第102話 謎が深まる特殊能力


 時刻は深夜となり、ライトとマレインはベッドの上で座る。


マレイン 「ライト、今日も私と一緒の部屋ですまない」


ライト 「ん?気にする事ないぞ?」


マレイン 「ミラがネイリーとリリアの寝室に行きたいって移動したけど…。ミラが使っていた部屋は弟のオリヴィエが使うことになって空きが無くなった…」


 ライトはふと寝室へと向かう最中の出来事を思い返す。


ミラ 「ネイリー様!リリア様!その……今日は私も一緒の部屋で寝ても…よろしいですか?」


ネイリー 「私は構わない」


リリア 「一緒に寝よ~!」


ミラ 「やったーー!!」


 寝室へ向かう最中、ミラはリリアの腕をがっしりと掴み歩く。女性組から5歩ほど下がった位置でオリヴィエは指を咥え妹のミラに対し鋭い目で睨んでいた。


オリヴィエ (妹と云えどネイリー様と同じ空間で寝るだなんて、ずるい!僕も一緒に寝たかった!ミラが憎い憎い憎い憎い憎い憎い!!)


 横目で偶然見てしまったライトはオリヴィエの殺気を感じ取ると、見なかった事にしようと視線を逸らし寝室に逃げるように早歩きで向かっていった。


 場面を思い返すとライトは苦笑いをする。


ライト (オリヴィエもネイリーとリリアが寝る部屋に行きたそうにしていたのは気のせいだったのかな?)


 一人で笑うライトにマレインも光景を思い返し釣られて笑う。


マレイン 「ミラはすっかりリリアの事を気に入ってしまったようだね」


ライト 「母さんみたいなリリアのどこがいいんだか…」


マレイン 「へ?リリアが母さん?」


ライト 「チッチッチ…。マレイン君、君は何も知らなくて良いのだよ…」


 指を左右に動かし、何かを悟ったかのように話すライトの口ぶりにマレインは思わず首を傾げる。


ライト 「明日になったらこの能力封印装置が外れるのか~!腕が鈍ってないか心配だな~」


 右の手首に装着されている腕輪をライトはマジマジと見つめる。


マレイン 「明日で3日間経過…か。それからは冒険者ギルドの宿に泊まるのかい?」


ライト 「だな!はーーーこのフカフカのベッドともおさらば…か」


 椅子替わりにしているフカフカのベッドに倒れ込む。


マレイン 「そっか…。何だか寂しくなるな…」


ライト 「マレインも冒険者ギルドに入会してるんだろ?俺達と一緒に泊まればいいじゃん!」


マレイン 「う、うん…。でも…」


ライト 「ん?」


マレイン 「何だか新しい場所には抵抗が―――あぁ!これじゃダメだ!」


 首を横に振ると頬を叩く。


マレイン 「やっぱり、私もライト達についていくよ!」


ライト 「そうこなくちゃ!」


 ライトは指をパチンッと鳴らすとマレインもベッドの上に倒れ込む。


マレイン 「ダイヤスファ国にある村に改めて訪れたけど、みんな色んな気持ちを抱えているんだなって感じたよ」


 ライトはマレインの意見に同調するように頷く。


ライト 「ネイリーもさ、そう思って今、行動しているのかもな」


マレイン 「うん。今ならネイリーの気持ちがわかるよ。私はこの国に全力を尽くしていきたい」


 胸に力強く手を当てると手を天井に向い伸ばす。


ライト 「マレインなら出来るさ!」


マレイン 「ありがとう!ライト!」


 互いに見つめ合うとふふっと声を漏らし微笑む。


ライト 「明日はコクリツ…トロッコって所に行くんだっけ?」


マレイン 「トロッコには乗らないよ…。国立図書館で12聖将誕生の書物を読もう」


 マレインは苦笑すると、ライトは深いため息をつく。


ライト 「俺、本って苦手なんだよなぁ…」


マレイン 「ライトは本当に特殊能力が扱えるの?」


ライト 「ん~~~。ハッキリ言うと、俺もよくわかんないんだ。でも…」


マレイン 「うん?」


ライト 「ジイには"お前は闇を簡単に斬ってしまう"って言われたなぁ」


マレイン 「闇を…簡単に斬る…?」


ライト 「まぁ。実際、魔獣や魔人も…魔人は師匠が倒したか。魔獣はネイリーと一緒に倒したな!」


 誰もが恐れる魔王軍の配下との戦闘を活き活きと話すライトにマレインは疑問を抱く。


マレイン (ライトは本当に特殊能力が扱えるのか?だがライトは嘘をつくような人では無いのは十重に知っている。書物に記載している12聖将誕生とライトの言葉、どちらが本当なんだ…?)


 マレインの頭の中でぐるぐると思考が回り続ける。黙り込み思い詰めているような顔を見せるマレインに気付いたライトはベッドから起き上がる。


ライト 「マレイン?大丈夫か?」


マレイン 「あ…。急に黙り込んでごめん」


ライト 「静かになるから心配した!疲れているだろうし、今日はそろそろ寝るか!ふわぁぁ」


 あくびをするとライトは大の字で勢いよくベッドに倒れ込み毛布をかぶる。


マレイン 「そうだね。灯りを消すよ」


 ランタンの形をした魔道具に手を伸ばし灯りを消す。真っ暗な部屋に月の光が照らされる中、マレインは横の姿勢になる。


 瞼を閉じるとマレインはウィンド村で出会ったスレンとの出来事を思い返す。


―――以前、ライトさん、ネイリー姫、リリアさんとは少々、稽古に付き合いましてね。"ライディール先輩"と共に。


 ふとスレンが口にした言葉を思い返すと瞼を開け窓越しから月を見つめる。


マレイン (もしかして…ライディール殿とスレン殿はライトの特殊能力の事を既に知っているのか?)


 月を見つめたまま考え込むが次第にライトの寝息が聞こえマレインの瞼は自然と落ちていき眠りにつく。

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