第118話 マレインの冒険者ランク


ネイリー 「あれ以来、マレインは氷の魔法しか使えなくなったんだ」


 ネイリーはマレインの過去を2人に語る。衝撃的な話を聞いた2人は、同級生や血の繋がった弟に笑い者扱いされたマレインの気持ちに同情し哀れに思う。


ライト 「そうか。笑いもの扱いにされたのか」


リリア 「心に深い傷ができちゃったんだね」


 3人はマレインを見つめる。ルルがもう一度、手本として火の弾ファイアーボールを詠唱するとマレインは頷き手を前に出す。


ネイリー 「あの辛い出来事が今のマレインにとって壁になっているのだろうな…」


ライト 「なるほど。後はマレイン次第だな」


リリア 「自分との戦いだね。克服できるといいな」


 ルルが繰り出したようにマレインは火の弾ファイアーボール創造イメージするが再び氷の弾となり鉄の壁に当たり砕ける。


ネイリー 「だがな四大属性の魔法を元々使えたんだ。感覚は潜在的に残っているはずだ」


 マレインは火の魔法を詠唱出来ず頭を抱えるがルルは肩を叩き励ます。ライトは汗を流し懸命に取り組むマレインから目線を斜め下に逸らす。


ライト 「今の俺達が出来る事は…見守るしか無いな」


リリア 「うん。マレインの支えになるようにしよ?」


ネイリー 「そうだな…」


 3人が話している間にマレインはルルと共に、火の弾ファイアーボールを習得しようと何度も詠唱を繰り返す。


 日が暮れ太陽が沈むころ、結果的にマレインは火の魔法を習得する事が出来なかった。


 一度冒険者ギルドに帰還する事となり翌日またルルと村で落ち合う事を約束した。


 冒険者ギルドに辿り着くと依頼達成となり、1万シルの報酬を受け取るとリリアは財布の中に入れる。


ミント 「そうだ!マレイン王子!」


マレイン 「ん?」


 冒険者ギルドの受付嬢であるミントは手を合わせると、身体を反転し棚からバッジを手に取りマレインの前へ出す。


ミント 「魔物討伐達成しましたので…冒険者ランク、シルバー1に昇格です!」


 銀色に輝くバッジは真ん中に1と数字が書かれマレインは手に取る。


マレイン 「一番下のブロンズ3だったのに一気にシルバー1!?」


 差し出された銀色に輝くバッジをギュッと握りしめると胸元に当てマレインの口角が徐々に上がる。


ライト 「良かったな!マレイン!」


マレイン 「うんっ!すぐライト達に追い付くように頑張るよ!」


ミント 「では、ブロンズ3のバッジはこちらで引き取りますね」


マレイン 「あっ。はい」


 マレインは錆びたブロンズバッジをテーブルに置くとミントの前へ出す。


ミント 「確かに預かりました!」


 受付でやり取りをしている間に冒険者が列となり並んでいる事に気付き、ライト達は横にずれると、併設されている飲食店を指さす。


ライト 「はらへった~。何か食おうぜ!」


ネイリー 「そうだな」


リリア 「お腹ペコペコ」


マレイン 「席につこうか」


 ライトは飲食店へと移動し空いている席に着席する。


 メニュー表を手に取り眺めるライトに続き、ネイリー、リリア、マレインも続き着席する。


ライト 「今日は何にしよ~かな~♪んんっ!」


 メニュー表を眺めていると名称と共に描かれているイラストをライトは見つめる。


ライト ("海鮮パスタ”ってやつ具材いっぱいで美味そうだ…)


 エビ、アサリ、イカ、ホタテ、カニとあらゆる海産物とトマト、ホワイトソースのミックス。決めてはとろけるチーズをふんだんにかけとろ~りとした海鮮パスタをライトは想像する。


ライト (これ、絶対美味いやつだろ!!おし!今日の晩飯はこれだ!値段は…)


 名称の横に書かれている値段に目線をずらす。


ライト (1人前だと2500シル。ん~高い!でも、4人でシェア出来る大皿だと8000シルか!今日は1万シル稼いで宿代も冒険者特権でそんなにかからないし、明日からまた稼げばいいだろ!)


 脳内でお金の計算し終えるとライトは余裕の笑みを浮かべネイリー、リリア、マレインに向いメニュー表を傾け指を差す。


ライト 「この海鮮―――」


リリア 「今日の報酬は1万シル…。4人分の大皿でも2000シル以内の食べ物がいいな~。明日も依頼あるかどうか分からないし、明日の食事代もいるし…」


 眉を寄せメニュー表と睨み合いをしているリリアは大きなため息をつく。


 ライトは仲間達に傾けていたメニュー表の角度を自分にしか見えぬよう戻す。


ライト (あっっっっぶねーーーー!!8000シルのパスタなんて言ったもんなら今度こそ食事抜きにされる!嫌だ!メシが食えない日なんて俺にとっては生きる意味が無いのと一緒だ!)


 ライトはあからさまに動揺し顔をメニュー表で覆うと余計な発言をしないよう仲間達の動向を伺う。


ネイリー 「このペペロンチーノってやつ安くないか?」


 メニュー表にネイリーは指を差すと、リリアとマレインはページを捲り眺める。


リリア 「ほんとだ!シェア出来る大皿でも2000シル!安い!」


マレイン 「その料理はダイヤスファ国でもお手軽で庶民から貴族と幅広い層で大人気なんだ。ただちょっと匂いが…」


 3人はメニュー表に書かれている説明を読む。ガーリックを活かしたパスタの為、食べるのは夕飯にオススメの一品!と書かれていた。


ネイリー 「ふむ…。ガーリックのパスタか…」


リリア 「夕飯時だし、これにしちゃう?丁度、金欠だし」


マレイン 「私は構わないよ」


ライト 「ウ、ウン。パパロンチーノネ。イイトオモウ」


 料理名の言い間違いに違和感を感じる仲間達だが、ライトの妙な発言は今頃始まった訳でも無く、特に突っ込みを入れぬままマレインは手をあげ店員を呼び止め注文をする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る