第8話 僕とシュザンヌと子供たち

 僕は、椅子に座ったまま、膝の上の妻を起こさないように、大きく背伸びをした。

「お父様、お母様」

庭で遊んでいたはずの、子供たちがやってきた。


「お母様、あら、また猫になってしまわれたの」

「ここが良いみたいでね」


 僕は、膝の上で寛いでいる猫の姿の妻、シュザンヌを撫でながら、御義父様の執務のお手伝いをしていた。満足にお手伝いできるかというと、難しい。けれど、御義父様も、御義兄様も、快く教えてくださるし、妻も協力してくれるから、なんとか手伝いの一員くらいにはなっているはずだ。


 僕と妻に領地を、というお話をいただいている。正直、自信がないので、今はお断りをしている。あと五年か十年くらいして、もう少し自信がついたら、とお返事をしたら、御義父様と御義兄様に、君は慎重すぎるとのお言葉をいただいた。なんだか少し、こそばゆくて、嬉しかった。


「お母様ばかりずるいわ」

子供たちが頬を膨らます。

「お母様はずるくはないよ。僕のお手伝いをしてくれたあと、休憩をしているだけだからね。ほら、練習してごらん」


 子供たちが、子猫になった。子供たちのほうが、妻よりも变化の術を上手く使える。

「おいで」

僕の膝の上には、妻が陣取っている。場所が足りないのか、子供たちは、僕によじ登ってきた。

「おやおや。これではお仕事ができないよ」

目を覚ました妻が、子猫まみれの僕を見て笑った。ふわふわの妻を、僕は抱きしめた。


<番外編 テオドール視点 完>

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