第99話 ダイヤスファ国の第3王子
すっかり辺りは暗くなり4人はウィンド村から帰宅すると、マレインの屋敷内へと入る。
ミラ 「ライト様ーーー!!お帰りなさいませーーー!」
魔道具で灯りが照らされている屋敷内へ入ると、ミラの大きな声が玄関中に響きライトの帰りを今か今かと待ちわびていた。
一方こうなる事を予想していたライトは影を隠すかのようにマレイン、ネイリーの背後に身を隠す。
「マレイン兄様。お帰りなさい」
聞き慣れない声にライトは顔だけ横にずらすと―――本を抱えるミラの真横にはライトにとって見慣れぬ男の子が立っていた。
容姿はミラの髪色と同様、金髪でクルンと巻いたくせっ毛の短髪、年ごろも差が無い程の背丈だった。
マレイン 「オリヴィエも屋敷にきたんだね」
マレインは玄関前で出迎える妹と弟の元へ駆け寄る。
オリヴィエ 「はいっ!王宮内は窮屈なので…」
妹のミラと同様の言葉を述べるオリヴィエにマレインは柔らかい毛先の髪をした頭を撫でる。
マレイン 「ネイリーはミラと同様に顔を合わせているだろうが。ライト、リリア、私の3歳下の弟だよ」
オリヴィエの頭に手を置くと、マレインはライト達の顔を順々に見つめ紹介する。
オリヴィエ 「初めまして。私、ダイヤスファ国の第3王子のオリヴィエです」
教育の行き届いた丁寧なお辞儀するオリヴィエにライトとリリアは慌てて背筋をピンと伸ばす。
ライト 「ラ、ラ、ライト・フォフォーレンと申します…です」
リリア 「リリア・メインティス…と申します」
2人も鍛えられたマナーを思い出しオリヴィエに向い丁寧にお辞儀する。
そして、王族であるネイリーの対応を見習うべき場面に2人はお辞儀をしながら目だけ動かし前を見つめる。
ネイリー 「あぁ。久しいな」
特にお辞儀をする訳でも無く、片腕を腰に当て堂々としているネイリーに2人は目を大きくし視線を合わせる。
2人は互いに顔を近づけ口元に手を当てる。
ライト 「リリア!王族の挨拶が『あぁ。久しいな』だけだぞ!?本当はネイリーの挨拶が王族や貴族でいうマナーなのか!?」
リリア 「えーっ!だってマーサさんとビリーさんからみっちり練習付き合わされたんだよ!?オリヴィエ様より年上だから特別なのかな?」
ヒソヒソと話す2人のやり取りにミラは頬をプクーッと膨らませる。
未だリリアに対抗心を抱き睨みつけると急ぎ足で駆け寄りライトの腕を掴み誘導する。
ミラ 「ライト様!今日こそは付き合って下さい!」
ミラはライトの腕を力強く掴むと、玄関口から繋がる廊下方のへ引っ張る。
ライト 「イテテテ!わ、わかったよ!」
玄関口で立ち止まっていたが、2人を筆頭に全員が客間へと動き出す。廊下を歩いている最中にオリヴィエは小走りでミラの隣に移動する。
オリヴィエ 「ミラ。ライト様と何をするの?」
ミラ 「ロマンス小説の朗読ですわ!」
輝いた瞳で返答するミラに、オリヴィエはライト達が学校卒業間近で行った対抗戦を思い返す。
オリヴィエ (そういえば、ミラが対抗戦でライト様を見掛けた時に喜んでいたような。恋をした顔と言うよりかは新しいおもちゃが見つかった反応だった)
ミラはライトの腕を掴み歩いていると、何か閃いた表情で目を大きく見開き頷く。
そして、ニヤニヤと笑いながらオリヴィエの顔を見つめる。
ミラ 「良いことを思いつきましたわ!オリヴィエお兄様にはライト様が演じる役のライバルを演じて頂きましょう!」
オリヴィエ 「えっ!?」
ミラの提案にオリヴィエは背筋がゾクッとする。
オリヴィエ (しまった~~~!!ミラのロマンス小説の話題は王宮内でもタブーだった!捕まったらどれほど、時間を拘束される事やら…)
オリヴィエ 「いやっ!僕は遠慮して―――」
気の乗らない返事をするが、ミラはオリヴィエの耳元に手を当てる。
ミラ 「へ~…?オリヴィエお兄様良いのですか?」
耳元で囁かれオリヴィエの顔は真っ青になる。
オリヴィエ 「や、やめっ!」
手を伸ばすオリヴィエだがミラは構う事も無く背後に立つ、ネイリーの方へ振り返る。
ミラ 「ネイリー様~~!オリヴィエお兄様が―――」
ネイリー 「ん?」
オリヴィエはミラの言葉を阻止するかのように間に入り腕を大げさに動かす。
オリヴィエ 「わーーーーー!!!ミラ!!何だか僕、急にロマンス小説の朗読をしたくなってしまったようダーーーー!!」
満足気に頷くミラだが、ネイリーは言い掛けの言葉に理解が出来ずキョトンとする。
オリヴィエは何とかミラの行動を阻止でき、安堵するが頭を抱える。
オリヴィエ (く~~~!あの時、バレていなかったら!)
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