第18話 ノイキャン

私はユメに連れられて、ユメの家にお邪魔させてもらった。

「お母さんもお父さんも帰りが遅いから、のんびりしてってよ。」

「ありがとう。あ、ドラムセットだ!」

「そうそう。叩いてみる?」

「うん!」

ユメが防音魔法をかけ、私はドラムを叩いてみた。全然上手くないけど、楽しい。

「ユメのお手本が聞きたいな!」

「よっしゃあ。こんな感じ。」

ドドドドドドドドン!

「かっこいい!流石だよ~。」

「えへへ。モモのギターと合わせてみようよ!」

ユメが私のギターに音量を大きくする魔法をかけた。そして、二人でずっとセッションしていた。あまりにものめりこんでいたため・・・

「ユメ、ただいまー!」

ユメのお母さんが帰って来たのにも気付かないほどだった。

「あ、おじゃましてます。」

「おじゃましてます」の現地語が分からなかったので、日本語で話しながら、ジェスチャーをした。

「・・・ああ!私、あなたのこと知ってるわよ。最近、噴水のところにいるわよね。」

私はどうやら有名人らしい。

「私、モモとユニット組みたいな。私がドラム、モモがギター。ヴォーカルは曲によって変えてさ。」

「やりたいけど、練習のスタジオを借りるお金が・・・」

「何言ってるの。今日みたいに、ここで練習すればいいじゃん。ねえ、ママ。」

「私は仕事で家にいないから、練習はし放題よ。」

「・・・やってみようか!」

そして、ユニットが結成された。ユメの学業が最優先で、私も今まで通り子供へのギター教室や噴水の前での路上ライブ、モニカさんの家事のお手伝いを優先することになった。それでも時間はいっぱいある。


「ユニット名、どうする?」

「モモのユメ」

「あはは。ないわー。」

「じゃあ、ユメのモモ」

「あははは。」


しばらく悩んで、ユニット名は


「ノイズキャンセラー」


になった。略して「ノイキャン」だ。

これには深いわけがあって、生活音がうるさいときに、ヘッドホンで音楽を流してノイズキャンセラー代わりにしていたところから持ってきた名前だ。現地語でうまく言い表せなかったので、ユメは全く理解できていない。それでもユメは、響きだけでこの名前を気に入ってくれた。ここに来てから私が作った3曲に、ユメがドラムをつけてくれることになった。これから楽しくなるぞ。噴水前でドラムは無理そうだけど、もしかしたらユメの高校の文化祭に、2人で出させてもらえるかもしれない。希望を持って活動しよう。


二人でノイキャンの練習日と時間を決めて、私はモニカさんの家に向かった。日はだいぶ落ちていた。

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