第121話 覚醒の時
マレインは夢を観ていた。ネイリーと初めて逢ったときの光景だ。
ダイヤスファ国の王宮内で顔を合わせたネイリーとマレインは2人っきりでお茶会を楽しむ。
クッキーやマフィンなどの甘い菓子がテーブルの上に陳列され、紅茶の匂いが漂う部屋に2人は雑談をしていた。
マレイン 「そうだ!ネイリー姫!とっておきの場所があるのできてください!」
マレインは席に立つとネイリーはコクリと頷く。マレインは廊下の方へ指を差すとネイリーと共に横に広い廊下を歩く。
マレインに誘導されネイリーは歩き続けると次第に草や木の匂いが微かに匂う。
マレイン 「自慢の庭があるんです」
更に廊下を歩き続けると王宮内に吹き抜けがあり青空が見える。陽の光が照らされる場所に緑の草と木に色鮮やかなパンジーの花に囲まれた大きな池。
ネイリー 「まぁ…。王宮内にこのような場所が…」
ネイリーは辿り着くと池の中を覗き込む。自分の顔が池に鏡のように映ると横にマレインの顔が映る。
マレイン 「この池はとある事に使うのです」
ネイリー 「とある事……?」
首を傾けるネイリーにマレインは笑みを浮かべ手の平から小さな水の弾を出し放つ。水に続き土、風…そして火の弾を繰り出すと蝶の形に変わりヒラヒラと舞う。
マレイン 「ダイヤスファ国には火の精霊祭があるのです」
ネイリー 「ひの…セイレイサイ?」
マレイン 「芸術のお祭りです。死者の魂を安らかに送り届ける?意味もあるようです。私にはまだよくわからないのですが…」
四大属性で繰り出された蝶はヒラヒラと舞う。優雅に舞う蝶にネイリーは心が舞い踊り歌を歌い出すとマレインはリズムに合わせ指揮者のように手の平から小さな水、土、風、火の弾を出していく。
ダイヤスファ国、王宮内の一角で小さなコンサートとアートが交わる場にネイリーとマレインは2人だけの自由な世界に入る。
大きな池には何十匹と魔法で造られた蝶が舞い、ネイリーが歌を終えると蝶達は交わり水色、茶色、緑色、赤色の輝きとなって小さな斑点がキラキラと空に舞い消えていく。
マレイン 「ネイリー姫!歌、お上手ですね!」
自然と歌っていたネイリーはマレインの拍手する音に気付き我に返ると、顔を赤くしスカートの袖を掴み、お辞儀する。
ネイリー 「母上とよく一緒に歌っているのでついつい…」
赤くなった頬を手で覆い照れているネイリーにマレインは笑みを浮かべる。
マレイン 「そうですか。とても透き通る声でずっと聴いていたいぐらい上手でした」
ネイリー 「ありがとうございます。マレイン王子の魔法、とても綺麗でした。私にもこのような力があれば…」
マレイン 「あれば…?」
ネイリー 「み…を————————」
ネイリーの顔がぼやけていき映像が途切れる。暗闇の中にいる景色に変わり赤い羽根がヒラヒラと落ちると火が一気に広がる。
マレイン (な、なんだ!?)
メラメラと真っ赤な火が燃え広がるとまた景色が一気に変わる。壮大な草原に強い風が舞い込みに激しく草がうごめく中、水平線に青い空が広がる景色に白い人物が立っていた。
目や鼻、口などが分からず人のような形をした白い人物は輪郭にそってメラメラと燃える火を放出していた。
「覚醒の時は近い」
白い人物は図太い声で呟くと迫り胸元につんつんと人差し指でつつく。纏っていた火が一気に放出し、脳内に莫大な言葉と映像の情報量が凄まじい速さで駆け巡る。熱い感覚を感じマレインは目を開ける。
マレイン 「熱い!」
マレインは起き上がると額から汗が流れ、ゆっくりと辺りを見渡す。窓から月の灯りが微かに差し込む。
マレイン 「何だ。夢…か」
額から流れる汗を手で拭うと胸元に熱い感覚が残り目線を下に移すとネックレスが赤く光っていることに気付き握る。
マレイン (なんだ…?ネックレスが光っている!?)
横を見るとライトは豪快にイビキをかき、大の字で腕と足を大きく開き枕と掛け布団は床に落ち敷かれたシーツはぐっちゃぐちゃだった。
ライトの胸元から白銀に輝く光が見え、マレインはジッと見つめると寝返りを打ち背中を見せる。
マレイン (ライトもネックレスをつけていたような…)
マレインは起き上がり床に落ちた掛け布団拾いライトの身体に掛けなおす。腕を枕にし横向きで寝ているライトを見つめると、身に着けているネックレスから白銀の光が薄っすらと消えていく。
マレインは胸元を確認するが、ネックレスから赤く輝く光は消えマレインは就寝したベッドへ戻り横になる。
マレイン (気のせいかな。ネイリーはあの時、何ていったんだろう…?それにあの火と謎の人物は…?)
マレインは目を閉じると夢で観たネイリーの言葉と白い人物について考えだす。ベッドの上で考え込むと夢で観た莫大な言葉と映像が駆け巡りマレインの頭がクラっとする。睡魔が急激に襲いマレインは就寝する。
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