セントマリナーシティ陥落編
第4話 入隊式
あれから、5年の月日が流れた。
–––ガルト王国 首都デンハム
白いレンガと茶色の屋根が永遠と立ち並ぶ1000年の歴史を持つ巨大都市。広大なガルト王国の中心に位置する、文字通り全ての中枢を担う街である。
今日、ガルト軍の入隊式に先立ち、街はお祝いムード一色で盛り上がっていた。敵の脅威が一番の関心ごとのこの世界にとって、新たな芽吹きは未来への希望を表す。
「ヒロ、ようやくここまで来たぞ」
背は、5年前とは比べものにならない程伸びた。
荘厳な甲冑に身を纏い、剣を背中に携えたノアは巨大なガルト軍の門の前に立っていた。
ここでまた、夢へ一歩近付いた。
青年は、一歩一歩力強く歩みを進めていく。
–––––––
特に何の感情も湧かない入隊式典の、おそらく偉いであろう人の言葉も終え、新人はそれぞれ言い渡された部屋へ向かった。
部屋といっても、一つ一つが教会並みに広い。
3万6000人の入隊者が数人のグループに分かれても、この待遇だ。全てに置いて村の時とはスケールが違いすぎる。
ノアはワクワクを抑えきれなかった。
ここから、また更に強くなれる。成り上がれば、国を変えるほどの一存が扱えるようになる。
「んんんんーーー! よっしゃーーー!」
勢いよくドアを開けると、ポカンとした顔立ちで2人の先客がこちらを見ていた。1人はノアよりも上背がある、ちょっと頼りなさそうな表情をした男。そして、もう1人は背こそ低いものの、水色の長い髪の毛を結んだ気の強そうな女。
「おっすー、俺はノア。よろしくな!」
「よ、よろしくね。 僕はフアン」
「……アシュリー」
割と、見た目通りの反応だった。
「なんだぁ、フアン。 今日から同じ釜の飯を食う仲間だってのに、余所余所しいなぁ!」
ノアはフアンの首に腕を回し、ツンツンとお腹を突っついて弄ってみせた。その間も、あはは…と苦笑いするしかない、人見知り全開な男。
これは、結構弄り甲斐がありそうだな。
「…ねえ、うるさいんだけど。 遊びに来てるんじゃ無いのよ。 場所を履き違えないで」
「なんだとー。 イイじゃねえか、戦闘中じゃねぇんだし。 それにうるさいって言うな、元気が良いって言え!」
「…何その謎の拘り。 アンタみたいな元気だけの輩が一番最初に悪魔の餌になるのよ!」
ドンドンドンドン–––!
廊下の方から、もの凄い音が近づいてくる。
「おっはよー! みんなーっ! 私が先生のミアだよーッ!」
一瞬の出来事だった。
女が大声を上げながら、乱入してきた。部屋のドアを豪快に突き破りながら。しかも、足で。
「……一番元気なのは、俺じゃねえみたいだな」
「…そ、そうね」
––––––––––
「改めまして、私が貴方達3人の先生役を務めます、ミア。 年はピチピチの23才! まだまだお姉さんって言える年齢だから、くれぐれもオバサン扱いしないでね」
紺色の髪を耳に掛ける仕草を見せながら、女はそう元気に話した。先程のキックの当たりどころが悪かったのか、時折足を気にする素振りを見せながら。
このハツラツさに加え、ドジっ子属性まで付いた逸材の登場に、3人は困惑を隠せなかった。
「さて、君たち3人の素性はもう全て前もって予習しておいたわ。 細かい話は後からするとして……。 まずは君たちの実力を私にみせて頂戴」
はっ、とノアの顔が一気に晴れた。
模擬戦–––。今までの修行の成果を見せられる機会が、こんなにも早く訪れるとは。
拳をグッと握る。
「んんんーッ! やったーーーッ!」
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