第42話 受診を促す
慌てた様子で反応した相手の声が、スマホから聞こえてきた。
「本当ですか!?大変です、病院にすぐ受診しないと。」
不安の余りに結月に電話してしまった史織は、その心配そうな声を聞いて、少しだけ落ち着く。
「・・・多分、そうなんだと思うんだけど。どこを受診したらいいんでしょう?よくわからなくて。内科でいいのかしら?」
夫や息子に心配をかけたくなくて、家族に相談が出来ないと思ってしまった。それに、自分に隠し事がある夫に、余り弱みを見せたくない、と言う気持ちもあったのかもしれない。
「耳鼻咽喉科です!味覚障害や嗅覚障害は亜鉛不足が原因のことがあるんですよ。検査してもらえば原因がわかりますから。」
「そうなの?・・・知らなかった。」
「もしよければ、私付き添いますよ。知り合いの耳鼻科、紹介しましょうか?」
「結月さん、詳しいんですね。」
「・・・私もなったことあるからわかります。」
返答の声は、ぐっと硬い声だった。
「結月さんも?」
「ひどいストレスにさらされても起こる現象なんですよ。もしかして、史織さん、凄く疲れてませんか?ちゃんと眠れていますか?」
言われて見れば、確かにストレスが増えた気がする。
夫を慕う気持ちと疑う気持ちに揺れながら、その相手をするのは思いの他負担だったようだ。寝不足、というよりも眠りが浅くて何度も起きてしまう。そして、食欲不振だ。まったく食べられないわけではないが、以前に比べ極端に食べられる量は減った。酷い時は食後に吐いてしまうことも有る。
そして、その全てを家族には言えないもどかしさが、一層史織を追い詰めていた。
洋輝は心配してくれているようだが、史織が大丈夫だと言い張ればそれ以上は追求してこない。子供への影響を考慮しているのだろうか。史織が大丈夫と言い張るのも、峻也へ影響を与えたくないからだ。
「史織さん、次のお休みいつですか?一緒に受診しましょう?私一緒に行きますから。検査してもらったほうがいいです!」
「うん・・・ありがとうございます。お言葉に、甘えます。」
だから結月がそう言ってくれれば、つい言うままに、甘えてしまっていた。今や、なんでも相談できる友人となった彼女に、精神的に頼ってしまっている。
どうして彼女がそこまで自分のためにしてくれるのか、深く考えることもなく。
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