第117話 マレインの過去
「マレイン王子!素晴らしいです!」
「ダイヤスファ国は安泰ですわ!」
「時期ダイヤスファ国の王はマレイン王子以外考えられませんわね」
「ほんの5才で四大属性の魔法を扱えるようになるとは…。何百年振りの逸材だろうか」
称賛する使用人達の声、拍手の音。物心がついたばかりのマレインがハッキリと脳に焼き付く最初の記憶だった。
「マレイン」
使用人達の声や拍手の音が賑わう中、マレインは名を呼ばれ振り返る。
マレイン 「父上!」
藍色の短髪、琥珀色の鋭い瞳。火鳥のマントを身に着けた父の登場にマレインは気付くと小さいながらにトテトテと走り足元をぎゅうと抱き着く。
セリス 「ははは!よっこらしょ!」
足に抱き着きマレインを抱きかかえると胸に寄せる。セリスと瓜二つなマレインの藍色の髪を優しく撫でると廊下を歩く。
セリス 「マレイン。次の王はお前だ」
マレイン 「はいっ!」
大柄な父に抱き抱えられたままマレインは濁りの無いキラキラと輝く瞳で答える。
セリスはふふっと笑うとマレインの自室へと向かい歩き出す。
セリス 「ただ、マレインこれだけは忘れるな。強い力に溺れず、優しい心をいつまでも忘れるな。王とは民の笑顔を守り通す事だ」
マレイン 「わかりました!父上!立派な王になります!」
子供ながらにマレインは逞しく答えるとセリスは微笑み藍色の髪をクシャクシャと撫でる。
―――【数年後】
マレインは13歳となり長期休暇に父からエアリを紹介され指導を元に氷の魔法を習得した。
長期休暇を終えマレインは貴族校に戻り、実践で戦う授業を受けていた。
エデイン 「
弟のエデインが
マレイン 「
脳の中でイメージした水はピキピキと音を鳴らし一瞬で氷となる。イメージが上書きされると床から大きな氷の柱が立つ。
思っている事と脳で考えている事に誤差が生じてしまい、マレインは状況が理解出来ず唖然とする。
マレイン 「えっ…?」
無意識的に詠唱した氷の柱は
「
教師は危険と察知しマレインとの距離がスレスレの位置で土の壁を設置する。
エデイン 「あはははは!兄上!私が火の魔法を詠唱しているのに何故、弱点の氷魔法を詠唱するのですか?何かの笑いをとる為ですか??あははは!!」
「「「「「あはははは!!」」」」」
弟のエデインの笑い声に同級生達も釣られ腹を抱え大笑いする声が、教室にうるさいぐらい響き渡るとマレインは膝から落ちていく。
マレイン 「ど…う…して…?」
周りの生徒、弟の笑い声にマレインの呼吸は乱れていく。額から汗が止まらず床にポタポタとゆっくり落ちていくが、一方、呼吸を整える事は困難で、次第に目から涙が溢れる。
氷魔法を習得した代わりにマレインは氷の
マレインは授業が終わり廊下をトボトボと歩いていると群がる令嬢達が会話を弾ませている光景が気になり耳を傾ける。
「ねえ!聞いた?マレイン王子が氷の魔法しか唱えられなくなった話!」
「聞いた聞いた!天才魔導士!って称えられていたのに!」
「時期王はエデイン王子よね。きっと」
令嬢達の話にマレインはズキンッと胸が痛み袖を掴む。
「サファイアローメン国の時期王は弟のエルダー様になったそうよ」
「ネイリー王女も尚更、婚約なんて話し厳しいんじゃないかしら?」
「何だかネイリー王女とマレイン王子って揃って落ちちゃったよね」
ヒソヒソと話す令嬢達の会話を耳にしたマレインは、肩を落とし廊下を歩き出し寮へと向かった。
太陽の陽射しが色鮮やかな花や緑色の草を照らす吹き出しの廊下の道中を歩いていると、偶然ネイリーと鉢合わせしマレインはパチンっと目が合うが目線を咄嗟に逸らす。
ネイリー 「マレイン。気にするな」
ネイリーは首を横に振り言葉を掛けるがマレインは口元を歪ませ拳を力強く握る。
マレイン 「っっ!!」
ネイリーの言葉を掻き消すかのように、マレインは廊下を走り出し横を通り抜けていく。
ネイリー 「マレイン……」
マレインが横を通り抜けるとネイリーのピンク色の髪がなびき振り返る。
走り去るマレインの後ろ姿をネイリーは見つめていると、吹き抜けの廊下に風が舞い込み太陽に照らされた花や草も強い風でザァァと激しく揺れる。
その後、マレインは何度も四大属性の魔法の
期待の眼差しで尊敬されていた生徒や弟に笑いもの扱いされマレインの心は氷のように閉ざされた。
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