第16話
宿に戻ると、どうやら果穂はララにお風呂に入れてもらったようで、ご機嫌で出迎えてくれた。
僕とルルも促されるままそれぞれの部屋で済ますことに。
風呂に浸かりながら、魔力のことを考えてみる。
……が、結局答えなどわからない。
ただ、事実として魔法は使えてるのだ。問題はない。
そういえば、教えて貰ったのは火、水、風、雷、後は応用だと習った。
でも僕は向こうの世界での記憶として、多分もっと魔法が使えると思う。
土、植物くらいなら扱えそうだし、漫画の影響か、ああいった魔法もあるな、こういった魔法もあるな、と思ってしまう。イメージで魔法が使えるなら、そういった色々な魔法が使えると思うんだよな。
それが無から生み出す、ということになるのだろうか。
……でもそれが出来るってことはかなり便利ではないか?
少ない魔力という制限はあるけど、そこは果穂さえいればどうにかクリア出来る。
つまり僕は最強かもしれない──!
……いやそれは言い過ぎである。厨二病が過ぎるぞ。
「にいにみてー!」
考え過ぎてのぼせるんじゃないかと思いながら風呂から上がると、果穂が走ってくる。
かわいい。
「かみのけ!ララちゃんにしてもらったの!」
2つ結びにして貰って、リボンまでつけて貰って、かわいい?かわいい?と聞いてくる。
こういうかわいい髪型ってのに疎い僕は、向こうの世界の時もひとつに纏めることくらいしかしてやれなかった。
三つ編みが出来なくて諦めたけど、この笑顔が見れるなら色々覚えればよかった。
「かわいい!かわいいぞ!似合ってるぞ果穂ー!」
「えへ」
「天使みたいだなー果穂、良かったな、ララにちゃんとお礼言ったか?」
「ゆった!あとねえ、おなかもすいた!」
無邪気な声に、そうだな、兄ちゃんもだ!と笑顔で返した。
「それで結局、答えは出てないのね?」
「うん、司祭様?に聞いてもいいかもとは言ってたけど、もしなんかあったら嫌だし、薮蛇はつつかなくてもいいかなって」
「……ユートたまに難しいこと言うわね?」
「そう?」
自然と日本語に訳されて聞こえてるけど、伝わらないこともあるようだ。異世界ムズカシイ。
「でもさ」
「?」
「無から生むことが出来るってことはさ」
「ええ」
「めちゃくちゃ便利だよなって思って」
「そうね」
「明日色々試してみたい、なんか今なら出来そうな気がするんだよ!」
いいわよ、とララ。さっき考えてた土魔法とか植物の魔法とか試してみよう。ゴーレムとか作れるのかな、楽しくなってきた。
果穂が好きな花を咲かせる……それもアリだな!
土魔法と水と火を組み合わせたら温泉とか……いいな広い風呂、入りたくなってきた。
後は……うーん、この薄い食事に、何か調味料が欲しい、やっぱり無難なのは塩かな?うん、塩分だ、塩が欲しい。
でもまさかなー、そんな、無から生み出せるとはいえ、魔法で塩とか……ねえ?
出せるわけ……いやそんなそんな……
……でもやってみるだけの価値はあるよな?塩あったら便利だよな?この世界にも当然塩はあるしな?
うん、試すだけ試すだけ、出なくても困らないし、うん、試すだけ……
「塩が欲しい!」
そう願うとなんと……
……塩が出てきた。
「……出た」
「おしお!」
「うん、塩」
うちで使ってた、頂き物のちょっといいやつだ。使いかけのものではなく、新品の様子。
舐めてみるが、うん、塩、間違いなく、塩。
「……できた!」
「いや見てたけど」
「塩!この世界でもあるよね!?塩!」
「あるけど……」
そんな魔法アリなの……?と呟くララ。
出来たのでアリってことです!
「無から生み出してるってそういうこと……?」
「これ醤油とか味噌とかも出せるんじゃ!?えっすごくない!?」
「すごいのかすごくないのかわからない」
「確かに地味だけど!」
これ!パンしかないと思ってたけど、米も出せるやつじゃないか!?日本人には嬉しいやつ!
野菜は?お菓子は?
果穂に色々食べさせることが出来るんじゃ!?
毎日外食みたいなもんだからな、今は宿だから仕方ないとして、その内やっぱり手料理も食べさせないといけないからな。
果穂は幸いにもアレルギーはないけれど、やはりこの世界の食べ物は知らない物だらけだからな、これは心強いぞ。
「確かめたいことが増えてきたー!」
「……無茶はしないでよね」
「身体作りも忘れるなよ」
宿題とかは嫌いだったけど、なんかこの世界に来て、不安も多いんだけどやる気が出る気がする!
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