第68話 見下す者
「おやおや、兄上。その服装は…ついに庶民まで落ちたのですか?」
4人はマレインを兄と呼ぶ人物を一斉に見る。
ライト 「あ、あ、兄!?」
リリア 「え!?兄弟!?アレ?なんだか顔が…ソックリだし見た事あるような…」
2人はマレインと兄と呼ぶ者を交互に見る。兄と呼ぶ人物はマレインが先程まで着こなしていた質の良い布に色鮮やかな色の刺繍、違いを言えば腰辺りまでに伸びるダイヤスファ国の紋章が刻印されたマントを着用していた事だった。どことなくオドオドとしたマレインとは真逆で、あからさまに『王族』と呼ばれるに相応しい凛とした顔をし、堂々とした立ち振る舞いだった。
マレイン 「…エデインか」
マレインが名前を口にすると、ライトとリリアは対抗戦の風景の記憶が一気に蘇りエデインに指を差す。
ライト 「あーーー!!お前、貴族校にいた!」
リリア 「確か…ネイリーと互角で結局、試合が決着がつかずもう一人の2席!!」
ライトとリリアに指を差されたエデインは不愉快な顔をする。
エデイン 「フンッ!庶民がきやすく私に話し掛けるな。まぁ…でも」
エデインはライトとリリアを交互に見ると鼻で笑う。
エデイン 「兄上の能力に相応しいご友人ですね。ネイリー姫もわざわざ庶民とつるんで…お情けで同行しているのですか?」
エデインの皮肉な言葉にネイリーは一気に頭に血がのぼる。
ネイリー 「エデイン…口を慎め。それ以上、ライトとリリアを馬鹿にする発言をするつもりなら私はお前を許さない」
低い声で話すネイリーは拳を強く握りしめ、いまにもとびかかり殴ってしまうのではないか…と思う程に表情は怒りに満ちていた。
エデイン 「ははっ!本当の事を言っているだけだろ?庶民校の首席だろうが3席だろうが所詮は底辺の争いだ!能無しの庶民が哀れで可哀想で仕方が無く兄上とネイリー姫は同行しているのだろ?」
マレイン 「エデイン!そこまでにするんだ!」
エデイン 「兄上もネイリー姫も王位継承が2位になり似た者同士ですね…。まさに類は友を呼ぶ!」
マレインに声を掛けられてもエデインが口を閉じる事は無くライトとリリアを交互に見ると小馬鹿に笑う。エデインは4人に対し見下し、見下げ、貶める言葉を次から次へと吐き捨てる。ネイリーのように、民を思う正義感の強い王族がいる一方、エデインもまた本来あるべき姿の国のトップとして、王族としての地位を受けた当然たる態度でもある。
エデイン 「庶民校で首席卒業のくせに就職先が冒険者ギルドしかなく可哀想に…。そこの白髪の女もオッドアイの瞳で産まれて哀れだな。庶民に産まれ、不気味な容姿に産まれ、まさに呪いだ―――ガハッ!!」
マレインに貶され涙目のリリアが身体を震わせていた瞬間だった。なぐった…殴った…殴った…?殴った!殴りやがった!!冒険者ギルドにいる全員が目の前の光景に対し思った瞬間だった。
ライト 「これ以上、仲間を馬鹿にする事を言うな!!辞めないなら俺は―――!」
手を丸めグーの拳で思いっきりエデインの顔をぶん殴ったライトはフゥーフゥーと息を荒く吐き、怒りの感情で周りの状況が見えず視界はエデインのみだった。
エデイン 「なぐっ…たな…。庶民の分際でこの私を殴りやがったな!!」
エデインは手を前に出すと足元に大きな赤色の魔法陣が出来上がり詠唱する。冒険者ギルドが崩壊する勢いの魔法を出すつもりだ!と危険を察知した受付嬢は互いの目の前に両腕を広げ立つ。
「お二方!おやめください!冒険者ギルドで乱暴な行為をした場合、それ相応の処分を下しますよ!」
エデイン 「口を慎め!私は王族だぞ!」
受付嬢が仲裁しても尚、エデインの足元には大きな魔法陣が消える事は無く詠唱を中断しないままだった。
「これ以上、大事になるのであれば『
『
エデイン 「ッチ…。興が醒めた。帰るぞ」
エデインを中心に3人の取り巻きが囲むと、ライト達の方角を振り向き睨む。冒険者ギルドの扉を開けると4人は外へと通り過ぎるとバタンっ!と激しい音が鳴り閉まる。受付嬢ははぁーっと深いため息を吐くと周りの冒険者ギルドはざわつき普段の賑やかな光景に戻る。受付嬢はライトの方をクルンッと振り向くと右腕を触る。
「ライト様。申し上げにくいのですが、冒険者ギルドで暴力行為をしましたので処罰として能力封印装置を3日間、右腕につけます」
受付嬢はマジックバッグから手錠の形をした能力封印装置を取り出すとライトの右腕にカチッと装着し3日間外れぬように冒険者ギルドの管理者権限で魔法を刻印する。
ライト 「…殴ったのは変わりないしな」
「えぇ…。冒険者ギルドのルールですので…。本来なら1週間は装着なのですが、向こうにも言動に対する非がありましたので」
ライト 「3日間、能力が使えなくても大丈夫だろ!飯さえ食えれば!はは……」
ライトは無理やり作り笑いをする。何よりも一番、仲間に気を使わせたくないが故だ。
マレイン 「3人とも、私の弟が済まない」
マレインは3人対し深々と頭を下げ謝罪をする。
ネイリー 「本当にな。…昔はあんな奴じゃなかったのにな」
リリア 「ライトが殴ったから何かスッキリしちゃった!ライト!よくやった!でも……こわかったぁぁ~~~!」
緊張感が解かれるとリリアはその場で大泣きし立ちすくむ。ネイリーはそっとリリアの肩をつかみ胸に顔を当てる。
ネイリー 「マレイン!この2人の為にも強くなるぞ。強さは何もかも納得させられる説得力がある」
マレイン 「うん…。私も3人達の冒険者ランクに追い付き、全員でエデインを越えよう」
リリアの頭を撫でながらネイリーはマレインの決意の言葉に頷く。
ネイリー 「エデインの冒険者ランクはいくつだ?」
マレイン 「確か…ゴールド2だよ」
マレインが喋ると3人は思わず黙り込む。涼しい顔をしていたライトとネイリーの顔が一気に無表情となり、大泣きしていたリリアまでも泣き止む。魔物と戦い、魔獣と戦い…そこまではライトとネイリーまでだが、更にはリリアが加わり魔人までとも戦闘を経験した3人は自分達のランクより下であろうと頭の片隅にあったからだ。まさかのエデインが自分達よりランクが上で脳がフリーズする。1分間、沈黙の間が流れライト達はようやく受け入れがたい現実を素直に受け入れる。
ライト 「俺達の…」
ネイリー 「ランクより…」
リリア 「上ーー!?!?」
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