第26話 観光 其の壱

 彼女はとれそうな宿を探している。僕は車から降りて周りを見渡す。温泉地と言うことですこしばかり硫黄の匂いがかすかにする。通り過ぎて行く人はいろいろ見長っら楽しそうにしている。

「なあ」

 話しかけられる。年を取ったおじいさんだろうか。雰囲気はそれだけど顔がよく見えない。太陽が邪魔をしている。

「どうかしましたか」

「君は...」

 僕の名前を言われすこし恐怖を覚える。しかし、昔あったことがあるのかもしれない。

「今、この世界はどう思うか」

「この世界ですか。この世界なら素晴らしいと思いますよ。街ゆく人の顔を見れば誰もが笑顔で楽しそうですから」

「そうか。だが、この世界は発展が遅いなと思ったことはないか」

「発展がですか。特に思ったことはないですね」

「まあ、いい」

 そうして去って行った。どこに行ったのか全く分からない感じで消えたように感じる。自動車の窓が開き彼女が話しかけてくる。

「宿が取れました。それでは行きましょう」

 駐車場に止め歩いて行く。部屋についてとりあえず必要な物でも用意して貰うということだ。廊下は長く綺麗だった。人の気配はすこし少ない気がしたけど高級感はあった。部屋には既に浴衣とお風呂で必要な物が一式そろっていた。

 夜ご飯はここで食べることにして昼は街の中で食べることにすることにした。


「かりんさんは、このようなところにはよく来ているのですか」

「あまり来ていませんね。しかし、このような予約などの取り方などは教わっておりますのでお困りごとがあれば何でもお申し出ください。私が解決しますので」

 彼女は頼りになる。将来彼女と結ばれた人はとても幸せ者だろう。


「温泉入ってから行きますか」

「それもそうだね。せっかくだし入っておくか」

 彼女が一緒に入ろうとしたがあまりにも申し訳ない。僕の半裸は既に彼女に見られているが家族風呂に入って洗って一緒に入ろうというのは彼女にとってもあまり良くはないだろう。



「いい湯だな」

「いい場所だね」

 そう言った可憐さんは自身のサイズに合ったバスタオルを用いて横に入っていた。

「いつの間に」

「私のことを、忘れていたでしょう。主様私も忘れないでくださいね」

「忘れてないよ」

「それにしても、彼女と一緒にお風呂に入れば良かったのに」

「どうして」

「言わなかったかな。彼女は絶対に結婚することが出来ないから彼女の提案は乗ってあげた方がいいと」

「えっ」

「彼女はね、主様専用のメイドさん。君が結婚して幸せになったとしても彼女はずっと君たちに仕える使用人から変わることはないの」


 お風呂から上がり休憩スペースで休憩を取っていた。

「かりんさんどうでしたか」

「とても気持ちがいい温泉でした。また夜入りたいです。しかし、待たせてしまい申し訳ありません」

「謝ることはないよ。ゆっくりと入るのが一番だから」

 そう言って自分のお腹を触る。

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