鏖殺黯惨譚詠唱

佐藤菜のは

鏖殺黯惨譚詠唱

鏖殺みなごろしの刻を告げる鐘が鳴り響く

澱みのあなぐらより目醒めし有翼種


あれらは神や天使などではない

あれの名は「暴虐」という


豪雨のごとく楽の音が猛り

髑髏で埋め尽くされた壁墓が呼応する


轟くのは怒りの喇叭かと思えば

どうやらこれは審判の銃声


屠った賢者の数を競い喚く悪魔たち

柩として用いられるは揺籃の残骸


まがつ女王は十三本の指を以て

喧しい鴉の腹を裂く


獄の底で蠢く愚者が

落ちてきた血飛沫うけてくずおれる


――散れ!

――救い難きものを今際の涯まで追いかけよ!


――絶て!

――土塊つちくれと違わぬ生命を悉く葬るべし!


異形たちが高らかに歌う

鐘は絶えず踊り狂う屍を嘆く

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鏖殺黯惨譚詠唱 佐藤菜のは @nanoha_

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