第122話 同じ夢


 マレインは目を開けると部屋に陽の光が差し込み窓を見つめる。


マレイン (ん…。朝…か)


 窓からは青い空に太陽が昇りマレインは起き上がるとあくびをし口元を手で覆う。


マレイン (あの夢はなんだったんだろ…)


 顎に手を当て再び考えるがやはり答えは見つからず、マレインは立ち上がり未だに就寝中のライトの肩を軽く叩く。


マレイン 「ライト。朝だよ」


 肩を叩かれたライトは瞼を薄っすらと開けマレインの顔を見つめる。


ライト 「ふぇ?なんだ?マレイン…か…。何か変な夢だったんだよなぁ~ふぁぁぁ~~!」


 ベッドの上で横になったまま腕をピーンと伸ばすと、大きなあくびをする。


 身体をゆっくり起こすと呆然とし壁の一点を見つめる。


 呆然としているライトの目の前でマレインは手を広げると上下に素早く動かすが反応は無く放心状態だった。


マレイン (ライトは朝に弱いからな。まだ眠いのかな?)


 薄っすらと瞼を開け放心状態のライトは、段々とくっきりと開いていく。


 目は潤い活気を取り戻したライトは首を動かしマレインの顔を見つめる。


ライト 「あっ!顔洗って歯磨きしなきゃ!リリアうるさいからな~。マレインもしなきゃ怒られるぞ!」


マレイン 「そうだね。じゃあ、行こうか」


 ライトが起き上がると歩き始め、マレインも後を追い2人揃って大衆の洗面所に向かう。


 大柄な男性達の声が飛び交う中、2人は顔を洗いタオルで拭くと歯を歯磨きでシャカシャカと磨く。


マレイン (大勢の人の前で顔を洗ったり歯磨きするのは何か新鮮だな。知らない場所で怖いはずなのに———何でこんなにも胸がワクワクするのかな?)


 マレインは知らない世界に飛び込みワクワク感が止まらなくなり心を躍らせる。身支度を済ませると2人は荷物を持ち冒険者ギルドの受付前へと移動する。


 併設されている飲食店の方へ視線を移すと既にネイリーとリリアが着席し、2人は席へと駆け寄る。


ライト 「2人とも、はえーな!」


マレイン 「おまたせ」


 声を掛けるがネイリーとリリアは気付かず上の空で呆然としている。2人が椅子を引き着席する音でネイリーとリリアは我に返り首が動く。


ネイリー 「ああ。2人ともおはよう」


リリア 「ん?きたんだ?おはよう」


 2人の表情にライトは違和感を覚える。


ライト 「な、なんだ?何かぼーっとしてないか?」


ネイリー 「何だか妙な夢を観てな」


リリア 「うん。私も」


マレイン 「私も観たよ白い人物が…」


 「「「「覚醒の時は近い」」」」


 4人は同じ言葉を口にすると互いに見合う。


ライト 「同じ夢を観てたのか!?」


ネイリー 「私は流星群が振り続ける夢だった」


リリア 「私は木や花がみるみると育つ夢だったんだよね~」


マレイン 「えっ?私は火が放出する夢だったよ?」


 同じ言葉を口にするが観た光景はバラバラで4人は頭を悩ます。


リリア 「ライトはどんな夢だったの?」


ライト 「うーん。ピカー!って白く輝いてババババババって言葉と映像がボボボボボって爆弾が落ちてくるような夢…かな?」


 手や腕を動かし表現するライトにリリアは額に手を当てると顔を俯けため息をつく。


リリア 「ごめん。ライトに聞いた私が間違いだった。余計わかんなくなった…」


ライト 「っちぇー。なんだよ。それよりさ!飯食おうぜ!飯!」


 ライトはメニュー表を取るとポロッっとテーブルの上にとある紙が落ち見入る。


ライト 「もーにんぐせっと…?」


 紙を拾い上げるとナポリタンドックとお好きなドリンク1つで200シルと書かれていた。


ネイリー 「美味しそうだな」


リリア 「200シルを4人分…800シル。うん、安い!」


マレイン 「その食べ物は食べた事が無いな…。是非食べてみたい」


 ライトは着席している席を通り抜けていく店員を呼び止め注文をする。


ライト 「そういや今日みたいな不思議な夢って前もみたことあるんだよな。何か知らない人??が出てきて…」


ネイリー 「私もダイヤスファ国へ向かう最中に観た事があるな」


リリア 「私は今日観た!」


マレイン 「私も前にそのような夢を観たような…」


 「「「「何かを渡している夢」」」」


 再び4人は同じ言葉を同時に口にすると店員がテーブルの上に注文をしたドリンクを置いていく。


ライト 「な、な、な、なんだ!俺達の中に知らないやつがいるのか!?」


リリア 「こ、こ、こ、こ、コワイ事をいわないでよーーー!私はそっち系の話はダメだから!」


 2人は肩をカタカタと震わせゾッとする。


ネイリー 「同じ夢を…」


マレイン 「何か、不思議な現象だね」


 不思議な体験を話していると店員が4枚の皿を手や腕にのせライト達が着席するテーブルの上に置いていく。


 「おまたせしました!ナポリタンドックです!」


 まだダイヤスファ国にきて間もない頃に食べたナポリタンが真ん中がくっきり割れた細長いパンに麺がたっぷりと挟まれていた。


ライト 「ナポリタンを挟んだパンってどんな味なんだろ?いっただきまーす!!」


 ナポリタンドックに手を伸ばし豪快にかぶりつく。


ライト 「ふ、ふまい!!」


 ネイリー、リリア、マレインも続いて料理に手を伸ばしかぶりつくと顔が輝く。


ネイリー 「ほう!これはこれで美味しい!」


リリア 「ほんとだ~~!こんな料理の組み合わせもあるんだ!再現できるようにメモしておこ!」


マレイン 「美味しい!安価なのにこんなにも美味しい料理があったんだね」


 ナポリタンの甘酸っぱさがあるが、ふかふかのパンが酸味を調和し4人はナポリタンドックの味をかみしめる。


 食事を終えるとライト、ネイリー、リリアは依頼が貼っている掲示板を眺め各々の力量で達成出来る依頼を見つけミントに契約魔法を掛けて貰いライト達はファイヤー村へと向かっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る