第12話

「……俺、オタクなんだよねぇ」

「はえぇ~」


お、少し驚いている様子だ。

4度目にしてようやく成功か?


「だからさ、次は〇〇にあるアニメショップいかない?…… いや、もちろん嫌だったらいいよ。佐奈ちゃん、あんまりアニメとかゲーム知らなさそうだし。……その時はしょうがない。一人でいくよ」


オタク特有の早口でまくしたててみたが……どうだ?


恐る恐る目の前に座る彼女を見る。

が、特に表情も変えずにケロッと口を開く。


「全然いいですよ。ウチもこう見えてアニメも見ますしゲームも好きなんですよー」


な、なんだと……。


まさかの実は好きでしたパターンか。

し、しかし、この回答自体は正直予想はしていた。

どうせ何かしら肯定してくるだろうとな。


……だが、俺にはまだとっておきがある。


「へぇーそうなんだ。確かに以外かも。でもなぁ、俺の好きなアニメって美少女アニメなんだよなぁ……、特にエロいシーンあるアニメ。これが最高なんだよ。録画して3回は見直すね、うん」


どうだ!最高にキモいだろ。

自分で言っておいてアレだが、眼の前でこんな事言うヤツと関わりたくもないね。

少なくともデートをしようだなんて思わないだろう。


フッ、流石に勝ったな。


「あー、分かりますよそれ。ウチも録画したアニメでそういうシーンあると思わず見返しちゃいます~」

「やっぱり? やっぱ、そうだy……え?」


え?


わ、分かります? 見返しちゃいます……?

見るの? エロいシーンを佐奈ちゃんが。


……なんか興奮するんですけど。


いやいや、違う違う。

そんな事はどうでもいい。


う、嘘だろ。まさかこれで引かないとは。

いや、引くどころかノッて来るとは……。


「最近でいうと、『パン2』の4話なんてちょーエロかったですよね! ウチなんてもう5回は見ましたよ! まさか、横からアレが……」


しかも、まだなんか語り続けているし。

『パン2』なんてエロすぎてPTAから苦情をもらうレベルのアニメだぞ。俺でさえ見る時は家に家族がいないか確認し、更に録画をしているのを見られたくないから見終わったらわざわざ消している。

そんなアニメをみているのか佐奈ちゃん……。


やべぇ……ちょっと佐奈ちゃんのこと好きになりそう。


「……じゃあ、行きますか。ここにいても迷惑になりますし」

「あ、ああ。そうだな。……行くか」


俺はこの時悟った。

この子にはもう勝てないという事を。


であれば、楽しもう。

心行くまま、素直な気持ちで、佐奈ちゃんと楽しもう。


「そうだ! おそろいの『パン2』シャツ買いましょうよ」

「それはヤダ」


嫌われ作戦 その4.オタク丸出し作戦……失敗!!

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