第116話 笑い声
村の中心部から移動していると村の住民であろう4人の男達がつるはしを握りルルに対し片手をあげ振る。
「ルル!俺達、これから鉱山にいってくるよ!」
ルル 「わかった!皆、気を付けてね~!」
住民達にルルも手を振り返すと村の外へと向かい歩いていった。マレインは住民達の背中を見つめながらルルの隣に並ぶ。
マレイン 「魔道具に使う鉱石を取りに鉱山へ向ったの?」
ルル 「はい。依頼したオークの討伐もして頂いて、安心して鉱山に行けると思います。それに、ここからそう遠くないのですぐに帰ってきますよ」
マレイン 「そっか。それなら大丈夫だね」
止めていた足を再び動かしルルを筆頭に歩き出す。
村を歩いている最中、住民は火の魔法を詠唱し一輪の花の形をしたもの、はたまた別の人はハートの形を作ったりと何度も繰り返していた。
マレイン 「皆、火の精霊祭に向けて練習をしているんだね」
ファイヤー村の住民は芸術のお祭り、火の精霊祭に向けて披露する魔法を熱心に練習している光景をマレインはゆっくりと見つめる。
ルル 「ファイヤー村も庶民で唯一、火の精霊祭の出場の許可を得ていますので。村の住民達は張り切っていますよ!」
村の人々を見つめながらルルは活き活きと話す。
マレイン 「そのようだね。皆、すごいな…」
懸命に練習する人々を目で追うように話すとマレインは心底尊敬する。
ルル 「王族様もフィナーレで披露するのですよね?んん?でもマレイン王子のお姿は…」
頬に手を当て首を傾げ話すルルにマレインの顔が曇ると目線を斜め下に逸らす。
マレイン 「あ…うん…。私はここ最近、火の精霊祭は不参加にしてるんだ」
ルル 「そうだったの…ですね」
浮かない顔をするマレインにルルは触れてはいけない話題を振ってしまった事を後悔する。
ルル 「で、でも!火の精霊祭に向けてマレイン王子は火の魔法を操って、披露したいんですよね!微力ながらですが私もお力添えします!」
拳を握り意気込むルルに浮かない顔したマレインから笑顔が溢れる。
マレイン 「ありがとう!ルル!私も頑張るよ!」
互いに顔を合わせ、ふふっと声を漏らす。歩き続けファイヤー村の片隅に辿り着くとルルとマレインは対面で向かい合う。
ライト達は邪魔にならぬよう少し離れた位置にある鉄製のベンチに座る。
ルル 「マレイン王子は何の属性の魔法が得意ですか?」
マレイン 「私は氷魔法が得意だよ。水、土、風も扱えるようになったかな」
そう話すと手の平から氷の塊を出し次にスライム状の水、土の塊、丸い形状を維持したまま吹き込む風と順々に繰り出していく。
ルル 「応用魔法の氷!?さすが王族様は違いますね!」
マレイン 「うん、そうなんだけど…少々、氷の
ルル 「なるほど。それで火の魔法が…。火の
マレイン 「ルル、すまないが、手本として火の魔法を見せてくれないかな?」
ルル 「わかりました!」
ルルは頷くと足元から真っ赤な魔法陣が展開され、手の平にロウのような小さな火を出すと段々と大きくなり丸い形状になっていく。
ルル 「
火の弾が放たれ鉄の壁に当たり消える。
マレイン (火の魔法は父上の火鳥を何度も見てきたんだ)
マレインは目を閉じ頭の中で
マレイン (これまで水、土、風を克服してきたんだ。コツを掴めば火もきっと直ぐに詠唱出来る)
頭の中にロウの上に燃える火を創造するとマレインは目を開き、手を前に出す。
マレイン 「火の―――」
―――あははははは!!!
笑い声が脳裏に過り頭の中で創造していた火が一気に氷の中で咲く一輪のバラとなる。
マレイン 「っ!?」
マレインは気がつくと、鉄で出来た壁に氷の弾が当たり鋭い音がカンカンっと弾くように響く。
遠くから眺めていたライトとリリアは思わぬ展開に驚き鉄製のベンチから立ち上がる。
ライト 「えっ!?マレインどうしたんだ!?」
リリア 「今まで順調だったのに、また氷に戻っちゃった…」
顔は青ざめていき、額から汗を流すとマレインは膝から崩れ落ちていく。
ルル 「マ、マレイン王子!大丈夫ですか!?」
マレイン 「ハァハァ…」
ルルはハンカチと常備している水筒を腰についているポーチから取り出すと地に両手を当て呼吸が乱れているマレインの元へ駆け寄る。
2人のやり取りを眺めながらネイリーは顎に手を当て足を組む。
ネイリー 「やはりあの出来事がトラウマだったようだな…」
ボソッと呟くとライトとリリアは振り返りネイリーの顔を見つめる。
ライト 「どういう事だ?」
リリア 「マレインに何かあったの?」
ネイリー 「あぁ、昔な」
思い当たる節のある様子をチラつかせるネイリーだが、一方ライトとリリアは全く理解出来ず顔を合わせキョトンとする。
ネイリー 「ライト、リリア。これまでマレインは各村に訪れて稽古をして貰ったが…。直ぐに魔法を習得したマレインに疑問を抱く事は無かったか?」
ネイリーに問いかけられライトとリリアは遠くの位置にいるマレインを方へ振り返る。
膝から崩れ落ちたマレインはルルからハンカチと水筒を受け取ると、額の汗を拭き水を喉に通し水分補給をしていた。
2人のやり取りを眺めながら、ライトとリリアはこれまで各村に訪れほんの数時間で魔法を習得していくマレインに改めて疑問を抱く。
ライト 「そういや、なんだかんだで直ぐに魔法を習得したよな。もしかして…マレインは天才なのか!?」
リリア 「改めて考えると、教えて貰ってすぐに使えるようになるマレインってすごいかも…」
マレインの表情が落ち着くとルルは手を差し伸べる。マレインは手を握り立ち上がると頭を下げルルはやんわりと微笑む。
ネイリー 「そう。マレインは天才だった。―――元々、四大属性の魔法が扱えたんだ」
「「えっ!?」」
ネイリーの思わぬ発言に2人は口を大きく開け驚愕する。
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