第17話
4日目。
昨日で安心してしまった僕は、今朝はギルド前で果穂をララ
に見てもらい、ルルと室内へ。
昨日と同じお姉さんが、おはようございます、と出迎えてくれた。
「本日は今のところ、討伐依頼がそんなになくて……」
「あ、そうなんですね」
困った、練習出来ないのか。またスライムとかに逆戻りか?
「もし宜しければなのですが、薬草採取とか如何でしょう」
「薬草採取……薬草の知識がないんですけど」
「複数の種類ではなく、珍しい植物の採取をお願い出来ればと思いまして」
「珍しい……」
「今朝、ブルーティアの採取の依頼が来たのですが、最近採取出来る辺りにモンスターが出るとのことで」
「討伐依頼はないけど倒してもいいってことですか?」
「それは勿論」
これがブルーティアです、と紙に描かれた花の絵を見せて貰った。その名の通り青い花だという。
「治療に使いたいので、出来れば多目に採ってきて頂きたいとのことです」
「了解です!」
場所はルルも知ってるとのことで、無事依頼を受けることが出来た。
特訓も出来つつ、果穂に綺麗な花を見せることが出来る。今日は最高じゃないか!
「ふーん、ブルーティアの採取ね」
「これ難しいかな」
「ブルーティアはまばらに咲くから大量採取だと面倒なのよね、でもモンスターはシルバーウルフより大きいのは出ないし、ユートの練習には丁度いいかも」
「よーし、じゃあ綺麗なお花採り行くかー」
「おはなー!」
果穂を抱えて、2人の案内で採取に出発。
なんかちょっと遠足の気分である。
「……山登りじゃん」
「依頼するくらいだもの、そりゃ面倒なところにあるわよ」
「まぁついでに体を鍛えられると思え!」
「悔しいけど果穂を抱っこしてると体力持っちゃうんだよなー……」
向こうの世界なら絶対子供抱えての登山なんて無理だった。今は果穂の力なのか、割とすいすい登っていける。
……力の恩恵を受けてない筈のララとルルは息切れひとつしていないのが本当悔しい。
「にいに、あそこ、あおいおはなある」
「えー、どこ……」
「あっち、あっちのいしのとこ」
「石……あ、ほんとだ」
果穂の指差すところに1輪咲いていた。
これはたまたまなのか、果穂の視力がいいのか、果穂の力なのか。
「これ素手で触って大丈夫なやつ?」
「大丈夫よ」
ララが手折り、いい香りよ、と果穂に渡す。
「ほんとだ!いーにおい!」
「また見付けたら教えてね」
「うん!」
ララももしかしたら果穂の力かもしれないと思ってるのかもしれない。
この世界の基準がわからないから、どこまで出来るのが普通で、どれくらい出来てしまったら異常なのかが把握出来ない。
ララとルルならちょっとびっくりさせるだけで済むかもしれないけど、下手に他人に知られると誰かに話されたり通報されたりするかもしれない。
……人に会うのは怖いけど、こうやって限られた人とだけ関わるより、他の世界も見てみた方がいいのだろうか。
「おりるー」
「えー、危ないから駄目ー」
「だいじょうぶだよ!あぶなくないっていってるよ!」
「誰が?ここら辺こわーい怪獣が出てくるんだよ」
「いまかほたちしかいないよって」
「ん?」
僕は勿論、ララもルルもそんなことは言ってない。
確かに気配はないけど……とララも首を傾げる。
「ほら、だいじょうぶだよって」
「果穂ー、誰が言ってる?もしかして幽霊とか見えてる?」
「ゆうれーじゃないよ!きらきらしたようせいさんたちだよ!」
もう!皆言ってるでしょ、と頬を膨らませて抗議してくる。
……きらきらした妖精さん。
「……精霊ってやつ、見える人いるの?」
恐る恐る2人に訊いてみるとあっさりと、いるわよ!と返ってきた。
「勿論見える人は稀ではあるけど……でもそうね、精霊士もいるし」
「せいれいし……これ周りにバレたら聖女様とか言われるかな……?」
「うーん、直結はしないかな、そもそもカホくらいの子供だと見える子もいるの、大人になると見えなくなる子が多いかな」
やっぱ幽霊じゃねえか、とは言えなかった。
まあ同じような感じで、無垢な内は見える感じなのかな。
「カホ、そのきらきらした人たち何て言ってる?」
「あおいおはなあっちにいっぱいあるよって!」
「精霊って人を騙したりする?」
「きらきらしてるっていうし……精霊なら悪いことしないと思うんだけど」
「行ってみて大丈夫かな……」
「悪い気配もないし、行ってみていいんじゃないかな」
「ねえにいにおりる~!」
足元をばたばたする果穂に、降りてもいいけど、絶対に兄ちゃんの手を離さないことを約束させてから立たせた。
こっちこっち、と手を引っ張って行かれる。
果穂は一生懸命僕達を急かすんだけど、どうにもスピードが大人とは違うもので、後ろから3人着いていく絵がシュールだ。かわいいけど。
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