第5話 出会い
しばらく気を失っていたみたいだ。私は、私の母親くらいの年齢の女性の声で我に帰った。
「大丈夫?こんなに大きな荷物を背負って。」
「進路指導室から、突き落とされました。」
「ああ、あなたが月島モモさんね。」
「はい。ここは、どこですか?」
「魔法使いの国よ。」
「ん?」
頭にハテナマークが浮かぶ。そもそも、魔法使いの国なんて、聞いたことないぞ。
「ということは、みんな魔法が使えるんですか?」
「たまに使えない人もいる。私は使えるわよ。何かやってみる?」
「お願いします!」
女性は、いつの間にか手に木の枝でできた杖を持っていた。私に杖を向けて、
「ヘーゼル!」というと、みるみる女性が大きくなっていった。
いや、私が縮んだのだ。手を見ると・・・手が緑色をしている!
「あなたをカエルにしてみました。」
ま、待って。カラスに食べられちゃう!!!と訴えてみても、
「ゲコゲコ、ゲコ!」
という声になってしまうし・・・すると女性が、
「リーゼル!」
とまた呪文を唱えた。
みるみるうちに元の月島モモに戻り、ひとまず安心。
「私は川野凛子。母親が魔女で、父親が人間なの。私もあなたと同じ私立桃太高校生の頃に、この国に留学して、そのままお仕事に就いたのよ。」
先輩だったのね!
「お仕事とは。」
「魔法学校の先生。魔法学を教えているの。」
「私も、この高校に編入することになるのでしょうか。」
なんか、楽しそうだぞ。
「いや、まさか。」
・・・え?
「モモの態度の悪さは常々聞いてるわよ。だから、あなたには1年間、お仕事をして自分で生計を立てるようになってもらいます。普通の留学は学校に通って私の家の子供部屋に住んでもらうけど、あなたにはもっと厳しいことが求められているようね。」
「あの・・・どんな仕事をすれば・・・」
「可哀想だけど、自分で考えなさい。良い滞在を。」
凛子さんは羽織っていたマントをひるがえし、颯爽と去っていった。
私はしばらく放心状態だったが、仕方なく体勢を整えた。
私は、この未知の世界で生き延びるのだ。
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