第6話

そんな日が続いた、ある朝


「勇気、手を繋ごう!」


「大丈夫か?」


「やってみる!」

そっと、手を繋ぐ二人。


「出来た!勇気となら大丈夫だ!」


「やったな、千夏!」


「うん!」

手を繋いで、学校迄行く、二人。

何時もの様に


「キスする?」


「いいよ!」

今日のキスは、嬉しいキスだった。


「千夏は、大学行くの?」


「ううん、行かない、私には無理だよ、

高校でも、これなのに大学だと、もっと

沢山の人が、居るから仕事する!」


「仕事?どんな?」


「工場とか、接客以外で探すよ!工場

だったら、そんなに話しなくても

良いし!」


「そうだな!そういう手も、有るな!」


「勇気は?」


「僕は、大学に行くよ!やりたい事が

見付かったから!」


「やりたい事って、何?」


「心理学を勉強して、心療内科の医者に

なるよ、千夏みたいに、心が傷付いてる

人の負担を、少しでも軽くする、お手伝い

が、したいんだ!」


「勇気……」


「千夏は、僕が専属で、診るから!」


「ありがとう!」


「でも、留年、落第無しで、6年は

掛かるよ!待ってられる?」


「勇気!私は待ってるよ!」


「よし!頑張るからな!」


卒業後

言った通り、千夏は工場で、働き出した。

仕事以外の事は、話せずに、お昼も

1人で食べていた。

その方が、気が楽だった。

勇気は必死に、勉強をしていた。

そして、千夏が居ない日に、千夏の家を

訪ねた。


「初めまして、僕、千夏さんと、高校3年生

の時から、お付き合いしている、山崎勇気

です。千夏から全部、聞きました、今は

ほとんど話を、して無いそうですね?

どうして、ですか?」


「私のせいで、あんな事に……何て

言えばいいのか、分からなくて。」


「素直に、謝ればいいじゃ無いですか!

本当に悪いのは、出て行った奴ですけど

責任を感じるなら、謝って千夏が普通の

生活が出来る様に、おばさんも力を

貸してあげないと、千夏は精一杯、1人で

頑張ってますよ!」


「……そうですね、私は逃げてましたね、

あの子に向き合って、ちゃんと謝ります

そして、力に、なれる様にします!

山崎さん、ありがとうございます。

千夏を、よろしくお願いします!」


「はい!何か有れば、何時でも連絡

下さい、直ぐに来ますから!」


「はい。」

勇気は、良い方向に行く事を願って、千夏の

家を後にした。

仕事が終わって、家に帰った千夏。

部屋に行こうとすると


「千夏、ちょっといい?」

母に呼び止められた。


「何?」


「千夏、今迄、ごめんね、お母さんは

逃げてた、あの事を言うのが、恐くて

ごめんね、千夏、辛かったのは千夏なのに

これから、お母さん千夏の為に、出来る

事は何でも、するから、どんな事でも

いいから話をしよう!」


「うん、分かった。」


(どうして急に?)

余りにも、急だったので、部屋に入る

千夏、でも嬉しかった。


(私は、1人じゃ無いんだ!勇気が居て

お母さんが居て、園子が居る!)

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