第3話 討伐対象 地竜 ギリウス

町の宿屋や酒場には大勢のプレイヤーが、ピリピリした空気の中、

その時を待っていた。


三カ月前、女王が君臨するアーバリアン神聖国が、

城下町や近くの城塞や城、大小の町や村々にある立て札を立てた。


そして依頼所がある所にも依頼を出した。


国境の大関所が破られ、勢力を強めた地竜のギリウスがじりじりと

勢力圏を広げてきたからだ。


当然、ドルエン王国が絡んでいる事は分かり切っていたが、

当面の敵であるギリウスを倒さねば、女王の居城まで来る勢いで

村や町を壊滅させて近づいてきていた。


懸賞金は5千万。地竜にしては高額であり、一度参戦登録したら

解除不能になり、公約を破れば、そのプレイヤーは無期限の懸賞金が

つけられる事になるものだった。


集まったプレイヤー数は指定最大人数200名であったが、ギリウスの従者である

二頭の地竜には懸賞金はかけられていなかったが、それを倒すだけでも

何名のプレイヤーが死ぬのか想像もつかなかった。


アーバリアン神聖国の精鋭は居城の守りにつき、プレイヤーが全滅、

あるいは、逃亡しない限り戦いには参戦しないものとなっていた。


それを考慮すると、倒して生き残れる人数は限られていた為、プレイヤーの多くは

頼りないものも大勢いた。そこをしっかりと考慮して、最大参加人数は決められていた。


本来、王国であれ、個人であれ、依頼所に依頼を申請する時には、任務達成数や

最大難易度のクリアレベル、任務達成率などがあり、依頼を受けるには依頼者が

指定したレベルや達成率などを満たしてないと、依頼は受けられなかった。


しかし、今回は急を要する事であった為、珍しく無条件であった。

それもあり、定員数200名はすぐに集まった。


そして今日、最前線に出て、戦う日だった。このゲームは命に重きを置いていた為、

腕を失っても、足を失っても、逃げ切ることが出来れば、高額ではあるが義手や義足

更には、武器化する事も可能であった。


致命傷である頭部の破壊、または心臓を失わなければ、状態は変わらないが、死亡時に、命を購入する場合、現在のキャラクターか、新しくキャラクターを作るかの選択肢がでる。


常にキャラクターは1人だけであって、複数作ることは出来ない仕様であった。


このシステムも大勢のプレイヤーを悩ませた。基本的にこのゲームには強さに関するレベル等は無い。しかし、銀行のお金はあっても、アイテムはキャラクター依存の為、装備を取るか、経験を活かして新キャラクターを作るか悩ませた。


装備とプレイヤースキル、この二つを上手く組み合わせれば、強敵でも一撃で倒せるように仕上がっていた。


地竜ギリウスよりは遥かに小さいが、人間に比べたら非常に大きく、そして威力のある攻撃力を持っていた。その二頭が近づくにつれ、プレイヤーは後退を始めた。


そんな中、一人のプレイヤーは後退せず、いきなり何かを飛ばした。

手のような形をした刃が先端にあるチェーンアームであった。


それは頭部を掴むように食い込み、光速でチェーンを戻せる仕組みだった。


戻すと同時に、切り取るように刃が頭部に食い込み、刃の手が戻る時には

頭部を切り裂いていた。そのまま倒れて動かなくなった。


一頭になった地竜に、プレイヤーは一斉に襲い掛かった。

しかし、雑魚は雑魚である。地竜は炎を吐いて飛び掛かってきた数名を

灰へと変えた。


炎を絶え間なく撒き散らす地竜の前に、フードを被った少女が呪文を

唱えながら近づいた。


歴戦のプレイヤーたちも、魔法使いが日の光の下で姿を見せる事は少なかった為、

興味を示し、無条件だから依頼は受けられたのかと納得した。


魔法使いの魔法は非常に多くある為、滅多にお目にかかれないものだった。


少女は炎を吸収しているかのように近づき、フードの中から杖を出して地に立てて叫んだ。

「炎の魔神イフリートよ! この地竜に怒りの裁きを与えなさい」


凄腕のプレイヤーたちも驚いた。魔法は強力だということは知っていたが、見たというプレイヤーは誰もいなかった。見たプレイヤーは死んだと言う事になり、それが今目の前で唱えられ、納得のいくほど強力な魔法だと誰もが思った。


魔神の姿から炎の地竜へと姿を変えると、地獄の業火で骨をも残さず消し去った。

地竜を倒すとイフリートは魔神の姿に戻り、そして消えた。


残りプレイヤー数は180人ほどいて、地竜ギリウスを倒せる可能性が見えて来た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る