第4話 恐るべき神々の下僕たち 地竜 ギリウス編

当初の予定では、狭い道でギリウスの従者である二頭の地竜を、一匹ずつ倒す

予定であったが、ギリウスは倒した二頭よりも遥かに大きく、狭い道では

逆に不利になると考えた。


手前に引いて広場で囲んで戦おうという意見が多かった為、残りプレイヤー

180名は、前面に広場のある小城まで下がって、待ち構えた。


懸賞金5千万。誰もがそれを望んでいた。予想以上に強者が集まり、生き残れる

可能性が高まったせいで、勝つ!という強い気持ちよりも、生き残る!という

気持ちが勝ってしまっていた。


懸賞金はリアルマネートレード可能なもので、ゲーム内通貨の金や黄金、銀貨等とは

違う。倒す事ができれば、現実の通貨とトレードできる。


その為、一カ月ほどの審査期間があった。ゲーム内での不正行為や、禁止事項等の行為をしたかどうか、大金である為、審査はダブルチェックを要した。


ズンッズンッという音と共に、地が揺れた。その足音が近づくごとに、

プレイヤーたちは後退した。小城よりも高くて、あの二頭の地竜が子供のように

思えるほど大きかった。


誰もが勝てないと思った。「こんなのに勝てる訳が無い!」ざわつきと近づく地竜。


誰かが言った。「色々思い出した。難敵や24時間プレイをしていた頃を、まだ一カ月程度で勝てると思うほうが間違っていた。そんなぬるいゲームな訳が無い」


半数近くのプレイヤーが同じ事を思い出していた。

「ソルトはどうする?」

「逃げる。他に手があるか? 経験を積まないと、弱点は見えない。

ジャクソンは奴の弱点が見えるのか?」


「全く見えないな。この国を出ていれば指名手配で捕まる事も無いし、

その間にスキルを伸ばそう。たかだか一カ月で懸賞金がつく相手な訳がない。

運営に見事にやられたって感じだな」


「奴が近づいてきたら隙をついて南へ逃げよう。奴の股下を通って駆け抜けよう。

北へは逃げられない。アーバリアン神聖国の神兵がいる。奴らにも到底勝てない」


「分かった。そうしよう。俺達にかかる懸賞金は他の奴らよりも高くなるが、

仕方ない。祖国を裏切る行為になるから、当分は見納めだな」


「三人とも別々に行動しよう。三人一緒だと懸賞金専門のギルドハンターに目を

つけられる」


「俺はドルエン王国に行く予定だ。悪魔の魔神の一人が軍勢を引き連れて、ドルエン王国の領土に攻め込んだらしい。さっき情報屋で買った情報だ」


「シェーンは相変わらず抜け目がないな。この騒ぎだ。もう店じまいしただろうから、俺はいけないな」


「ソルトとジャクソンは中立地帯で暫くは過ごす事だ。悪く無い仕事があるかもしれないぞ? これもお前たちには意味の無い話だが、中立地帯の南の沼地の湿原に、

厄介な魔物が住みついたらしい。近くの村が壊滅されてないなら、クエストを受けれるかもしれないぞ。当分は戻れないんだ。遠出したほうが安全だろう」


「二人とも行って来い。お前たちは世界を知らなすぎる。良い機会だと思って

旅に出ろ」


「分かったよ。行ってくる」

「ついでに善意値も上げて来い。懸賞金付きでその数値だと、間違いなく襲われる」


二人はそのまま南の中立地帯を目指して進んだ。

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