第70話 被っている
その後、朝のロッカー室では余りにも忙しないので、昼休みにまた二人で話をすることにした。
「結局スマホを調べる話も無くなっちゃったんだよね?」
今日はお手製のお弁当らしい。鶴田が弁当箱を開ける。
社食は賑わっていた。その片隅のテーブルで二人は話をする。
「結局、スマホ本体が無いんだから、どうにも出来ないだろうって。主人が言って。誰かに盗まれた。・・・ていうか、主人は誰に取られたかも心当たりがあるみたいなのに、どうしてもその人のことを言ってくれなくて。」
「うーん・・・どうかなぁ・・・。」
「え?」
「スマホ本体が無くても、情報さえあればある程度は契約会社の方で使用した履歴くらいは調べられるんじゃないかなー。まあ、もしかしたら、色々事情を話さなくちゃならなくなるだろうけど。犯罪絡みなら、有り得るかもよ。」
「本当ですか!?」
「いや、わかんないけど。だって通話やメールって会社を経由してるんだから、残ってるんじゃないの?そういうの、裁判とかで証拠に出されたりするよね?だから、絶対不可能ではないはずだよ。どういう手順を踏めばいいのかまでは、わからないけど。」
「・・・さすが、詳しい・・・。」
「こんなこと詳しくてもねぇ・・・。昔、そういうのやりましたので。」
鶴田は5年前に離婚している。
その時のことを言っているのだろうか。
「あの、もしかして鶴田さんが離婚したのって」
「そう。配偶者の不貞。調べ上げるの大変だったわ。文字通り身も心も、そして財布の中身もギリギリと削られていくんだよね。あのさ、ご両親とか他の親しい友達とか、相談しないの?信頼できる人ってそばにいない?」
「・・・ちょっと、親は離れているので。ママ友とかは、そこまで親しい人もいなくて。・・・あ、でも、最近友達になった若い女性がいて、その人が色々と心配してくれてる。」
「・・・最近?」
「まだ、会って三ヶ月くらいなんだけど。迷子になった息子を連れてきてくれた人で。凄く親身になってくれて、色々話を聞いてくれる。偶然にも夫の職場の人だったんで、色々会社の主人のこととか教えてくれるので、有り難いんですよ。」
思いつくままに、結月のことを鶴田に話してしまった。まあ、接点もないだろうし、別に問題もないだろう。
鶴田は、なんとも渋い顔をした。
「会って三ヶ月の人?ニューフェースじゃないですか。・・・三ヶ月くらいって、須永さんの様子がおかしくなってきた年月と被ってる気がするんだけど。気のせいだよね?偶然だよね?」
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