第16話 初ライブ

魔法使いの国に来て、もう一か月。トカゲのリバーは、基本、私の洋服のポケットの中に入って、ここの国のしきたりを教えてくれた。

市場でコーヒーも手に入れた。私たちの飲むコーヒーより、だいぶ味が薄い。魔法使いの国の人たちはカフェインに弱いのかもしれない。

言葉もだいぶ覚えた。一か月でこんなに言葉ができるようになるとは。己の才能に感動だ。全ては、みんなともっと仲良くなりたいと思ったからだ。

曲も3曲ほど作った。そろそろ、ちゃんとライブをやりたいな、と思った。いつもの噴水前に、ギターを抱えて準備をする。いつも見に来てくれる常連さんに、今度噴水前でちゃんとライブをやりたいから、仲間を誘ってもらうようにお願いした。

「言葉、だいぶ覚えたね。営業までできるようになるとはね。」

と、笑われた。町の掲示板にも、私のライブの情報を載せてもらった。


そして、ライブの日。誰もお客さんが来なかったらどうしよう、と心配だったが、12人くらいのひとが集まった。今回は、トークは魔法使いの国の言語でお届けして、日本語の曲を2曲、現地の言葉を1曲披露した。優しい人たちが拍手をしてくれた。みんな、いつもより多めにコインをくれた。

「ギター、上手くなったね!」

と、ねぎらいの言葉をかけてくれる方もいた。この世界に来てからも、たくさんギターを練習した。人間界では、インターネットで動画を見ながら練習していた。この世界では、どうやって練習しようかと途方に暮れていたが、リバーが、

「弾き方の映像を見ながら練習するといいよ。」

と言うやいなや、目から光を出した。光が壁に当たり、映像が流れ始めた。

リバーはトカゲだと思っていたけれど、どうやら人間界のトカゲとはちょっと違うみたいだ。それはともかく、たくさん練習したのだ。私の演奏がコインの枚数に比例するので、頑張っているのだ。川野先生もライブに来てくれていた。

「順調そうね。よかった。」

と言っていた。

家に帰ってモニカさんにコインを渡そうとすると、

「こんなにたくさんは要らないから、一部をモモの好きに使っていいわよ。」

と、言われたので、コインを握りしめ、私は一人で日帰りの旅に出ることにした。

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