第109話 貴族と制度

ライト 「すっげーーーーーー!!!」


リリア 「すご~~~い!下に降りるのが早い~~!」


 ライトは昇降機エレベータに乗ると透明に包まれている分厚いガラスに顔を当てる。初めて乗る昇降機エレベータにライトとリリアは興奮気味でダイヤスファ国の景色を眺める。


レオ 「マレイン様。ライト様、ネイリー姫、リリア様と旅をされているのですか?」


マレイン 「うん。旅っていっても今日屋敷から出発した所だけどね。ライト、ネイリー、リリアは私が魔物に襲われている時に助けてくれたんだ。後、修行にも付き合ってくれてるんだ」


 ライト達の事を活き活きと話すマレインにレオは後ろで手を組み微笑む。


レオ 「そうですか…。良いご友人を持ちましたね」


 全員が昇降機エレベータが下降する中、透明なガラス越しに景色を眺める。円形状にエレメンタル街下層を中心にある各村。


マレイン 「村の皆は元気かな…。次はファイヤー村に向って修行しないと」


ライト 「きっと元気にしているさ!飯食ったら向かおうぜ!」


リリア 「そうだね!まだ日はそんなに高くないし時間はあるね」


ネイリー 「ふふっ。ようやくファイアー村に行くことが出来るのか。どのような物を作っているのか楽しみだな」


 ライトとリリアはドキッとし額から嫌な汗を流す。


レオ 「村の者から魔法を教わっているのですか?」


マレイン 「うん。ライト達の案内と村の視察も兼ねて…。ねぇ。レオ。この恰好で中層に行ったけど…やはり身分の差は深刻だね…」


 昇降機エレベータで各村を見つめながらマレインは呟く。


レオ 「そうですね…。貴族が支えている部分も大きいですからね…一概に貴族だけが悪いとは言えないのが現状です」


 全員が無言のままエレメンタル街下層へと辿り着き扉が開くと見張りの兵はライト達の姿を見て眉を寄せる。


 「階段を必死に上った奴等が降りてきたぞ!本当に10万シル払ったんだろうな!?」


 「兵の目を盗んで乗ったんじゃないのか!?ほら、大人しく金を払―――」


 ライト達は降りると背後からレオが現れ兵は怯む。


レオ 「お前達。何をしているんだ?」


 「レオ副団長!?えと…中層の見張りが庶民と他国の者は10万シル払うように国王様から命令を受けたと話していた―――」


レオ 「土の拳アースナックル!」


 レオは土魔法を詠唱すると拳に岩を纏い兵を殴る。


 「お、おれは違うんです!!ただ言われた―――」


 容赦なく殴り2人の兵は5メートル先まで吹き飛ぶと気絶する。


レオ 「土の檻アースケージ!マレイン様、私はこいつらを牢屋に入れてから屋敷へと向かいます」


 檻の中で気絶した兵を風魔法で浮かせるとレオはマレインの方へ振り返る。


マレイン 「うん。レオ、助けてくれてありがとう」


レオ 「いいえ。当然のことをしたまでです。部下たちが無礼な振舞をしてしまい申し訳ありませんでした。国王様の名前を使い金銭を要求したこいつらには重い処罰を下します」


 檻が浮いたままレオは深々と頭を下げるとライト達は手を大きく振りエレメンタル街下層の方へと向かう。


 エレメンタル街下層を歩き料理店を見つけると4人は一目散に向い中へ入る。店員に案内されると席につきテーブルの上でひと段落する。


ライト 「は~~~。疲れたな」


 重いため息を吐くとライトはメニューを手に取り捲る。


ネイリー 「あの階段を下る事にならなくて良かったな」


リリア 「うんうん。本当にね」


マレイン 「レオがいて助かったよ…。飲み物と食べ物は何にする?」


 4人は各々イラストが描かれたメニュー表を手に持ち見つめる。


ライト 「この"カルボナーラ"ってやつ食べてみたい!」


 ライトは黄色い麺に白いシチューのソースとベーコンのイラストが描かれたメニューに指を差す。


 3人はライトが指をさしたメニュー表のイラストを直視する。


ネイリー 「ほお?美味しそうだな」


リリア 「本当だ!それにしよ?」


マレイン 「うん。私は構わないよ。飲み物は何にする?」


リリア 「じゃあ、飲み物は―――これ飲みたい!"ソーダフロート"!」


 青いソーダの上にアイスクリームがのったイラストのメニューにリリアは指を差しマレインは微笑む。


マレイン 「ふふっ。リリアはフロートが好きなようだね」


リリア 「サファイアローメン国には無かったから…」


 頬を赤くするとリリアはメニュー表で顔を隠す。


ライト 「おしっ!んじゃ、決まりだな!店員さーーん!」


 手をあげ店員を呼ぶとライトはカルボナーラとソーダフロートを4つずつ頼む。


ライト 「これ食べたらファイアー村に向うんだよな?」


マレイン 「うん。最後に火の魔法を習得して―――最高の火の精霊祭を披露するよ」


リリア 「楽しみ~!きっと恋人同士で観たらロマンチックなんだろうね」


 リリアは手を合わせると赤くした頬に手を当てウットリする。


マレイン 「あぁ。家族で来る人もいるけど、恋人同士で来るのも多いかもしれないね」


ライト 「へ?コイビト?」


リリア 「ライトには恋人のコの文字も知らないだろうけど。お互いに想っている男女の事だよ」


 ライトは対面に座るネイリーと隣に座るマレインの顔を何度も交互に見る。


ライト 「ふぅん?ネイリーとマレインの事か?」


 「「っっ!!」」


 ネイリーとマレインは席から立ち上がるとテーブルに手を当て一気に顔が真っ赤になる。


ネイリー 「な、な、な、何が恋人だ!!」


マレイン 「そ、そ、そ、そうだよ!!」


 顔は真っ赤のまま、2人は鼻息を荒くし激しく反論する。


ライト 「ネイリーはマレインを引っ張ってくれそうで相性は最高なんだけどな」


リリア 「王族同士だし、価値観も合いそうだよね。ただ…貴族は他国の人と結婚出来ない制度があるんだよね」


 顔を真っ赤にしあからさまに動揺するネイリーとマレインだがリリアの言葉で静かに着席する。


ネイリー 「そうだな。まぁ、無いであろうが仮の仮にマレインが私に求婚をしてきても無理だな」


 腕と足を組むネイリーにライトは首を傾げる。


ライト 「何で他国とはダメなんだ?」


マレイン 「能力の低下を防ぐ為だよ。王族、貴族は能力が高くないと国を維持するのが厳しいからね」


ネイリー 「同じ能力者の純血であれば能力低下の恐れのリスクは回避されるんだ」


 顔を赤くしあからさまに動揺していた姿は嘘で無いかと思う程に2人は冷静さを取り戻しぽつりぽつりと話す。


ライト 「なんだか息が詰まるな〜。貴族っていうのも」


リリア 「だからミラはロマンス小説にどっぷりはまっているんだろうね」


 「おまたせしました~!」


 深刻な話していると4人の前にカルボナーラとソーダフロートが置かれる。


ライト 「おー!!きたきた!いっただっきまーす!」


ネイリー 「良い匂いだ。いただきます」


リリア 「おいしそー!いただきま~す!」


マレイン 「いただきます」


 置かれたフォークを握るとカルボナーラの麺をくるくると巻き口の中へ運ぶ。輝く笑顔で食事を楽しむライト達だがマレインはネイリーの顔を見つめていた。


マレイン (ネイリーと…。身分の差に貴族は他国との結婚禁止。ライトのいう通り確かに生きにくい世界だな…)


 マレインはくるくると巻いたカルボナーラを口の中に運び、思い詰めた顔で食事をする。

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