第7話

「おはよー!起きてるー?」


 元気な声とノックの音に目を覚ます。

 何回目を覚ましても思う、夢じゃなかった、と。


「おはよう……」

「おはよ!朝ごはん一緒に食べよ!」

「食べたら街に出るぞ!」

「街……?」

「だって知らない世界から来たんでしょ?そんな服見たことないから目立っちゃう、服を買いに行ってー、それから魔力の使い方練習しよ!」

「あ……」


 そうか。物珍しさや異物感で果穂に被害が出たり攻撃されたらたまったものではない。この世界に馴染むことも大事なのだ。


「助かる……ありがとう」


 ララはにこっと笑って、いいのよ!と言う。朝から眩しい笑顔だ。


 朝ごはんよ、と出されたのはサンドイッチのようなものとスープ。

 温かいスープと柔らかなパン。固いパンしかなかったらどうしようと思ってたので、何だかんだ食生活も大丈夫かもしれない。

 やっぱり味は薄目だったし、衛生観念は心配だけれど。


「おねえちゃん」

「んー?」

「おみみほんもの?おにいちゃんもおそろい?」

「本物だよ、触ってみる?強く触ったら痛いから優しくね」


 いいの?とこっちを見て訊いてくるので、本人がいいと言ってるなら、と、優しくだぞ、と頷いてやる。


「わあ、ふわふわだあ……」

「そうでしょう、あたしたち毛並みも自慢なのよ!」

「おねえちゃんたちねこさんなの?」

「そうよ、猫族。こわい?」

「かわいい」

「俺は?」

「かっこいい!」


 そうか、と満足そうに頷くルルに、少し心配になる。

 そのかっこいいはライオンかっこいいと同じだよな?にいにかっこいいと同じ保育園の男の子かっこいいとは違うよな?


「カホは素直でかわいいな!ララとは大違いだ」

「なによ、あたしだって素直でかわいいでしょうが」

「いやあ、このきらっきらした瞳!お前とは大違いだ」

「おねえちゃんもかわいいよ!」

「そうよねえ!カホいい子ねえ!」


 昨日の会話の雰囲気では、獣人はもしかしたら恐れられていたりするのかもしれない。そこまで突っ込んで聞けなかった。

 でも依頼を受けたり、こうやって宿に泊まれるということは迫害されてたりはないのだろう。

 今日街に出た時の反応でわかるだろうか。


「食べたらすぐに出ましょ、荷物はないから問題ないでしょうが、また夜はここに戻るからね」

「はい!宜しくお願いします!」

「緊張してる?」

「昨日外で倒れたから、街の雰囲気とかわからなくて……」

「大丈夫よ、この街は比較的平和だから、その珍しい服でも何かされたりはないと思うわ」

「俺達もいるしな!」


 昨日のことはすごく驚いたが、この2人に会えたことを考えると良かったのかもしれない。

 2人の笑顔が頼もしかった。




「外国みたいだ」


 宿を出て、少し歩くとそこはまさに異国の世界だった。

 屋台がならび、野菜みたいなもの、焼いた肉、アクセサリーや置物が売られ、絵描きのような人もいる。

 活気のある街そのものだ。


「こっちよ」


 屋台とは違い、建物の中に入ると、衣装が所狭しと並んでいる。ララやルルが着ている服装と似てる。やはりこの世界はファンタジーだ。


「どういう服がいいかな?」

「そうね、うーん、ユートならこっちで……カホはこれかな……ううん、あれもかわいいかも」

「この後予定詰まってんだから早く決めろよー」

「わかってるわよ!」


 どこの世界でも女の子の買い物に時間がかかるのは共通のようだ。

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