…純度120%のエリクサーの完成だ!」

「どれか一つでも高校生活にそぐうものありました???」


 平部員である二重川だぶりがわ 二重ふたえ(二年生。留年三度目)が反射的に疑問を呈したが、むろん第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部においてそのような面白くない発言は取り上げられたりしない。


 いままさに異世界からもたらされた錬金技術によって生み出されたエリクサーを掲げ、部長の超常院ちょうじょういん 遥迦はるか(三年生。十二歳飛び級生徒)はうっとりと美少女ヅラをとろけさせた。

 超常院は十歳のころには異世界錬金術を学び正真正銘の天才であり、ご近所さんからも三回くらい殴りたいクソ生意気な面だと有名なクソ生意気天才児である。


 飛び級とはいえわずか十二歳の少女が第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部を主導しているのだから、その実務能力にも疑いはない。


「っていうかなんで純度が100パー超えるんです? 煮詰めて水分飛んだんですか?」

「愚かで低俗で間抜けで愚かで犬よりはまし程度に知能指数の低い君にもわかるように言うとだな」

「ワンブレスでここまでののしられることある?」

「100%エリクサーに対して、同じ分量で二割増しの効果があるのだ」

「それは純度とは関係ないところでは……?」

「試しに使ってみるかね。健康時に飲むと効きすぎてなんかどっかが破裂するけど」

「なんかどっかが破裂する回復薬を勧めてらっしゃる???」

「ちょっと致命傷まで負えば、回復量がいい感じにトントンに収支が合うと思う」

「回復薬使うためにあえて致命傷を負うのは収支あってなくないです???」

「死ぬこと以外かすり傷っていうじゃん」

「弱すぎてかすり傷でも致命傷だよ」


 二重川は留年三度目となるだけあって、体育の授業では「いるだけで反則」「小学生に囲まれてイキる中学生」「体臭が違う」「あの人先生じゃないの?」などとささやかれるほどに高校生どもとは体力資本が違うが、打たれ弱さは天下一品であった。

 特にメンタルが弱く、クラスでひそひそ話をしているだけで自分のことを言われているように感じて胃が痛くなる。


 嬉々として完成した珍品を棚に飾る子供と、腹部をさすりながらうなる髭のそり残しが目立つ強面。

 以上二名が第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部の部員すべてであった。

 当初はほかにも部員というか、元部長どもがいたのだが、合併後の新部長の座を争う激烈なバトル暴力の果てに「覚えてろよ」という今日日聞かない捨て台詞と共に去って行ってしまったのだ。


 なお現部長の超常院は、実はバトル暴力開始三秒で「生意気だから」という理由で頬を張られてギャン泣きし敗退している。

 すべてのバトル暴力を制したのは、親戚にプロの暴力バトラーを持つ二重川であり、部長なんて向いていないという本人の意向により、超常院に無血譲位されたのだ。


 なお、その時に二重川が残した「やめろー! 暴力は子供を泣かせる道具じゃねえ! 俺とバトル暴力で勝負だ!」というセリフは、留年性オトナ高校生コドモを腕力で泣かしてわからせるという矛盾塊として部史に長く記録されることになる。


 有力者であった元部長たちが去ってしまったために第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部は本来であれば弱小部として認識され、部室を持たざるさまよえるクラブ連中に目を付けられかねないのだが、それでもなお部が存続しているというのが、天才錬金術師超常院と単純に腕力が強い二重川のあなどれないところである。


 気は優しくて力持ちを地で行きたい二重川としては、多少頭のおかしい部長が率いる多少頭のおかしい部活動であれ、年齢差から変な目で見られることがない空間での穏やかな生活は心地よいものだった。

 クソガキもとい超常院部長は子供ながらに、子供だからというべきか、二重川に対しても遠慮というものがなく、それがうれしかった。その生意気ささえも、クラスメイトの滅茶苦茶遠慮しまくっているうえに敬遠している態度に比べれば気持ちがいいほどである。


 だが私立高に通ったことのある人間であればもうお分かりのことと思うが、私立異世界転生市杉高等学校においてもそんな平穏というものは長続きするものではなかった。


「ケヒャヒャ死ねぇええいぎゃぽふッ!?」

「あっ、すまん。奇声とともに襲い掛かられて咄嗟に裏拳が」

「あ、こら、ダブりくん。いかんぞー、殺しちゃ」


 部室の扉を破壊しながら侵入してきた不審者を、とっさに裏拳で沈めてしまった二重川が慌てる。打たれ弱さに定評のある二重川は、られる前にれが座右の銘であり、悪癖であった。

 用件を聞く前に殺してしまっては、用件を聞けないのである。


 しかしまあ死ねとか何とか言っていた気はするので、それが用件だったなら「じゃあお前が死ね」という適切かつ親切な対応ができていたとも取れなくもない。

 それに幸い、侵入者は鼻骨が頬骨と同じ高さになったくらいで意識は(痛みで)はっきりしていたので、まだ全然セーフである。


 侵入者は自分で折れた鼻骨を直し、鼻血をぴっと手鼻で切り、毅然と笑って見せた。

 怪しげな黒いローブに、怪しげなどくろのネックレスを下げ、怪しげな山羊の頭骨をかぶった怪しげな生徒である。

 これは自由な校風が愛される私立異世界転生市杉高等学校においてもだいぶ着崩したスタイルだった。


「け、ケヒャ……やってくれたじゃねえか二重川よぉ。腕は衰えてねえようだなア」

「む、お前は……!」


 二重川の視線が超常院部長をチラ見する!

 部長の的確なジェスチャー!


「元、悪魔、召喚部、部長……? ……の!」


 二重川の視線が超常院部長をチラ見する!

 部長の的確なジェスチャー!


左門さもん……悪魔公子でびるぷりんす……!」

「よーしよくできたぞダブりくん! えらい!」

「ケヒャヒャ……! 二重川ァ、貴様にやられた肩と二の腕と肋骨と内臓と両手両足と後頭部がうずくんだよォ……!」

「全身ぼっこぼこにしてんじゃんかよ君は」

「加減がわかんなくて……意外に死なないなあって……」

「君が留年で済んでるのは私立高ゆえの緩さだなあ」


 よく見れば包帯とギプスがまだとれていないらしい左門は、松葉杖をついてさえいた。

 その状態で部室の扉を蹴破り、あまつさえ二重川の反射的で慈悲も倫理観もない裏拳に耐えたのだから、悪魔召喚などではなく自身の体に頼ったほうがよさそうなパワーファイター資質である。


「で、なんです左門……先輩」

「貴様に先輩と呼ばれるといろんな意味で混乱するがなァ……俺は悪魔と契約せし狡猾にして執念深きデビルサモナー! やられたままでは契約した悪魔の名が廃るというもの!」

「君みたいなやつと契約して召喚される悪魔はだいぶ名が廃ってるんじゃないかなあ」

「……………ッ!!!」

「めっちゃ効いてるみたいなんで、煽り耐性低い人にそういうのやめましょうよ」


 左門 悪魔公子。クソ生意気飛び級天才児に雑魚扱いされ、即座にぶち切れてビンタかました男である。顔つきが違う。前回それでフルボッコにされた経験から学んだのか、手が出なかったのは褒めてやってもいいかもしれない。


「俺を甘く見るなよ! デビルサモナーに同じ技は二度効かん!」

「聖闘士かこいつ」

「貴様個人には腕力でかなわんことはわかっているのだ!」

「悲しいほどに現実認識ができてるのに、悲しいほど現実と向き合えないんだな君は」

「よって! こいつだ!」

「折れねえなあこいつ。で、なんですそれは」

「これぞ悪魔の知識によって生み出された毒液ペットボトルロケットよ!」

「あんたの言う悪魔はインターネット掲示板とかに住んでるヤベーやつでは???」

「この毒液ペットボトルロケットが貴様の実家を爆撃する!」

「せめて俺を狙え俺を」


 悪魔的な知識の悪用によって毒液を詰め込んだペットボトルロケットを用意してきたばかりでなく、悪魔的な発想によって本人ではなくその関係者を狙うという卑劣さ。ある意味悪魔らしいといえば悪魔らしいのかもしれない。


「ケヒャヒャ~! 貴様を直接狙えばまた全身の関節を外されかねんからなァ~!」

「関節までがったがたにしてんじゃんかよ君は」

「いやあ、なんか途中から楽しくなってきて……」

「その余裕がいつまでもつか見ものだぜェ……? そこで指をくわえてみているがいい! 貴様の家族が毒液ペットボトルロケットで見るも無残な姿に変わるのをなァ! ケヒャヒャ! 午後の授業を終えて放課後になり次第……貴様の家に向かうぜェ……射程距離まで、確実に、徒歩でなァ!」

「く、エキセントリックな性格のわりに堅実かつ着実な……さてはこいつ夏休みの宿題をコツコツ計画的に終わらせるタイプ……!」


 恐れおののく二重川。あまり興味がない超常院部長。

 だが、読者諸君も恐れることはない。

 なぜならばここは私立高なのである。

 私立高校に悪の栄えたためしはない。あるかもしれないが、こう、いい感じに隠蔽とかされてる。


 毒液ペットボトルロケットに舌なめずりして勝利を確信する左門 悪魔公子。

 その首がごきりと鈍い音を立てて180度回転!


「け、ケヒャ~ッ!?」

「天に代わりて不義を討つ」

「き、きさまは……!」


 左門が180度回転した首で、犯人を探そうとするも時すでに遅し!

 その首がごきりと鈍い音を立ててさらに180度回転!

 360度回転して一周した首は、元通りの位置に収まったように見えるが、それは致命的な変化をもたらしている!


「あばっ、あばばば……!」


 血の泡を吹きながら倒れ伏す左門。

 そう! 人間は首が360度回転すると……とても痛いのである!


 左門悪魔公子の体を蹴り飛ばしてわきによけ、第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部の部室へと踏み込んでくる新たな侵入者は、三者三様に頭のおかしい三人組であった。


「やれやれ、どうやら間に合ったようですね」


 一人は怪しげな黒ローブに怪しげな水晶玉を抱えた怪しげな女子生徒。


「我々の登場を待たずして、再戦とは無粋だからな」


 一人はなぜか怪しげな白衣を羽織り、怪しげなアンテナを頭頂部に立てた怪しげな男子生徒。


「いかにもいかにも! 抜け駆けは美しくないな!」


 一人は極々普通の制服を着た極々普通の、しかしそれゆえに一番怪しく見える男子生徒。


「お、お前たちは……!」


 二重川の視線が超常院部長をチラ見する!

 部長の的確なジェスチャー!


「オカルト研究会とUFO同好会と残虐デス指スマ部の元部長ども……!」

「いかにも! 元オカルト研究会会長卜部うらべ 晶子あきこ!」

「元UFO同好会会長呉井くれい 小宇宙コスモ、ここに!」

「そしてこの僕が元残虐デス指スマ部部長デスやま 殺死太郎ころしたろう!」

「ぬう……さすが私立高、メンツが濃いぜ……!」

「あなたには言われたくないわよ。腹筋の恨み!」

「お前にやられた首の痛み、いまもムチウチで思い出すぞ!」

「残虐デス指スマの命たる指を折られた恨み、忘れるものか!」

「全員ぼっこぼこにしてんじゃんかよ君は」

「それがバトル暴力だから……」


 暴力は、人を傷つける道具ではない。

 バトル暴力で勝負した後は、勝敗にかかわらず恨みや憎しみはきれいさっぱり捨てて健闘を称えあうものだ。

 とはいえそれもきれいごとと言えばきれいごとで、勝負事である限りどうしてもわだかまりが生まれるのは仕方がないのかもしれない。

 やはりバトル暴力できれいに決着をつけるためには、しっかり再起不能リタイアさせておかねばならない。年下だからと手加減した二重川の落ち度であった。


「すまない……俺がちゃんと倫理観とバイバイしていれば……!」

「まだバイバイしてないつもりだったのこいつ?」

「留年じゃなくて留置所に入れてくれ頼むから」

「待て待て待て、あまり刺激するな」


 後悔とともに拳を握り締める二重川に、三人組は両手をあげて戦闘の意思がないことを示した。

 二重川の視線が超常院部長をチラ見する!

 部長の的確なジェスチャー!

 二重川も無抵抗の相手を殴る拳は持たない。ゆっくりと拳が開いた。


「こいつ、倫理観を十二歳の子供に委託してるわ……」

「我々の生死は子供の掌の上ということか……?」


 緊張がほぐれ、和やかな空気が部室に広がった。いいね?

 三人組はごとりと音がしそうなほど重たいため息をこぼし、話を再開した。


「ともかくだ。俺たちは喧嘩しに来たわけじゃない」

「ただそう……暴力で部長を決定するなんてのは、やっぱり野蛮だったと思うのよ」

「そこで文明人らしい方法での新部長の再選出を提案したいわけなんだ」


 先に暴力を肯定した連中が、負けたとたんにこういうことを言い出すのはどうなんだろうなあと二重川などは釈然としないのだが、超常院部長はうれしそうに彼らを迎え入れた。部員が増えれば部費も増えるからである。生きてさえいれば意思は問わない。


 元部長連三人衆が提案するのは、つまりこういうことだった。


「一週間、新入部員の募集をかけるのよ。最も多くの新入部員を連れてこれたものが新部長。これなら第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部のためにもなるし、平和で文明的な選出法だわ」

「まあ、現状じゃあ部員不足でまた解散の憂き目だしなあ。私は構わないぞ」

「そうこなくっちゃ。お礼ってわけじゃないけど、私の水晶占いで誰が新部長になるか、軽く占ってあげるわ」

「おいおい、それで決められちゃ困るぜ?」

「当たるも八卦、当たらぬも八卦よ。ちょっとしたスパイスみたいなもの」


 そういって元オカルト研究会会長卜部晶子は、その手に抱えたボム兵司令官を覗き込んだ。


「あら、水晶玉が暗闇を映し出してるわ……?」

「ば、ばか、そいつは水晶玉じゃあない!」

「すり替えられていた、だと……!? いつのまに!?」


 そう、卜部の水晶玉は、誰にも気づかれない間に導火線に火のついたボム兵に変わっていたのである!

 とっさに投げ出した卜部だが、ボム兵はきれいに着地し、ゆっくりと部室の中を歩きながら着実にタイムリミットまで突き進む!


「みんな下がれ!早く!ボム兵司令官が爆発する!」

「ボム兵司令官とは???」


 事情の呑み込めない二重川が困惑する中、一行はとにかくボム兵から距離をとるべく後退するが、狭い部室の中だ、逃げ場など限られている。


「ケヒャヒャ~ッ! 油断したな馬鹿どもめェ!」

「貴様、は……!」


 二重川の視線が超常院部長をチラ見する!

 部長の的確なジェスチャー!


「元悪魔召喚部部長左門悪魔公子!」

「ケヒャヒャ~ッ!」


 そう、そこには首が360度回転しながらも、二重川への憎しみと執念からなお立ち上がった左門の姿があった。

 おお、なんということか!

 卜部の水晶玉がボム兵にすり替えられたのは、左門と契約した恐るべき悪魔の仕業なのか!?


「ケヒャヒャ~ッ! すり替えておいたのさ! この俺が!」


 意外!

 普通に自力!


「てめえら全員爆破しちまえば、第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部は俺のものだァ~ッ!」


 左門が高笑いした瞬間、飛び出したのは元UFO同好会会長呉井小宇宙!

 その腕が奇妙に交差し、激しく発光したではないか!


「いまだ! カルシウム光線ッ!」


 瞬間、呉井の体内の骨密度を犠牲に、カルシウムから重カルシウム粒子が生成、爆発的な加速とともにボム兵司令官に投射された!

 そのエネルギーはボム兵司令官がもたらすはずだった致命的な爆発のゆうに三十五倍!

 ボム兵司令官を跡形もなく吹き飛ばすと同時に、第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部の部室が、直近で自分の技の爆発に巻き込まれた呉井が、なぜか逃げずに近くで高笑いしていた左門が、その他のメンツが強烈な光に包まれていった……!


「た~けや~~さおだけ~~」

「……もしやたーまやーって言いたいんですか部長」

「そうそう、それだ」


 そしてそれをとなりの校舎から見送る第三悪魔召喚オカルトUFO錬金術研究同好会部部長超常院遥迦と、同平部員二重川二重。

 普通に危なかったので、超常院部長を担いだ二重川は早々にとんずらを決めていたのである。高校生が爆発に巻き込まれて大丈夫なわけないでしょ。


 三階中程の部室から急激に広がった謎の光に包まれて崩壊していく部室棟を眺めながら、天才錬金術師超常院は手の中にあった瓶をそちらに投げつけた。

 それは部室からとっさに持ち出した錬金物のひとつで、純度120%エリクサーという。

 健常な状態で使うと逆に死ぬような絶大すぎる効果の代物で、致命傷くらいで使うとトントンになるというピーキーなアイテムだった。

 そして天才の作るものであるから、それは人も物も問わず、光によって消し飛んだすべてを元通りに回復させていくのだった。


「うわっ、すげえ。どういう理屈なんですかこれ」

「さあ? 私にもよくわかんない」

「えっ、こわっ」

「ああ、そういえば、君にプレゼントがあってさ」

「え? なんです急に。この情景を前にそういう切り出し方するの情緒とか壊れてません?」

「お誕生日、おめでとう」

「…………は?」

「は、じゃないよ。君の誕生日でしょ、今日は。なのにあんな騒ぎになるんだから、参っちゃったよ」

「超常院部長……俺の誕生日、覚えてくれてたんですね」

「ようやく酒が飲める年齢だって、さんざん聞かされたからね」

「へへ……これで俺も堂々と教室でアルコールに逃げられますよ」

「いろんな意味でダメだと思うけど……まあいいや。はいこれ」

「ありがとうございます。早速開けますね」

「中身は私のいないとこで開けてね」

「まさか!……この……魚の絵が描かれた……膨らみきった缶詰は……」


 乱雑に扱われて、先ほどの爆発の衝撃もあって、限界だったのだろう。

 脱兎のごとく駆けだした十二歳児の後ろで、今日二十歳になった留年生の薄汚い悲鳴が響き渡るのであった。




 了

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