第97話 親戚関係
史織が無理をして頑張ったからか、少しだけ学童に来ている六年生の情報を得ることが出来た。
通常学童に来ている六年生は三名で、中田佳樹はそのうちの一人だ。時々ランダムで来たり来なかったりする子が数名いるらしいが、毎日のように来るのは三名だけだという。
学童で知り合いになった作業着の保護者は、菊池と名乗った。
なので、史織も名乗って、なぜ色々質問しているのかを簡潔に語った。息子が時折学童でいじめられているらしいこと。相手は六年生らしいことなど。
「小学校になると、それまで専業主婦だった方もパートに出たり以前の職場に完全復帰したりして、子供の預け先が学童になりますよね。でも高学年になると塾に行かせたり留守番が出来たりするんで、人数が減るんですよ。」
「そうですね。確かに、低学年の方が圧倒的に多いですもんね。」
「うちも私が働いてるから学童使ってるんですけど、塾とか行かせる余裕はないし、母子家庭なんで大人が家に誰もいないから自宅で留守番も心配だし。まあ、三人とも多かれ少なかれちょっとした訳ありなんですよ。まあ、それでも子供たちは仲良くしているから構わないと言えば構わないんですけどね。」
「お一人で家庭を切り盛りしてらっしゃるなんて、ご立派ですよ。」
「そうするしかないからそうしてるだけですよ。訳ありの家庭なんてどこも皆そうでしょう。・・・だからといって、誰かをいじめていいわけじゃないですからねぇ。」
「すみません、お宅のお兄ちゃんではないのはわかってるんですが。」
「ご心配なのもわかります。やっぱり先生に間に入ってもらうのがいいと思いますよ。
「職員の方も中々大変なようで。」
「子供相手はねぇ。」
「色々教えてくださってありがとうございました。今後もよろしくおねがいしますね。」
「何かあったらまた遠慮なく声かけてください。知ってることで役に立てそうならお話しますから。」
「ありがとうございます。」
気さくで親切な保護者に頭を下げて、史織は礼を述べた。
結月が言っていたことを思い出す。
以前、小学校の運動会で顔を合わせたときに、甥っ子がいると話していた。もしかしたら、と思っていたけれど姓も同じだし、結月の甥っ子だと言うのは峻也をいじめたという六年生ではないだろうか。
だが、なぜそんな事をするのか、理由がわからない。
理由がわからないので、直接聞くしかないのだが、これも安易に直接尋ねていいものかどうかわからなくなっていた。
メッセージでその事を彼女に聞くのは容易いが、それでいいのかわからないのだ。
息子に食事をさせて入浴を済ませ寝かしつける。今日は最後のドッジボールが効いたのか、すぐに寝入ってしまった。その寝顔を見つめながら何度も結月と学童の少年の関係について考えを巡らせるけれど、やはり結論が出ない。
考えているうちにうとうとし始める。
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