第100話 第3王子の趣味

 オリヴィエは何とかミラの行動を阻止でき、安堵するが頭を抱える。


オリヴィエ (く~~~!あの時、バレていなかったら!)


―――【時は遡り】


 時はライト達が行った対抗戦後の話まで遡る。


オリヴィエ 「今日のネイリー様。かっこよかったな~」


 王宮内の自室でオリヴィエはネイリーが写し出された分厚い大量の写真を手に持つと顔がニヤけていき1枚、2枚、3枚とテーブルの上に並べていく。


オリヴィエ 「エルダーがいつも姉君であるネイリー様の自慢話をするから…。僕もネイリー様の弟だったらよかったな」


 ネイリーの弟であるエルダーとオリヴィエは同級生であった。学校内で顔を合わしては自慢話をされオリヴィエは心にモヤモヤを抱いていた。


オリヴィエ 「本当に綺麗な女性だな」


 テーブルに置かれたネイリーの写真の前で、オリヴィエは糸目で笑い至福の時間を噛みしめていると勢いよくドアが開く音が鳴る。


ミラ 「オリヴィエお兄様ーーー!!庶民校のライト様ってとっても素敵でしたわね!」


 ノックもせず勢いよくドアを開く音が聞こえ、オリヴィエは驚きながら首を動かすとミラの視線でテーブルに置かれた写真の事に気付く。


オリヴィエ 「わ……わーーーーーーっっっ!!」


 オリヴィエは大きな声で叫ぶとテーブルの上で、無造作に置かれているネイリーの写真を両手で覆う。


 だが勢いがよすぎたのか写真はふわっと宙に浮くと一斉に床に散らばる。


 オリヴィエにとって不運な事に宙に浮いた写真のうち1枚がミラの足元に落ち、手に取る。


ミラ 「へーー?オリヴィエお兄様…実はネイリー様の事が…」


 角度から予想するに隠し撮りをしたであろうネイリーの写真を見つめると、ミラはあくどい顔で笑う。オリヴィエはミラが手に取った写真を奪い取るかのように手を出す。


オリヴィエ 「ち、違う!これはエルダーから貰ったやつで!!」


 写真を奪い取るオリヴィエだが、言い逃れの出来ない状況にミラはニヤニヤと笑う。


 その後、ミラに弱みを握られオリヴィエは何度もロマンス小説を朗読させられていた。


―――――――――――――――――


 過去の記憶が蘇り、オリヴィエは額に手を当てる。


オリヴィエ (過去に戻れる魔法があるのなら、あの時に戻りたい!)


 ミラにロマンス小説を朗読される度に、オリヴィエは油断していた過去の出来事を何度も思い返し後悔する。


マレイン 「王宮内は窮屈か…。私にとって、可愛い妹と弟がこの屋敷に来てくれて嬉しいけどね」


 マレインは前に立つ妹弟に対しニッコリと笑う。


ミラ 「エデインお兄様が…」


 小さな声でミラは呟くと、ライトの腕をガッシリ掴んでいた力が弱くなる。


 ミラの口から名前が出ると、ライトはダイヤスファ国の冒険者ギルドの出来事を思い返す。


ライト 「エデインって冒険者ギルドにいた奴か?」


マレイン 「うん。私の弟だよ。あの時は嫌な思いをさせてごめんね」


 眉を下げ謝罪の言葉を述べるマレイン一方、リリアは頬に一指し指を当て首を傾げる。


リリア 「んー?でも私達と同じ歳だよね?」


 首を傾げ疑問を呟くリリアにネイリーは手を叩く。


ネイリー 「そうか。ライトとリリアは庶民校だから知らなかったか。マレインとエデインは双子だ」


ライト 「えっ!?双子って同時に産まれるやつか!?」


リリア 「そうだよ。だから顔がソックリだったんだね」


ライト 「性格の良いマレインと悪いマレインが産まれたのか!?なあ!?」


リリア 「へ?普通に兄弟だよ?意味わかんない事を言わないでよ。頭のネジが外れそう」


 ライトの意味不明な質問にリリアと言い合いになっている間、マレインは背後から腰を曲げ顔だけミラとオリヴィエに近づける。


マレイン 「エデインに何かあったのかい?」


 マレインの質問に対しミラとオリヴィエは首だけ振り向き浮かない顔をする。


ミラ 「えぇ…もはや私達が知るようなお兄様ではありません…」


オリヴィエ 「あの優しいお兄様がまるで人が変わったかのように…」


 2人の反応にネイリーはマレインの耳元に口元をそっと近づける。


ネイリー 「アース村の事件と何か関係があるのでは無いか?」


マレイン 「そ…そんなはずは……無いよ。…きっと」


 耳元で囁かれると、否定の言葉を口にするがマレインは思い詰めた顔をする。

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