第12話
「どうすればユートには効率的かわかったわ!今日からはスパルタでいくわよ!」
2日目にして今日からスパルタ宣言頂きました。
ララのスパルタメニューは言葉にすると簡単だった。
魔力が空っぽになるまで魔法を使い、果穂に補充して貰い、また魔力が空っぽになるまで魔力を使う。
少しずつ魔力を増やしていくことも出来るし一石二鳥だと言う。
今日もスライムのいる原っぱで、2人から指導を受ける。
果穂は応援係だ。
まずは炎。気を失う。果穂が魔力を補充する。
次は水。以下同文。
次は風、以下略。
雷、以下略。
ゲームで見たようなものを一通り試してみて、その度にぶっ倒れた。
我ながらコスパ悪すぎないか?
「昨日散々だと思ったけど、今日になって飲み込みが早くなってきたわね」
「そうかな?元の世界でのイメージのお陰かな」
「?元の世界では魔法なかったんじゃ?」
「漫画とかゲームとかあって……わかんないよね……えっとほら、物語とかが豊富だったから、それのお陰かも」
「よくわからないけど、何か掴めたなら良かったわ」
「うん……」
「使える属性は豊富なのよね……今の感じだと」
「そうなんだ」
この世界では火と水が生活に直結してるから使える人が多いらしい。
確かに、マッチみたいなものがあっても火が使えたり、安全な飲み水が確保出来れば生活も楽だろう。
風や雷といった属性になると、使える人は少ないらしい。
ゲームとかだと火属性のみ、とかは見るけど、水と火ということは進化、というか、それだけ生活に必要なものを身につけてきたのだろう。
……闇属性とか光属性とかあるのだろうか。
「魔力どれくらい増えたかとかわかる?」
「数値で見えるものではないけど……これくらいから」
「3ミリくらい」
「これくらいかしら」
「5ミリくらい」
ポジティブに捉えると、倍近く増えたと思えば大成功なんだろうか……
「ちなみに果穂はどれくらい」
無言で腕を大きく広げられた。
なるほど。
……なるほど、かわいい。
「毎回魔力補充するのもあれだし、周りにバレちゃうし、もう果穂抱えながら魔法使いなさいよ」
「果穂が危ないだろ!」
「大丈夫よこの子、教えなくてもシールド張ってるわ」
「えっ」
振り返ると、確かにぼんやりと何か発光しているような……
えい、と引きちぎった草を投げると、綺麗に反射した。
……うちの妹、チート過ぎる。
「偉いな果穂は~!天才だな~!!」
「事実だけど兄馬鹿ね」
「いいからカホ抱えて魔法使ってみろ」
ルルに渡されて、危ないだろ……と思いながらもそのままスライムに向けて氷魔法を使ってみる。
……倒れない。
そのまま続けて幾つか連発してみる。
……倒れない!!
「おおお!」
「おー?」
「すごいな果穂!」
携帯バッテリー的なものか。一々倒れずに魔法が使える!なんて凄い子なんだ!
「でも駄目ねこれ」
「えっ」
「これじゃいつまで経っても魔力がゴミのままだわ」
「ゴミって!てかララが言ったんじゃないか」
「毎回これだとユート自身の魔力が増えないままだから、何かあった時困ると思うのよ。だから、こうやって人気がない時は魔力空っぽにするまで魔法使って、カホに補充して貰ってを繰り返して魔力の器を大きくしていきましょ。カホの魔力をバレたくない時だけ、カホを守る振りして抱えたまま戦いましょ」
「……」
「結果的にそれがカホを一番守ることだと思うの」
「そうだね」
できれば果穂を危ないところに連れていきたくない。
でも一々僕が倒れてたら、果穂が魔力を補充することで聖女だと気付かれるかもしれない。補充する前に連れ去られるかもしれない。
それなら最初から僕が抱えていたら、バレることも離れてる間に連れていかれることもない。天才か。
僕の戦闘スタイルが決まった瞬間である。
「でももしもの時にやっぱり剣術も覚えておいた方がいいぞ!」
「それはそう」
「ユートには……これがいいな」
収納から取り出しましたはシンプルに見える剣。
勇者が使ってそうで厨二心が擽られる。
「普通にも使えるし、これは少し魔力を流し込むと、ユートの細腕でもドラゴンの鱗くらいは貫けるだろ」
細腕。鱗。突っ込みたいところはあるが、有難く頂く。
果穂を守るために文句は言わない。
「踏み込む時に少し風の魔法を使うんだ」
そうすると高く飛べる、とルル。
はー、そうやってあの跳躍力を……
「風の属性が一番便利だろうな、振り落とす時にも使える」
「相手によって火の属性とか変えるといいわね、その判断は得意でしょ」
なるほどなるほど。
確かに剣に魔法が必要だ。
そうなるとやっぱり果穂を抱えて突撃する訳にはいかないので、自身の魔力を増やさないといけない。
「果穂、毎回大変だと思うんだけど、兄ちゃん起こすの宜しくな……」
「うん!!」
……力強い返事が心強い。
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