第14話

「にいにおきてー!」


 このやり取りも何度目か。今日は2桁いけただろうか。

 起こされる度に、にいにかっこいー!すごーい!つよい!と褒めてもらえるサービスつきだ。


「なんかコツが掴めてきた気がする」

「……あたしたちも慣れてきた気がする」

「コツで済ませていいもんかね」

「なんかおかしい?」

「……いいえ、そのまま続けて。群れが近い」

「!」


 確かに、鳴き声と足音が増えた気がする。

 何匹くらいだろう。10数匹くらいまでなら、剣でもいける気がする。でも今は魔法がメインだ。

 範囲から漏れた分はララとルルに頼るとして、今度は範囲魔法で一斉に倒す。

 そんで倒れる。これで最後だ!


「いっぱいおおかみきた!」

「果穂は離れてるんだぞ、兄ちゃんが倒すからね」

「いっぱいいるよ!だいじょうぶ?」


 流石に不安そうな顔をしている。

 頬を撫でて、大丈夫だよ、と言ってやる。大丈夫だ。まだ特訓して3日目だけど、結構兄ちゃんも強くなったんだぞ!

 まだまだ果穂には助けて貰うけどな!


「大丈夫だ、近くで俺も見てる」

「ルルが討ち漏らしたのはあたしが」

「あんな雑魚討ち漏らすかよ」


 やだイケメン!それ僕が言いたかった!


「……よし、いくぞ!」


 すう、と息を吸って、両腕を出す。

 近付いてくる群れに意識を集中する。

 ……ここは雷で行こう。周りにも被害が少ない筈。でも山火事にならないよう、出来るだけ木には当たらないよう……

 自分の持つ最大火力より少し小さくして、それを個体ではなく全体に、漏れることがないように。一匹残らず、倒す!


「にいにがんばれー!」

「おう!」


 兄ちゃんは妹の応援さえあればがんばれるのだ。





「お疲れ様でした~!」

「おはよー!」

「やるじゃん、全滅だぞ」

「……」


 3人が笑顔で僕の目覚めを待っていた。

 どうやら山火事にすることもなく、上手くいったらしい。


「帰って反省会だー!」

「俺等何もしてないけどな」

「おー!」


 すごいすごい、かっこいかった!とはしゃぐ果穂を抱き上げる。僕にとってはこれが一番のご褒美だ。

 まだまだ魔力は低いし、筋トレの成果は当然だがまだ出てないし、それでも確実に手応えは感じてる。

 まだこの世界を知らないから甘い考えなのかもしれないけど、これで少しは果穂を守れるようになってきてるんじゃないか。


「僕魔力増えたかな?」

「こんくらい?」


 1センチくらいにはなったようです。


「大丈夫?歩ける?まだ休んでもいいけど」

「いや、大丈夫、日が暮れる前に森を出なきゃ」

「そうね」


 それに果穂を抱いてると、気のせいかもしれないけど体力も回復してる気がするんだよね。これも果穂の力なんだろうか。

 本当何でも出来るな、凄い子だな果穂は~!


 帰りにギルドに寄るというララに、折角だから中に入りたいとお願いしてみた。

 いつも店の前で待ってたから、どうなってるのか見てみたかった。


「ついでに冒険者登録しといた方がいいわね」

「でもカホは出来るだけ入れたくないな」

「あたし先に宿にカホと戻っとくわ。ルル案内宜しく」

「え、なんで果穂は駄目?」

「目の良い人もいるから……出来るだけカホの魔力のことはバレたくないでしょ」

「そっか……」


 とは言うものの、ここに来て初めて果穂と離れることに不安しかない。

 ララのことを信用してないとかそんなんじゃなくて……


「大丈夫よ、離れてもわかるようにってブレスレットもあるでしょ、それに何かあるならユートが何十回も倒れてる間にカホを連れて逃げてるわよ」

「いや、ララを信用してないとかじゃないよ!こっちにはルルがいる訳だし。ただやっぱり離れるのが不安なだけで」


 でもやっぱり冒険者登録ってのはしておいた方がいいよな、果穂を連れて入れないなら、安心した預け先がある今の内に済ませておいた方がいい。

 ああでもやっぱり不安だ。


「もう!じゃあ、帰りに寄るのはやめましょう」

「えっ、でも討伐報告もあるんでしょ?」

「…… だから、先にあたしたちを宿に送って行って」


 それなら少しは安心しない?と微笑むララ。

 いや、逃げようと思ったらそりゃ簡単に逃げれるだろうけど、それでも頷いてしまった。

 ……女の子の笑顔には弱いんだよなあ。

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