第77話 演劇の舞台
シーッ!と小さな声を出す人物はライトだった。
ライト 「折角外で隠れていたのに、大声出したらミラにバレるだろ!」
小さな声でライトは話すが、手で口元を塞がれたネイリーとリリアは眉を寄せ睨みつける。
ネイリー 「フガーー!フガーー!」
リリア 「モガモガモガ!!」
口元を塞がれても尚、2人はライトを鋭い目で話す。
ライト 「2人とも!頼むから静かにしてくれー!俺は演劇の舞台に立ちたい訳じゃないんだー!」
2人は顔を合わせると、目線を上に移し舞台に立つライトを想像する。
―――【想像】
ライトは王子様の姿で舞台に立つ。そして目の前で両手を合わす女性に向い跪く。
ライト 「あ、あぁ…君は…何て…あれ?どこまで読んだっけ?」
観客席からはブーイングの声が飛び交う。挙句の果てにゴミを投げられる始末だった。
ライト 「え、えと…。お前の…ような奴に…娘はやれん!…あっ、これ王様の言うセリフだ!」
スポットライトに照らされているライトだが、照明が突然暗くなり舞台は強制中断となった。その後、文章もろくに読めなく覚える事も出来ないライトは、団長から追放され露頭に迷う生活を送っていく事となった。
―――――――――――――
ネイリー 「フファファファファ!!」
リリア 「フフー!!モガモガモガモガ!」
想像終えた2人はライトに指を刺すと、目を細め盛大に笑う。盛大に笑う2人にライトはムッとし如何にも不愉快な顔をする。
ライト 「真面目な話をしているのに、何で笑うんだよー!もう、俺先に行くから!」
口元から手を離すとライトは一目散に走る。
マレイン 「あ!ライト!待って!」
屋敷の玄関口から過ぎ去るライトにマレインは手を伸ばす。マレインが話している間にライトは屋敷の前から姿を消し、後を追うように走る。
ネイリー 「あ!待て!」
リリア 「2人とも、待ってよ!」
屋敷の前から姿を消した2人の後を追うようにネイリー、リリアも走り出す。屋敷の窓から外の景色を眺めていたミラは走り出す4人の姿を直視する。
ミラ 「ライト様に逃げられましたわね…。でも、ライト様の手首に装着されている装置が外れない間は屋敷に滞在するとおっしゃってましたし…。まだまだ時間はあるわ!」
ミラは窓越しでガッツポーズをすると、早速ロマンス小説を開く。庶民の恋役をライトに当てはめ、1人で妄想しながら心の中でキャーキャーと叫ぶ。
ライトは3分間走り続けると、ようやく立ち止まる。そして、後を追っていたマレインの足も止まり膝を抑える。
ライト 「ゼェハァゼェハァ…疲れた…」
マレイン 「ハァハァ…沢山走ったね…」
息を整えると、追いかけ続けていたネイリー、リリアもようやく立ち止まる。
ネイリー 「ハァハァ…。急に口元を塞がれて驚いた…」
リリア 「ハァ…ハァ…。本当にね。あそこで休憩しようよ…」
リリアは木陰に指を差すと4人は移動し、草の上に座る。
ネイリー 「ライトの口から"演劇の舞台"が出てくるとわな」
リリア 「あはは!ライトったらセリフすら覚えられないのに!」
ライト 「んだよー!練習したら立つかもしれないだろ!」
女性組の2人は再び顔を合わせると「「絶対に無い」」とキッパリ言い切る。
4人はライト、リリアを中心にグビグビと水を飲みながら目の前に広がる景色を眺める。盛大な草原が広がる中ゴツゴツとした円形状で出来た石の壁。石の壁の中に薄っすらと家が見え、ライトは首を傾げると、右隣に座るマレインの顔を見つめる。
ライト 「マレイン。あの建物は何だ?」
マレイン 「あれがアース村だよ。あの壁の中に村の人達は住んでいるんだ」
左端に座るネイリーは顔を前に突き出し、右端に座るマレインを見つめる。
ネイリー 「建物も石で出来ているのか?」
マレイン 「うん。アース村の人達は土魔法が得意で土、石、岩など造形が出来るよ」
リリア 「建物の周りにある壁は住民達を守っているみたいだね」
リリアもまた顔を前に突き出しマレインの顔を見つめる。
マレイン 「土魔法で造形するものは硬いものばかりだからね。防御には特化しているね」
木陰で涼しむ4人。風がサーッと吹くと4人の髪がなびき、緑に埋め尽くされた木の葉がゆらゆらと揺れる。全力疾走した4人はアース村の建物を呆然としながら見つめる事10分が経つとライトは立ち上がる。
ライト 「おしっ!休憩もしたし、そろそろアース村に向うか!」
ライトは気合を入れ声を出すと立ち上がる。残りの3人もライトの声に頷き、座っていた草の絨毯から立ち上がる。
ネイリー 「次は土魔法を教えて貰わねばな」
リリア 「だね~!マレイン!頑張ろう!」
笑顔の3人に注目されたマレインは微笑む。
マレイン 「そうだね。次も頑張るよ」
4人は再び足を動かし、アース村へと向かう。
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