第二章

第23話 夏休みの宿題

夏休み初日とはいえ、高校好きな生徒たちは部活やら自習やら、何かと理由をつけて桃田高校にやってくる。私には考え付かなかったことだった。

そもそもギターばっかり弾いていた私には友達もいないし・・・と、ちょっと感傷的になっていると、

「モモちゃ~ん!!!」

と、手を振っている女の子が。隣の席の女の子だ!確か・・・

「由和ちゃんだよね!」

「そうそう!急に来なくなったから心配したよ~。」

「なんか、異世界に送られてしまいまして。」

「やっぱり、モモちゃんって面白いんだね。」

なんか、普通に話せている・・・?

「あ、『ギター弾きのモモ』だ!」

「ギター持ってないよ!珍しい!」

「ついにギタリストデビューして、忙しかったんでしょ?」

「え、お金持ちと結婚して退学したんじゃなかったの?」

みんなが好き勝手に噂をでっち上げたようだ。

「えっとね、魔法使いの国に下宿してるんだ。」

「そんな訳ないじゃん!モモ、何か隠してることがあるんじゃない?」

「う~ん。」

「まあ、なにかあったら相談に乗るから、僕に話して。急に学校休むと心配しちゃうからさ。」

色々と勘違いされているようなので、そのままにしておくことにした。それにしても・・・私は本当に異世界に行っていたのだろうか?全て私の妄想だったとしたら・・・?そして私は、神谷先生に会いに、職員室に行った。

「神谷先生、ギターを置いてきてしまったようなんですが!」

「ここにいる一か月の間、夏休みのあなた用の宿題が出ているわよ。それをちゃんと始業式に提出できると約束してくれるなら、ギターを取りに行ってあげる。」

「ちゃんと提出します!」

そして、私は無事にギターを手に入れた。さあ、山ほどの宿題が私の目の前にある。

帰り道、すれ違ったクラスメイトに、

「ねえ、宿題って、どうなってる?」

「ああ、鬼出てるよ。」

クラスメイトが、宿題の山を私に見せた。みんなも宿題がたくさん出てるんだな。よし、文句を言わずに頑張るか。ここは芸能高校だから、宿題は少ないと思っていた。でも、自由研究や読書感想文、音楽や美術、外国語など、芸能の道に進むためには、やっておいても無駄にならない宿題なのかもしれない。大変な高校に入ったものだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る