第21話 メッセージ送った?
史織の視線がダイニングを彷徨った。何かを探しているのだろう。そう気付いた洋輝が、あ、と呟いた。
「いつものハンドバッグ?寝室に置きっぱなしだよ。持ってこようか。」
そう言って腰を浮かせた夫の方をなんとも言えない視線で見る。
もしも、夫が妻のハンドバッグとスマホを既に調べていて、ハンドバッグの奥底にしまったピアスや口紅を処分していればきっとなくなっているはずだ。
史織は長い間気絶していたのだから、その間になにかされていてもおかしくはなかった。ただ、空き巣に入られるなどという事件が起きたので、果たして夫にそこまでのことをする余裕もなかったと思う。
洋輝は不思議そうな顔で妻の返答を待っている。その表情には、これと言っておかしな点は見当たらない。
「・・・うん、持ってきてくれる?」
「了解。座ってなよ。」
ほどなく、洋輝が史織のハンドバッグを手に戻ってきた。
愛用の牛皮のハンドバッグ。特に有名なブランド製というわけではないが、気に入ってもう三年も使っているいるので、少しくたびれていた。
まずはスマホを見る。着信が何件も入っていた。ほとんどが夫のものだ。自宅にもどってくるまでに何度も連絡したのだろう。だが、今はそっちではなく、メールの方だった。
「・・・これ、見て。」
例のメッセージは、史織が保存したまま、残っている。
それを、洋輝に見せた。
「・・・”先週は楽しかったね、君と過ごした夜は・・・なんだよ、これ!!お前、こんなメール貰うような相手がいるのか!?浮気してんの!?」
洋輝が、文面を見ただけで半分キレそうになっている。
「よく見て。送り主はあなたよ?」
「俺、こんなん送ってないし!!こっぱずかい文面、俺じゃない!・・・って、あ、でもこの送信元は、確かに俺のだ。」
キレそうになったり驚いたりと忙しい反応を示すのは、いかに洋輝らしい。どうやら本当にこのメールには彼も心当たりがないようだ。
慌てたように、彼がリビングの充電器にさしてあった自分のスマホを持ってくる。そして、妻にも見えるようにすぐ隣で、メッセージアプリを開いた。送信歴を確認するが、そのメールを送った記録はない。日付も見るが、やはり、その日に誰かにメールを送った記録はなかった。
一緒にスマホを覗き込んでいる史織も、この画面を見て首をひねるしか無かった。
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