第87話 便利な魔法道具


ネイリー 「いい風呂だったな」


リリア 「うんっ!気持ちよかった~♪」


 大浴場のように広い浴槽から出ると、女性の使用人達は2人のために用意したフードつきのワンピース寝巻を手に持ち着付けする。


ネイリー 「この服、暖かいな」


リリア 「うん。しかも、フリフリモコモコで可愛い~!」


 寝巻姿に満足すると2人は使用人に鏡の前に移動するよう促され椅子に着席する。使用人に髪をブラシでほぐされている間、庶民のリリアにとって慣れないお世話に緊張する。顔が強張り目の前に輝く鏡を見つめ続けていると視界に謎の装置が端に映る。


リリア 「これ、何だろ…?」


ネイリー 「あぁ、それは温風が出る温風機マジックドライヤーだな。髪を乾かすのに便利だ」


 隣に座るネイリーがそう呟くと、使用人は金属製の取っ手温風機マジックドライヤーを握りスイッチボタンを押す。激しい風の音が部屋中に鳴りリリアは驚くがネイリー、使用人達は慣れているのか気にもせず濡れた髪にあてる。数秒髪にあてても何の変化が無くリリアは期待外れ…と思っていると次第に湿っていた髪がサラサラになる。


リリア 「わーーー!!濡れた髪が乾いていくー!」


 子供のようにはしゃぐリリアにネイリーはクスッと笑う。髪はサラサラになりリリアは感動の余りにルンルン気分で廊下に繋がるドアの前まで向かう。廊下に足がついた途端、真横からガチャガチャとドアノブを回す音が聞こえ振り向く。


ライト 「ネイリー、リリア!いい風呂だったな~!俺の身体、さっきまで汗びっしりだったのにもう綺麗さっぱり!」


マレイン 「2人も今、出た所なんだね」


 男性組も風呂からあがり、寝巻姿で女子組と鉢合わせする。お互いに顔を合わせるとネイリー、リリアはライトの髪型に目線が移る。


ネイリー 「ライト…その頭、一体どうした?」


リリア 「魔法道具で遊んだんでしょ…」


ライト 「かっこいいだろー!」


 真下から温風機マジックドライヤーの風を浴び続けていたのか、ライトの毛先は真下ではなく逆立ちしていた。


ネイリー (変な頭だな)


リリア (だっさ…)


 ヘアスタイルを自慢げに話すライトだが、女性の2人は逆立ちしている髪を冷めた目で見る。


マレイン 「ふふ。ライト、楽しそうだったよ」


 マレインは先程の光景を思い出しながら笑う。ライトは浴槽から出ると、使用人に濡れた髪を綺麗にブラシでほぐされ気持ち良さの余りに目はトロンとなる。使用人が温風機マジックドライヤーのボタンを押した途端。温かい風が勢いよく出るとライトは覚醒したかのように目を大きく開き、使用人から温風機マジックドライヤーを奪い取ると自分で髪を乾かし、結果的に髪は逆立ちしていた。


ライト 「なぁ。マレイン、明日はどの村にいくんだ?」


 問われたマレインは目線を上にあげ考え込む。


マレイン 「んー。明日はウィンド村に行こうと思っているよ」


ネイリー 「風魔法を扱う村か。そういえばダイヤスファ国に入国した時、2人の姉弟が風魔法を操っていたな」


 サファイアローメン国からダイヤスファ国へと入国した時、送迎の呼び込みをしていた2人の人物像を思い浮かべる。冒険者ギルドへと向かう最中、魔物に追われているマレインを救出しその後、運転が荒いから…と無料で送迎する清らかな心を持つ姉と弟。


リリア 「リサとエルだよね!ウィンド村にいるかなぁ~?」


マレイン 「ウィンド村は風を自由に操り、素早く移動するのが可能だからね。あそこの村は送迎、荷物の運搬が主な仕事だし2人はいると思うよ」


ネイリー 「ダイヤスファ国もサファイアローメン国のように村によって役割があるのか?」


マレイン 「うん。昨日訪れたウォーター村は水を操り農業が得意だね。今日、訪れたアース村は土魔法で造形し建物を建築するのが主にだよ。そして、火を操るファイアー村は金属製の武器、装飾品など作るのが得意だね」


 村の仕事を細かに説明するマレインにの話に3人は「へぇ~」と関心した反応を見せ頷く。村の役割に関心する3人だが、ネイリーは特定の村に強く興味を示していたようで目線を上にあげる。


ネイリー 「モノづくり…。ファイヤー村に興味があるな…」


 ネイリーの発した言葉にライトとリリアはドキッとし身体は石のように固まる。

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