第65話 うそかまことか
その夜遅く帰ってきた夫に手紙を見せた。
「げっ・・・!!」
真っ青になって手紙の中身を放り投げた洋輝は、史織と同様にゴキブリが駄目だった。夫はカブトムシやクワガタが平気なのに、なぜゴキブリはだめなのだろうと不思議に思う史織であった。
そして、印刷された凄惨な血文字印刷にも、目を剥いてショックを受けている。
血文字風だからなのか、それとも、スマホを奪われた事実がわかったからなのか。
「マジか。盗まれてたのか。やっぱり無くしたんじゃなかったんだ。」
「ね、もう、本当にこれ普通じゃないと思う。おかしいし、異常だよ。この人、本当に洋輝の会社に勤めている人なの?派遣とは言っても、同じ職場にいるんでしょう?いくらなんでも同僚に、こんなことする?いくら、関係を持とうと言われて逃げられたからって、こんなの・・・。本当にこの人なの?」
「だって、あんな写真撮られるのって、他にあり得ないしなぁ。・・・でも、確かに、こんなことするような子には見えないんだ。こんな、陰湿な・・・悪戯にしたってたちが悪すぎる。あの子は、まったく普通のOLっていうか、見た目はまあまあ可愛いし、男にもモテそうだし、こんなことするタイプには。」
史織が洋輝を睨みつける。
なんだ、その言い方は。まるで相手を庇うかのようなその言い方は。その子のせいで、史織がこんな恐ろしい目に遭っているというのに。
その女性がどんなに見た目がいいのか知らないが、夫の言い方には苛立ちしか起こらない。まるで、不倫がバレて、相手の女性を庇っているかのようで。
「・・・ねえ、もう直接会って聞きたいんだけど。どうしてこんなことするのか。スマホの件にいたっては完全に犯罪だよね?警察沙汰だと思うんだけど。」
「いや、でも・・・。」
煮えきらない態度の洋輝は、まるで言い逃れを探しているみたいだ。
今まで、史織に話してくれたことは、実は真っ赤な嘘だったのか?自分は騙されていて、夫の口車に乗せられていただけなのか?
本当は、実は、その派遣の子とは関係が有って、とっくに不倫関係で、何か弁解をしようと嘘をついて、あんなことを言ったのか?
そもそも冷静になって考えたら洋輝の説明には無理があったのではないか?
車で送っていった先のコンビニで意識を失って、気がついたら、相手の自宅だった?出来過ぎのストーリーではないか?そこで関係を迫られたから逃げ出した?働き盛りの男が、据え膳食わずに逃げ出すだろうか?
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