第69話 意気込み
エデインの冒険者ランクが自分達より上だと、現実を受け入れた3人は悔しい表情をする。能力封印装置を装着され、座り込んでいたライトは立ち上がる。
ライト 「絶対にゴールド2以上になる!」
力強い言葉にネイリー、リリアも頷き、ライトの意見と同じ考えだった。
ネイリー 「ああ、アイツ以下は私のプライドが許さない」
リリア 「ゴールド2以上になって、絶対に見返してやるんだから!」
エデインの不愉快な発言で、重苦しい雰囲気だったが、3人は悔しさをバネにし、活力に溢れんばかりの瞳を取り戻す。
マレイン 「私も弟といえど、助けて貰った3人に対して、あそこまで言われて黙っていられないよ。絶対に皆に追いつくように頑張るから」
どことなくオドオドしていたマレインは、この場限りは、すぐに目線を逸らす事も無く3人の顔を見続けながら話す。
ライト 「よし!んじゃ、マレインの修行を―――」
4人は今後の行動に意思を固めると緊張感が解れたのかライトのお腹の音が鳴る。ライトがお腹を触ると続いて、ネイリー、リリアも顔を赤らめお腹を触る。
ライト 「ハラヘッタ…」
ネイリー 「私も流石に…」
リリア 「うん。お腹空いた…」
お腹を触る3人にマレインは微笑む。
マレイン 「そういや、ご飯まだ済ませてないね。とりあえず、ここから近くにあるウォーター村に向かおうか」
4人は冒険者ギルドを後にウォーター村へと向かう。
―――【30分後】
ライトはジョッキグラスをテーブルの上に勢いよくゴンッ!と置く。
ライト 「ぷはーーーー!!この『メロンクリームソーダ』最高にうめぇーーーー!!ゲプッ!」
食後のデザートに注文した『メロンクリームソーダ』をライトはこの世に産まれて良かったと思える程の顔で堪能する。ネイリーとリリアは右手にスプーンを握りながら、ストローでドリンクを吸い込みゴクンッと飲む。
ネイリー 「んんっ!久しぶりに飲んだが、やはり美味しいな」
リリア 「しゅわしゅわ~~~!しかもその上にアイスクリーム乗せるとか最高~~!!」
3人の至福な笑顔にマレインも気持ちが昂りつられて笑顔になる。
マレイン 「ダイヤスファ国の有名な飲み物だからね。気に入ってくれたようで良かったよ」
食後の『メロンクリームソーダ』を堪能している間に、マレインは店員が通り過ぎる間に手をあげ声を掛ける。
「追加でご注文かい?」
店員は4人が着席するテーブルの側で立ち止まり、ペンとメモを取り出す。
マレイン 「いや、注文では無いのだが…お願いがあるんだ」
「お願い?何だい?」
マレイン 「誰か、私に水の魔法を教えてくれる人はいないかな…と」
店員は追加で注文をしない上に呼び止められ、無駄な時間が増えた…と嫌な顔を見せる。
「ここの村では毎日毎日、働かないと生活できないんだ。そんな暇は無いよ」
マレイン 「報酬はしっかりと支払うよ」
マレインは腰にかけているマジッグバックからお金を取り出しテーブルの上に置くと店員は驚く。
「こ、こんなに!?」
4人が飲食したメニューはお店の中で高価なものばかりで、テーブルの上にはどっさりと通貨が置かれていた。
マレイン 「今日の食事代を3倍に支払う。その代わりに―――」
「あぁ!分かった!ウォーター村で水魔法が得意なやつを呼んでくるよ!」
店員はテーブルに置かれた通貨を早々に回収したいが為に居ても立ってもいられず店の外に出ると猛ダッシュで姿を消す。
再び店員が店外からこちらへと向かい姿を現すと、背後には20代ぐらいの女性を連れて4人の前へ姿を出す。水色の肩まで伸びるウェーブ巻きの髪型が揺れ、服装は白のワンピースを着用していた。まさに、清楚な女性といった印象だ。
「ハァハァ…。お客さん、おまたせ!こちらがウォーター村で水魔法を一番使いこなせるレイラだよ!」
店員の背後に立つレイラは、4人が座るテーブルの目の前に立つ。
レイラ 「は、初めまして…」
マレインは席を立つとレイラの前へと駆け寄り、手を前へ差し出す。
マレイン 「私は、マレ…マレーインと言う名だ。よろしく頼む」
流石に自国の王子の名を出すのに躊躇したマレインは庶民に対して『マレーイン』と名を口に出し自己紹介をする。レイラは手を差したマレインの手を握り握手を交わす。
レイラ 「マレーインさん、こちらこそ、よろしくお願いします」
その後、レイラは4人を魔法を練習する場へと案内する。4人がレイラの後をついていくと、大きな段になった噴水に地面は固い土で埋めつくされた場へと辿りつく。ライト、ネイリー、リリアは練習の邪魔にならないよう、大きな噴水の側に設置されている横長の椅子に座る。
レイラ 「ここなら十分に練習できると思います。マレーインさんは魔法で得意な属性は…?」
マレイン 「私は、氷が得意だよ」
マレインの返答にレイラは、とてつもなく驚いた表情をする。
レイラ 「えっ!?氷!?失礼ですが…マレーインさんは庶民ですよね?」
マレイン 「あ…あぁ、そうだけど…」
レイラはマレインが着ている服装を何度も見返す。庶民設定をしているマレインはぎこちなく返答をすると、レイラは頬に手をあて考え込む。
レイラ 「氷は元々、水の応用魔法です。氷が使えるのは貴族様が多いので…」
マレイン 「あ、あはは…庶民校に通っている時にたまたま扱えるようになってね!!」
あからさまに動揺するマレインは何とかごまかす。自分の身分がバレた暁には庶民が王族に対し無礼を働いた…と処罰が下るのもあり得る話しだからだ。
レイラ 「でも、氷は水の応用魔法です。水が基礎ですのでもう扱えるのでは…?」
レイラの一言にマレインは一呼吸し、足元に青色の魔法陣を出し、詠唱をする。
マレイン 「
水の初級魔法を詠唱するマレインだが、水では無く、カチコチに凍った氷の線が出来上がる。
マレイン 「この通り、水魔法を詠唱しても、必ず氷になってしまうのだ…」
詠唱された氷は、遠い位置で床に落ち崩れると氷柱程の大きさとなり、太陽に照らされ水に溶けてゆく。
レイラ 「もしかすると魔法を詠唱完了の時に
レイラは溶けていく氷を眺めながら話す。
マレイン 「
マレインは腕を組み考え込む。
レイラ 「魔法は本来、
レイラの言葉にマレインは黙り込む。まさに、図星だった。
マレイン (確かに、私は常に氷を
マレインはふと、過去の事を思い出す。
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