liberty

@mamimame

第1話

照りつける太陽。


広がるのは真っ白な砂。


空と地上の境目がぼんやりしてる。


ずきんと頭が痛む。


なぜここに自分がいるのか。


と、その前に自分は何者なのか。


ただ、はっきり分かる。


ここは砂漠だ。


くらりとする視界。


額を抑え、辺りを見回す。


そこでようやく、自分が1人ではないことに気づく。


砂漠と同化しそうな髪色。


腰には、剣だろうか?


格好は、お世辞にも高貴な身なりとは呼べない。


彼は私のそばで横たわっていた。


彼は一体誰だ?


いや、その前に私は誰なんだ?


そして、ここはどこで、なぜここにいる?


「喉乾いた…」


ポツリとその言葉が出てきた。


あぁ。


私は女なのか。


発した声で判断できた。


手元、胸元、足元、そして、まとわりつく長い髪の毛を見た。


漆黒…美しい髪の毛だ。


鏡がないので顔立ちも確認できない。


まず、所持品を確認しようか。


その前に目の前の男性を起こすべきか。


いや。


彼が敵なのか味方なのかも分からない。


少し状況を整理してからにしよう。


記憶がないくせに、私は冷静だ。


もう失うものはないからかもしれない。


たぶん、私は、記憶だけでなくきっとすべてを失っているのだろう。


この状況、そんな気がする。


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