第78話 アース村
休憩の時に遠くの位置から眺めていた円形状の壁まで歩き続ける事1時間。4人はようやくアース村の門まで辿り着く。
ライト 「壁がでけー!!」
アース村の目の前に立つ4人は壁の高さに驚愕する。門をくぐり抜ける位置に門番が立ちまるで村ではなく、アース国では無いのではないだろうかと思わせる雰囲気だ。
「お前達!アース村に何かようか?」
壁の高さと守りに徹底しているアース村の前で口をポカンと開け、如何にもアホ面をしているライトに仁王立ちする門番は鋭い目で声を出す。
マレイン 「驚かせてすまない。私達は冒険者だ」
自国の王族であるマレインは、このようになる事を分かり切った様子で予め冒険者パスポートを手に持ち門番に見せる。マレインの他、3人もマジックバックをガサゴソと漁り冒険者パスポートを門番に見せる。
「マレイン・ダイヤ…。まさか、マレイン王子ですか!?」
マレインは右手に持つ冒険者パスポート横目で見る。『マレイン・ダイヤスファ』の『スファ』が幸いな事に人差し指で隠れていたが、ゾッとしたマレインは直ぐに冒険者パスポートを背中に回す。
マレイン 「あ…あぁ!違う違う!私の名はマレーイン・ダイヤだよ!受付の人が間違えたのかな~?あはは!!」
マレインの背後に立つネイリーは門番の反応を見た瞬間、冒険者パスポートのサファイアローメンの名をすぐさま指で押さえる。
「びっくりした~!そうだよな。王子様が急に村に何て来ないよな~!」
驚愕した門番だが、なんとか身元を隠し通した事にマレインは安堵する。
「んじゃ、入っていいぞ!」
門番が横にずれると4人はアース村の中へと入っていく。
ライト 「まるで他国に入国するぐらいな勢いだな…」
ネイリー 「あぁ。だが、このくらい守りを徹底していると事件も少ないだろうな」
リリア 「村の周りにもあんなに高い壁があるしね…」
3人は改めてアース村を包み込む高い壁を見つめる。
マレイン 「確かにアース村で事件は少ないね。ここの守りの徹底さはダイヤスファ国でも誇りだよ」
3人は高い壁を見つめながら話すマレインに視線を移す。マレインは口角が上がりながらアース村の事を自慢げに話す。
ライト 「この村では誰に稽古して貰うんだ?」
高い壁を見つめていたマレインは声に反応する。目線を上にし、腕を組み考え込む。1分も経たずに答えが見つかると、手を叩きライトの顔を見つめる。
マレイン 「昨日と同じで飲食店にでも行こうか。情報収集するならあそこが一番だろうしね」
3人は頷くと、マレインを先頭に歩き出す。歩きながら辺りを見渡すとハンマーで建物を建設する音や、高い壁を修繕する音がカンカンっ!と鳴り響いていた。
ライト 「…っ!すぐ側で良い匂いがするぞ!」
マレイン 「ははっ!ご名答!もう目の前が飲食店だよ」
マレインは目の前に立つ建物に指を差す…が一方、ネイリーは呆れ顔でため息を吐く。
ネイリー 「ライト…。まだ食べるのか?」
リリアは顔をあげ太陽の位置を確認する。流石にまだ天辺には昇りきってはおらず、朝10時頃の位置だった。
リリア 「まだお昼ご飯には早いから食事は禁止!飲み物程度にしときなよ?」
リリアが腰に手を当て険しい表情を見せると、ライトは中腰になる。
ライト (他のも食べたいけどな~…でも、ここでリリアに逆らったら…)
ライトは目を上にあげ妄想する。
―――【妄想】
空はすっかり暗くなり、野宿をする事となった4人。ライトは火を起こすがリリアは腕を組み顔を逸らす。
リリア 「ライトはアース村で私の言う事を聞かなかったから食事抜き!」
ライト 「そ、そんなぁ~~…」
怒るリリアにライトは肩を落とす。しかし、背後から落胆したライトの肩をポンポンっとネイリーは叩き腕を組む。
ネイリー 「しょうがない。私が作ってやろう」
ライト 「えっ!ネイリー、無理するなって!」
ネイリーはライトの発言など気にする事も無く料理の作業に掛かる。そして30分後―――
ネイリー 「出来たぞ」
底の深い器をライトに突き出す。
ライト (食べたくない!食べたくない!なんだこのゲテモノ料理は!)
器の中には紫色の汁にプクプクと気泡が出来上がり野菜であろう真っ黒な物体が、混じり合いライトは受け取らず息を呑む。
ネイリー 「ん?食べないのか?しょうがない、私がスプーンですくって口に運んでやろう」
ライト 「イ、イヤッ!俺はいら―――」
ネイリーは得体の知れないスープをスプーンですくうと、必死に抵抗するライトの口の中に無理やり運ぶ。
ライト 「グッ…ぐはっっ!!!」
ライト・フォーレン
ネイリーが作った料理を食し16歳にて死亡。
―――――――――――――――――
ライトは妄想を終えると身震いをする。
ライト (こ、ここはリリアの言う事を素直に聞こう…)
妄想をしたうえ、答えが見つかると中腰だったライトは顔をあげ背筋を伸ばすとあからさまに浮かない表情でリリアの顔を見つめる。
ライト 「………ハイ」
普段から料理を作るリリアにライトは逆らう事は出来ず、小さな声でボソッと返答する。
マレイン (ライトはやけにリリアに素直だな…。何か弱みでも握られているのかな?)
飲食店を目の前にシュンと落ち込むライト。昨夜の晩御飯、今日の朝食からは予想も出来ない一転とした顔に、マレインはフフッと口を抑え微笑む。
マレイン 「じゃあ、店の中に入ろうか」
マレインは3人に声を掛けると、先頭に立ち飲食店の扉を押す。
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