第99話 愚痴ひとつ
夫は、妻の史織から見せられたメールを見て、慌てて充電器に挿したスマホの電源を入れる。
そして、メッセージアプリを開いて、妻に送った。
”また、変なメールが来たってこと?”
妻もまた、それにメッセージで答える。
”そう。この写真、あなたの職場のデスク?”
”いやいや、俺の机こんなに片付いてないよ。ね、ここ見て”
洋輝がスマホの角の傷を見せた。小さな傷なのだが、メールに添付された写真のスマホにはその傷がない。
”あ、ほんと。”
”ほら、同じ機種で同じカバーだけど、俺のじゃない。”
じっくりと写真を眺めるが、そこだけが一致しないだけで他はそっくり同じだ。
ということは、わざわざこの写真のために新しいスマホを用意したということなのだろうか。同じカバーまで付けて。
洋輝が、写真をまじまじと見つめる。何か気になることでも有るのだろうか。
視線でそれを問うように見つめると、洋輝が再びメッセージを寄越す。
”このデスク、俺の勘違いじゃなければ、派遣社員が座っている場所のデスクだ。デスクの表面の色が俺らのと違うんだけど、ただ、今はどの机も埋まってるから、こんなに綺麗になってないはずなんだけど”
夫の言葉に、史織は眉をひそめた。
翌日息子を迎えに学童へ行くと、例の上級生はいなかった。
そのせいか、峻也は楽しそうに低学年の子たちとサッカーに興じている。盛り上がってるのでしばらく見学したくなった。校庭の隅の方に、自分と同じ考えらしい保護者の姿があったから、そちらへ足を向ける。
「こんにちは。」
「こんにちは。楽しそうにやってますね。」
ちょっと化粧の濃い、茶髪を一つにまとめた女性はどの子の親なのだろうか。どこかの会社の制服らしい格好で、だるそうに校庭を見つめている。
「低学年は元気でいいわね。高学年になると、何かとゲームばっかりで・・・。」
ぽつりと言うので、史織もそれに応える。
「低学年も、ゲームは大好きですよ。」
「まあそうなんだけど、高学年になるとさ、のめりこんじゃって困るんだよね。自分で色々出来ることも増えちゃって、課金とかやっちゃうでしょ。金に汚くなってきてさ。」
眼の前の保護者の言葉を聞いて、ゾッとした気がした。
小学生のうちから子供が課金などに手を出して、親が困っているなんて。
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