第101話 ダイヤスファ国の祭り
―――【ダイヤスファ国 王宮内】
マレインの屋敷で賑わう一方、ダイヤスファ国の王宮内でエデインは4人の取り巻き達と縦に長い廊下を歩く。
「お、おかえり…なさ…いませ」
「エデイン王子…おかえりなさいませ…」
取り巻きの一人である肩上まで伸びる赤い髪が特徴的な青年は震える使用人の身体を人差し指で突く。
「おいおい。そんなにびくびくすんなって!」
使用人は突かれ身体がビクンっとなり頭を下げたまま後ずさる。
エデイン 「よせ。ケルビン」
ケルビン 「へいへーい」
ケルビンは笑いながら答える。そして再び歩きだすと5人はエデインの自室へと向かう。
「そういや、そろそろ火の精霊祭だよな?」
短髪で茶色の髪色をした男性が呟くとケルビンは声を漏らし笑う。
ケルビン 「何だよ。パーズ!良い年して子供みたいに楽しみなのか?」
パーズ 「うるせぇ。お前こそ『明日が楽しみで寝れない~!』とか言いそうな性格だろ」
ケルビン 「ち、ちげぇし!!」
パーズが反論するとケルビンは図星なのかドキッとし同じく反論する。言い合う2人を余所にエデインは窓から景色を眺める。
エデイン 「ダイヤスファ国に住む民衆が集う祭りだな」
エデインは窓から人が行き交う風景を眺めていると、藍色の髪を背中まで伸ばす女性が肩を並べるように隣へゆっくり歩く。
「エデインも火の魔法を披露するんでしょ?」
エデイン 「マイアも楽しみなのか?」
マイア 「ええ。きっと楽しいお祭りになるでしょうね」
マイアの言葉に窓を眺めていたエデインは目線を下に降ろす。
エデイン 「ダイヤスファ国に住む民衆が火の魔法を操り競い合う芸術の祭りだな。フィナーレには王族も披露する」
ポニーテールで緑色の髪を結ぶ女性は触り心地の良いソファーから立ち上がる。エデインの隣へと歩き出し行き交う人を窓から眺める。
「王族も集結か~。どんなお祭りになるのかな~?」
エデイン 「ラルドも乗り気なのか…」
ラルド 「えー!お祭りだよ~?そりゃ皆楽しみでしょう!あははっ!」
マイア 「今年のお祭りは楽しみだね」
取り巻きが話すもエデインは目線を上げ窓から輝く星空を見つめたまま黙り込む。
―――【マレインの屋敷】
同時刻。マレインの屋敷では客間にてネイリー、リリア、マレインはソファーで紅茶を片手に寛いでいた。そして例の3人はというと―――
ライト 「この女は…俺の…愛人だ!」
ミラ 「『この姫は私の愛する人だ!』ですわ!!」
ライト 「あっ!そうだった!」
ミラ (はぁ~~~朗読どころか全然、物語が進行しないわ…)
ライトの読み間違えが多く、物語が進行する気配が無くミラは額に手を当てるとヤレヤレといった具合で大きくため息を吐く。
リリア 「もー!ミラ様とオリヴィエ様が困ってるじゃない!私に貸して!」
困り果てているミラと引きつる顔をするオリヴィエに気付いたリリアはカップを置き、ソファーから立ち上がりライトが持つロマンス小説を奪い取る。
リリアがロマンス小説を目で追うように読んでいる最中、オリヴィエは横目でソファで足を組み紅茶を優雅に飲むネイリーの姿を見つめる。
オリヴィエ (生のネイリー様、綺麗だ~~~。学校を卒業してしまったから、もう二度と逢えないのかと思った…)
普段は写真に映し出されたネイリーを眺めていたオリヴィエだが、同じ空間にいる事に幸せを感じ、思わず糸目になり微笑む。
ネイリー 「マレイン。明日はダイヤスファ国の国立図書館に向うのか?」
マレイン 「うん。その予定だよ」
そう答えるとマレインは紅茶を飲み皿の上にカップをコトンっと置く。
オリヴィエ (僕もネイリー様とお話しがしたいのに…。良いなぁ、マレインお兄様は…顔を合わせて紅茶を飲んでいるし)
糸目で微笑んでいるオリヴィエにミラはわざとらしい大きな咳払いをする。オリヴィエは身体がビクッとしネイリーから本へと視線を戻す。
そして、リリアは活字に慣れているのか理解するのも早く表情が一変する。
リリア 「この姫は私が愛する人だ!身分が違えど私は姫を一生守り通す!」
声も低くし振舞う動作もロマンス小説に書かれているのを忠実に再現し、迫力のある演技に虚ろな目をしていた一瞬でミラは輝く。
ミラ 「リ…リリア…様…かっこいい~~~~~!!!」
リリア 「そ、そう~~?えへへ~~~」
ミラに褒められリリアは頬を赤くし照れた顔をする。その後、ライトは朗読から離脱し3人は満足のいく演技をし終えた。
「皆さま、ご飯の支度が出来ました」
ライト 「待ってました!!」
執事の言葉にライトは反応し一目散に食堂へと走り出す。
ミラ 「リリア様!席を並べて一緒に食べましょうー!」
リリア 「うん!食べにいこっか!」
ミラはリリアの腕に手を回すと赤くなった頬をスリスリする。
オリヴィエ (ネイリー様と一緒にお食事!?これは現実!?)
心の中で自問自答をするオリヴィエはその場で立ちすくむ。ネイリーとマレインもソファーから立ち上がると歩き出す。
マレイン 「オリヴィエ?」
ネイリー 「オリヴィエも食べにいこう」
ネイリーは本を手に持ち、呆然としているオリヴィエに声を掛ける。
オリヴィエ 「あ―――はいっ!!」
ネイリーに声を掛けられオリヴィエはドキッとすると顔は一気に赤くなり小さく頷き歩き出す。
オリヴィエ (今日は何て良い日なんだ!神様ありがとうござます!!)
表向きは顔を赤くし静かに歩き出すオリヴィエだが心の中では嬉しさの余りに大きく叫び食堂へと向かう。
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