第24話 ホウベン

「お母さ~ん、ただいま~。」

「あら、モモ、お帰りなさい。すっかり日に焼けたわね。」

「ああ、毎日外でライブしてたから。」

「神谷先生から電話があったわよ。とてもよく頑張ってるって。」

「でもさあ、なんでみんなは普通に高校生やってるのに、私だけこんなサバイバルライフを送っているんだろう。」

「まあ、なにか理由があるんじゃない。お母さんにはよく分からないけど。」

「神谷先生に聞かなかったの?」

「聞いてないわよ。だって、それはあなたが自分で気付かないと。」

確かに。今は7月の終わり頃。3月で下宿生活も終わるだろうから、それまでに解き明かしてみせよう。

「それより、スーパーに買い物行くけど、ついてくる?久しぶりに食べたいものあるんじゃない、買っていいわよ。」

「行く!」

お母さんとスーパーに行くなんて、恥ずかしいけれど、私はスーパーで色々買って欲しいものがあるのだ!


チョコレートにキャンディ、ポテトチップス。全部、日本のものと魔法使いの国のものは微妙に味が違う。

「子供たちにギターを教えていて、その子たちにお菓子を買ってあげたいんだ!」

「あら、お菓子を買っちゃったら、ギターのおけいこ代よりかかっちゃうじゃない。」

そうなのだ。私は、そういう面でも社会人には遠く及ばない。しかもお母さんは財布のひもが固いから・・・

「そうなんだよね・・・」

「いいわよ、買いましょう。お母さんが出してあげるから。」

「ありがとう!」

「モモ、今日のお夕飯何がいい?」

「肉じゃが!とカレーライス!」

「どっちかにしなさい。材料ほとんど一緒じゃない!」

私とお母さんは、顔を見合わせて、あははと笑った。こんな時も大事だよね。

「お母さん、家に帰ったら、色々、話聞いてくれる?」

「いいわよ。あんまり長いと寝ちゃうかもしれないけど。」

お母さんは、冷たい人なのかと思う時もあったけれど、もしかしたら私のことを大人扱いしてくれていただけなのかもしれない。

「お母さん、ありがとう。」

「どうしたの、いきなり。」

家に帰って台所で料理を手伝いながら、お父さんの帰りを待った。料理なんて、めったに手伝ったことがなかったから、お母さんもびっくりしたと思う。

でも、気付いたのだ。好きなことをするだけでは、好きなことを思う存分楽しめないと。

「お父さん、お帰り!」

「モモ、帰ってたんだね!アメリカはどう?英語覚えた?」

「え?お母さんは、先生からなんて聞いてる?」

「アメリカのギターの専科がある高校に留学してるんでしょう?」

神谷先生、結構やるな。私は話を合わせることにした。

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