第106話 12聖将誕生


ライト 「だは~~~~~!!!上りきったぞーー!」


 ライトは長い階段を上り終えると両腕をあげ大声で叫ぶ。


ネイリー 「ふぅ。長かったな…」


リリア 「はぁ~~~長かったーー!!」


 ライトに続いてネイリー、リリアも上りきると膝に手を当て乱れた呼吸を整える。一方、マレインはというと


マレイン 「ハァハァ…もう…すこし…!」


 上る段差は後5段。手すりを掴みマレインは額から流れる汗が階段にポタポタと落ちていく。


ライト 「マレインー!!もうちょいだ!がんばれー!」


 大きな声で叫ぶライトにマレインは乱れた呼吸を必死に整えると階段を1段、2段とゆっくりと上っていく。後、1段上ればようやく終わりを迎えるが疲労のせいか足が上がらない。


 顔が俯いているマレインでもわかる視界に3人の手が差し伸べられる事に気付き腕を前へ出す。


ライト 「よいっしょ!」


ネイリー 「ほら、早くこい」


リリア 「ほいっ!」


 3人はマレインの手首を掴むと一斉に引っ張る。3人の力でマレインの身体は軽く動きようやく階段を上り終える。


マレイン 「ハァハァ…。あり…がとう…」


 階段を上り終えたマレインは人影の少ない方へヨロヨロと歩き地に座る。額から汗が溢れマジックバックからハンカチと水を取り出す。


ライト 「上りきったな!マレイン!」


 ライトに声を掛けながらもマレインは汗を拭き水分補給をすると乱れた息が整い頷く。


マレイン 「うん。皆、ありがとう」


ネイリー 「さて。休憩をしたら国立図書館に向おう」


リリア 「図書館か~。どんな書物があるのかな?私、本が大好きだから楽しみ!」


 休憩を挟むとマレインは立ち上がりとある、建物に指を差す。


マレイン 「あれが、ダイヤスファ国の『国立図書館』だよ」


 ライト達はマレインが指を差した方角へ振り返る。エレメンタル街中層に堂々と立つ大きな建物を見ると驚愕する。


ライト 「で、でっけー!」


ネイリー 「あんなに大きいのか」


リリア 「すっごーー!」


マレイン 「じゃあ、向かおうか」


 4人は街の4分の1は占めるである建物の方角へとマレインを筆頭に歩き出す。


 エレメンタル街の中層に住居や貴族に相応しいほど建物は大きく派手な外見。


 そして行き交う人々の服装も作りがこっているドレス姿をした女性。男性は刺繍の細かい服に背中には長いマント。


 ライト達は辺りを見渡すが、案の定、庶民の姿は一切見当たらなかった。


 国立図書館まで辿り着き中へ入っていくと年の老いた白髪の男性や研究員であろう白衣を着た女性などが書物に目を通していた。


 マレインはずらりと並ぶ書物の中から本を取り出しテーブルの上へと置く。


マレイン 「これが『12聖将誕生』。この書物にヒントになるような事が書かれているかもしれない」


 取り出した書物のページを捲り読み上げる。


―――12聖将誕生


 魔王と同等な力で対立する特別な能力を持つ12人がいた。闇を無に返す特殊な能力。


 人間と魔王軍は長い年月の争いが続いていた。人間達は武器を持ち、魔法を使い、魔王軍と戦い続けていたが、やがて人々の心は貧困していた。


 30年の争いが続き人間が魔王軍に降参をする時だった。特徴のある指輪を身に着けている12人の組織が戦う事を各国王に希望を出し許しを得ると前線で魔王軍に立ち向かった。


 12人の組織は闇を無に返す特別な能力を所持していた。次々に魔人、魔獣とあらゆる怪物達を退けると魔王軍は撤退し人間の勝利となった。


 各国王は勲章、地位、金銭、全てを受け渡そうとしたが12人の組織は拒みその後、穏やかに過ごす事を決めた。


 だが、とある各地で12人の者が"自分達は特殊な能力を扱える"と人々を騙す者が現れた。騙す者は人々からあらゆる金銭、建物、宝石を要求していった。


 次第に人々は騙されながらも特殊能力を扱えると信じ地位を得ていた。12人の内、1人が国王が闇の病に患い特殊能力を使う命令を言い渡した。


 しかし、騙す者は特殊能力を交渉の材料にし代わりに国の姫を自分に嫁がせるように言い渡した。


 仕方無しに国王は頷くと騙す者に嫁いだ姫は蔑ろにされる生活が続き、自ら命を絶った。姫を引き渡した国王は怒り狂い各国王を呼び集めた。


 各国王は悲劇を繰り返さぬようこれを機に特徴のある指輪の12人を探し出し民衆達に、騙す者がまがい物の能力者と公開する事を決意した。


 特徴の指輪を元に探し出すと見つかり、民衆達に騙す者達の公開処刑が決定した。


 「この者達は嘘偽りの能力があると装い、人々から金銭、あらゆる地位、国の姫までもだまし取った!」


 騙す者を信じていた民衆達の怒りの声が止む事は無かった。


 「特徴のある指輪を身に着けている者達こそ、特殊能力を持つ者だ!12聖将とこの場を借りて命名する!」


 魔王軍との争いで活躍した12人の組織は正式に12聖将と命名され、代々特殊能力と指輪を受け継いでいった。


―――――――――――――――――


 書物を読み上げるとマレインは閉じる。


マレイン 「これが12聖将誕生の内容だね。何百年も昔の実話だよ」


ライト 「嘘つきなやつがいたのか~」


ネイリー 「酷い話だ」


リリア 「特徴のある指輪が12聖将に任命された時に受け継がれる動物がシンボルの指輪だよね?」


マレイン 「うん。ライトは指輪らしき物は持っている?」


 マレインに問いかけられライトはあらゆる場所に手を当て探し出す。


ライト 「母さんがつけていたネックレスと父さんが持っていたブレスレッドしか―――あっ!」


 ライトは大きな声を出すと、国立図書館の中にいる人々の注目を浴びる。


 白い目で見つめられるライトは口元を両手で覆うと、マジックバックを漁り出す。


ライト 「この指輪!サファイアローメン国の依頼を受けた時に報酬で貰ったんだ!」


 錆びた指輪を持つライトにネイリー、リリア、マレインはまじまじと見つめる。


 12聖将が持つ指輪とは程遠く、錆びた指輪には羽根のようなものがついていた。


リリア 「あっ!!それ!」


ライト 「リリア。この指輪、知っているのか?」


リリア 「それ、お母さんが持ってた指輪!」


 ライトが持つ指輪にリリアは目を丸くし指を差す。


 

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