第6話 邂逅

今は、おそらくお昼の11時頃。私たちの世界と魔法使いの国には、大した時差はなさそうだ。街を見渡すと、うちの近所にはないようなお洒落な街だ。来られてラッキーかもしれない。

「あなたに、いい進路があるのよ。」

という神谷先生の言葉を思い出した。とりあえず、お腹が空いた。


お財布に5000円ほど入っているのを思い出し、近くに偶然あった屋台へ。

屋台には、よく分からない食べ物が売られていた。肉なのか魚なのかも分からない。ちょっと聞いてみよう。


「あの、すみません。これをひとつ欲しいんですが。」

店主の、ヒゲを生やしたおじさんが、当惑しているのが分かる。

そして、よく分からない言葉を話し出した。英語ではない!

そうか、ここは現地の言葉が使われているのか。ということは・・・

おじさんは、私の持っている1000円札を指差し、身振り手振りでここでは使えないと教えてくれた。

「あ、わかりました。アイシー。すみません。ありがとうございます。サンキュー、サンキュー。」

と、おそらく伝わらない英語をなぜか織り交ぜながらその場を去った。


さっきの女性、川野凛子先生が日本語をしゃべっていたから、日本のようなところだと油断してしまっていた。さて、どうするかだ。


幸い、私が体の前に背負っているリュックサックには、たくさんのお菓子が入っている。お昼ご飯にはなるだろう。でも、ちゃんとしたご飯が食べたかったな・・・


リュックサックを開けて、街の隅っこでお菓子を出していると、小学校低学年くらいの女の子と男の子がじっとこっちを見ている。仕方ないな。

私は手招きをした。子供たちは最初は警戒していたが、そっと近づいてきた。そして、私は子供たちにお菓子を分けてあげた。多分、魔法使いの国には、私が持ってきたようなお菓子はないんだろうな、と思ったからだ。似たようなお菓子でも、ちょっとパッケージが違ったりするととても珍しがっていた私の子供時代を思い出す。2人の子供と仲良くお菓子を食べていると、女の子が自分を指差して、

「リタ。」

と言った。なるほど、リタちゃんね。

男の子は、

「キラ。」

と言った。とりあえず、2人の名前は分かった。

私も、

「リタちゃんとキラくんね。私はモモ。モモ。」

と、自己紹介をした。

「モモ!モモ!」

と、異国のお姉さんと言葉が通じ合った2人の子供は喜んでいる。可愛い。

リタちゃんとキラくんは、次に私の持ち物に興味を示し始めた。

「ああ、これ、私のギターね。ちょっと弾いてみようか?」

と、私はギターケースを肩から下ろした。



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