第15話

 果穂とララを宿に無事送り届け、ルルに連れられ、そう離れてもないギルドへ。

 内装としてはこれまた予想通りというか、ゲームや漫画でよく見たやつ!というイメージ。

 薄暗い酒場のような建物に、壁に貼られた依頼書、受付に笑顔で立つ従業員。


「おかえりなさい!時間掛かりましたね?」

「あー、俺達がっていうより、コイツを特訓中だったんだ」

「あら、新規の冒険者さんですか?」


 既に顔馴染みなのだろう、たかだかシルバーウルフにルルとララの割にはお時間掛かりましたねというニュアンスだ。

 ……戦っては気を失い、気を失っては回復してを繰り返す僕がいたらさぞいつもより時間が掛かったことでしょう。


「先日のスライムも何故?と思ってたのですが、成程、色々特訓されていらしたんですね。もう冒険者登録はお済みですか?」

「まだなんだ、登録しようと思って連れてきた」

「ありがとうございます、でも、このシルバーウルフ討伐についてはルル様達の成果になってしまいますが宜しいですか?」

「あっいえすみません、全然大丈夫です!先に登録してない方が悪いんで!」


 反射的に謝ってしまった僕に、くすりと笑って、少々お待ち下さいね、とお姉さん。

 このお姉さんも魔力とかわかっちゃう人なんだろうか。


「こちらがお先にシルバーウルフ討伐の分ですね、それとこちら、えーっと」

「ユートだ」

「ユート様、こちら触れてみて下さい」


 免許証や学生証位の大きさのカードを、魔力を込めて下さいね、と渡される。


「あらっ、あらあらあら」

「えっ、なんかおかしいですか」

「いえ……その……」


 言い淀むお姉さんに頭が真っ白になる。

 なんかやばいものバレたとか!?果穂のこととかか!?


「あの……失礼ですが……魔力の割には、その、魔力特化の方だと思って」

「はあ……」


 僕にはEと書かれただけのカードにしか見えないんだが。

 これはEランクってことだろうけど、どこに魔力とか見えるんだろう、とカードをひっくり返していると、ギルドの人にしか見えんぞ、とルルに突っ込まれた。


「周りに見られると悪用されたり複製されることもありますから。特殊な道具がないと確認出来ないんですよ」

「確かに!便利ですね!」

「でもわたしたちに確認出来ないと、無理な討伐を止めたりできませんから……確認させて頂いてます」

「あー、そうですよね」


 ランクが上位でも、魔法の属性とかによっては任せられない討伐もあるのだろう。ギルド運営も大変である。


「ユート様はまだその、最初ですのでEランクからのスタートですが、今回シルバーウルフの群れも倒されていらっしゃるとのことで、Bランク同等の力はあると思われます、次回の討伐次第で変更となりますが……」

「へー、明日からBランク以上のものを討伐出来るっていうことで大丈夫ですか?」

「本来であればE、Dランク相当の討伐をお願いするのですが、ルル様達がついていらっしゃるのであれば」

「それは大丈夫だ」

「それではまた明日来ていただければ……でもユート様、失礼ながらこの魔力で大丈夫なのでしょうか」


 なかなか突っ込んだことを言いにくそうに訊いてくる。

 そりゃそうだよな、無理に討伐に行かせて失敗しました死にましたじゃお姉さんも目覚めが悪いよな……


「魔力は今増やそうとしてるんだ、時間はかかるけど。剣術もどうにか」

「成程ですね!剣技の方もなかなかのようです!後、気になる点が……」

「なんですか!?」

「属性が……」

「あ、コイツ何でも使えるんだよ」

「え!?でもあの、鑑定の方ではその、あの」

「?」

「どの属性も出てこないんですう……」


 自分のミスだと思ってるのか、お姉さんが泣きそうな困ったような声を出す。


 えっでも僕炎でドラゴン倒したし、スライム凍らせたし、シルバーウルフに雷喰らわせたし……まさかあれも果穂の力!?

 いやいやまさかあの時は果穂に触れてないし、それならララが果穂の魔力を感じただろう。


「ユート様の鑑定、何かおかしいんです、魔力は低いのに魔力特化型で、なのに属性は何も出てこない……」

「普通はどうなんですか……?」

「例えばですが、わたしですと魔力は普通の魔力特化型ですが、属性は水、弱めですが火と風が出てくるのです」

「属性は火や水が多いって聞きました」

「そうですね……魔力が弱い方でも、何かしらの属性が弱くてもつくのですが、ユートさまは属性全てが出てくる訳ではなく、何も出てこない……」


 やばい、冷や汗が出てきた。

 果穂のことはバレませんように、果穂のことはバレませんように……


「属性が出ないのに、色々な属性が使える……」

「それってつまり、無から生み出してるってこと?」

「!そうかもしれません……!」

「待って待って、僕火を使おうとか水を使おうとかちゃんとイメージしてるけど!?」

「それがユート様の場合特殊なのかもしれません……」

「んんん?」

「通常、魔法というのは精霊からお力を頂くものです、空気のように漂う中、そのお力を頂くような」


 ……わからん。


「その精霊のお力を借りずして、ユート様は自分で魔法を作っているということ……?」


 精霊の話なんて聞いてないぞ、とルルを見ると、当然だという表情。

 精霊とか全くもって見えないけど、この世界では当たり前過ぎて話してなかったってことか。


「……申し訳ございません、わたしでは詳しく分からず、お力になれないようです」

「あっいえ謝ってもらうようなことでは!」

「もしお時間ございましたら、司祭様に訊かれるのも良いかもしれませんね」

「はあ……」

「大丈夫です、過去にも同じようなことはあったと聞いた事があります。詳しくは存じないのですが……」

「ありがとうございます!」


 お姉さんを困らすのも困るし、突っ込まれても困る。

 まぁ実際魔法は使えてる訳で、その内何かわかるかもしれない。

 なんせ血が繋がってないとはいえ、妹はチートだ、僕にそれくらいの力があっても罰は当たらないだろう。ていうか、この世界に飛ばしたあの声の主だって困るだろう。

 ……そう、聖女様を守り抜く力くらいはなくては。

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