第107話 ダイヤスファ大国


リリア 「それ、お母さんが持ってた指輪!」


 ライトが持つ指輪にリリアは目を丸くし指を差す。


ライト 「リリアの母さん…のやつ?」


リリア 「お金に困って売ったんだね…きっと」


 眉尻を下げ話すリリアにライトは持っていた指輪を前へ突き出す。


ライト 「リリアの大切な母さんの形見なんだろ?持っていろ」


 そう話すとライトはリリアの腕を掴み手の上にのせる。


リリア 「うんっ!!ありがとう。ライト!後で綺麗に磨いておかなきゃ」


 頬を赤くし笑みを浮かべるリリアは手の平にある指輪を大切に両手で握るとはめる。


マレイン 「ライトの特殊能力については結局分からず…か」


 "12聖将誕生"と書かれた題名の本を本棚に戻そうと後ろを振り向いた瞬間


マレイン 「あっ!ごめんなさい!」


 マレインは年老いた老人とぶつかる。


 「いやいや。気にしなくて良い」


 白髪の頭にもっさりとした顎のひげ。老人はマレインが持っていた本が目に付く。


 「12聖将誕生か?」


マレイン 「ええ。少々、知りたい事がありまして…」


 「若いのに昔の書物に目を通すとは熱心だな!ははは!」


 老人は豪快に笑うと書物を管理している受付の女性に睨まれる。冷たい視線の中、マレインは老人が持っていた本の題名を見つめる。


マレイン 「その書物は…ダイヤスファ大国の…」


 「あぁ。私は少々、ダイヤスファ国の文献を改めて読みたくてね」


マレイン 「だいぶ昔のものですよね?」


 「そうだな。12聖将誕生と同じころの文献だな」


 分厚い書物をもつ老人の言葉にライトは首を傾げる。


ライト 「ダイヤスファ大国?」


リリア 「ダイヤスファ国じゃなくて?」


マレイン 「聞いた話だけど…。昔、ダイヤスファ国はどの国よりも最強と言っていいほどの力があったそうだよ」


ネイリー 「あぁ…。そんな話を私も聞いた事があるな」


ハオリム 「私の名はハオリム。一緒に読んでみないか?」


 ライト達は目を丸くし互いに見つめ合うとハオリムに対して頷く。そして、ハオリムはテーブルの上に分厚い書物を置き読み上げる。


―――ダイヤスファ大国


 魔道具の生成を開始しダイヤスファ大国は発展していった。1つの魔道具が完成すると2つ目、3つ目…とあらゆる魔道具を生成した。


 便利な魔道具と魔法を自由自在に操るダイヤスファ大国はもはや最強といっては過言では無いほどの発展を成し遂げた。


ライト 「昔から魔道具ってあるのか」


リリア 「確かに魔道具の無い生活って不便だなぁ…」


ハオリム 「昔はダイヤスファ大国にしか魔道具が無かったからな。次は火鳥フェニックスの文献だ」


―――火鳥フェニックス


 ダイヤスファ大国の王家は代々、火鳥フェニックスの祝福を受けている。火の魔法を自由自在に操る姿はもはや鳥が空を駆け回るほどの自由さがある。


 火鳥フェニックスの祝福と大切なものを持ち合わせている者には必ず燃えさかる羽根が落ちるであろう。


ライト 「大切なもの…?」


マレイン 「恐らく…。父上が持っているネックレスだろうね」


ネイリー 「お前の首元につけているネックレスでは無いのか?」


 マレインの首元についている光り輝く赤色の宝石を中心とした、鳥の羽根の形のネックレスにネイリーは指を差す。


マレイン 「あぁ、これ?私とエデインは双子でそっくりでしょ?それで、見分けがつくように子供のころから身に着けていたものだよ」


リリア 「へ~…?王様が身に着けているネックレスってどういう形のもの?」


マレイン 「火鳥フェニックスが羽根を広げている形をしたネックレスだね。王位継承1位はエデインだから翌々はエデインの物になるよ」


 身分を忘れ話す4人に老人の笑い声で我に返りライト達はおろおろする。


ライト 「マ、マ、マ、マ、マレイーン君?君は何を言っとるノカネ?」


マレイン 「あ、え、えと!これは王様に詳しい側近が私の知り合いの知り合いの知り合いの伝手で聞いた話で!!それに私はマレイーン…じゃなくてマレーインと申します!!王子ではありません!!」


ネイリー (しまった。マレインが庶民の恰好をした意味がなかった)


リリア (うっかりしてたー!話が滅茶苦茶だ!)


 ライト達は口を手で覆うとハオリムは豪快に笑う。


ハオリム 「ははは!!よいよい!マレーインだな!はははは!」


 ハオリムの笑う声の大きさに受付の女性は我慢ならずに席から立ち上がる。


 「そこのお方!これ以上騒ぐようでしたらご退室願います!」


ハオリム 「すまんすまん」


 顔を赤くし怒る受付の女性にハオリムは軽く頭を下げる。


ライト 「んじゃ!じっちゃん!俺達これで帰るわ!」


ネイリー 「そ、そ、そうだな!帰るか!」


リリア 「うんうん!!ささ!マレーインいこ!」


マレイン 「ウ、ウン!いこう!」


ハオリム 「あぁ!気をつけてな!」


 手を振り大きな声で返事をするハオリムにライト達は逃げるように国立図書館から退出していく。


 「ですから声が―――」


 受付の女性が再び怒ろうとした瞬間、ハオリムは服の中に隠れていたネックレスを取り出し見せる。


ハオリム 「ここには無い書物を読みたいのだが…。案内して貰えるか?」


 ネックレスの形を見た受付の女性は一瞬で表情が青ざめていき深々と頭を下げる。


 「は…はいっ!無礼な態度を取ってしまい申し訳ありませんでした!!」


 謝罪の言葉を述べると受付の女性はハオリムと共に"関係者以外立ち入り禁止"と書かれたドアを開けると階段を下っていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る