第11話
宿に戻って、風呂を済ませて、今日は部屋で4人揃っての夕食。
昨晩と朝は簡単なスープとパンだったし、昼も用意したパンのみだったので、夕食はどんな感じなんだろうと楽しみ半分怖さ半分だったけれど、なかなか豪華に見えた。
自分はともかく、果穂がずっと食べていくことになるのだから、この世界の食事の普通が気になってたんだ。
「おにくだー!」
「果穂の分は切るからちょっと待って」
「おにくおっきいね!」
食事を運んでくれた宿のおばさんも、小さい子のはしゃぐ姿には弱いらしい。
次からは最初から小さくしてくるわね、なんてにこにこ笑いながら給仕してくれた。
味としてはやはり薄め。不味いとか食べられないとかはない。美味しいと思う。
ただもうちょっとなー、塩胡椒とかあればなー、という感じ。小さい子に食べさせると思えば健康によくていいのかもしれないけど、でもやっぱり少し物足りないかなってくらいで……
「あんまり口に合わない?」
宿のおばさんが居なくなってから、こっそりララが訊いてきた。
そんなことはないよ美味しいよ、ちょっと味は薄いけど、と返すと、確かにここはちょっと薄めね、と言うので、それならこの宿の食事はこれがデフォルトだけど、他での食事はまた違うのか、と今後の食事に楽しみが出来た。
「ねえにいにー」
「ん?ちゃんとふーふーして食べるんだぞ」
「うん」
「美味しいか?」
「おにくおいしー!」
野菜も食べるんだぞ、と名前もわからないが見た目はそう向こうの世界と変わらない野菜みたいなものを促す。
口いっぱいに入れた肉でもごもごしてる果穂を見て、もっと小さく切れば良かったか?とはらはらした。
無事にごくんと飲み込んだ果穂は、続けて、にいにはけんつかわないの?と無邪気に訊く。
「剣かー……ルルみたいに扱える自信がないなあ、でも魔力少ないなら、剣とか使えるようになった方がいいかな」
「そりゃ使えないよりは使える方がいいわね、ルルみたいな大剣じゃなくてもいいと思うけど」
「ルルくんかっこいかった!」
「だよな~?」
「でも剣も魔力使うわよ」
「えっ!?」
思い出して、とララが言う。
ドラゴンが出た時のルルの姿。
「飛んでたでしょ?いや飛んでたというとちょっと違うけど」
「跳躍力……?」
「そう、跳ねたり走ったり、生身の力だけではどうにも出来ないところに使うの。ただの筋力だけじゃあのドラゴンの首を落とすことは出来ないわ」
「確かに……!」
ルルの筋肉は凄いけど、あの首の太さをスパッと切るには筋力だけではもっと大変だろう。
「魔法と比べると消費する魔力は少ないけど、それでも確かに魔力は必要よ、でもそれくらいならユートでもまぁ……その……多分……大丈夫……かな?」
「いやその言い方駄目なやつ!」
「まずはユートも筋肉つけろ!」
「筋肉かああ」
中学途中で部活を辞めてから、運動なんて体育の授業でくらいしかやってない。
たまに思い出したように筋トレしてたくらいだ。
「……筋トレ頑張るかあ」
「にいにがんばれー!」
「いっぱい食べていっぱい鍛えることね」
「いい鍛え方教えるぞ!」
「おー!」
「おー……」
取り敢えず寝る前に筋トレするか……
これも果穂を守るためだ、兄ちゃん筋肉、つけます。
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