第32話 それぞれの戦い③
———【ライトvs槍士の魔人ホタイル】
地面やすぐ側の海が揺れてしまうのではないかと思う程、ライトは大きな声で叫ぶと身体の周りに薄いが白いモヤを纏う。大きな岩まで吹き飛ばされた衝撃で意識は朦朧としていたが段々とハッキリすると魔人達と仲間の位置をキョロキョロと見渡し再度確認する。
ライト 「サバルと他の魔人はどこいった!?」
ホタイル 「仲間を探してるのか?そこの少年」
何の気配も感じ取れなかった背後から急に声を掛けられ、ライトは敵に狙われている…と思い地面に落ちた剣を直ぐに拾い構える。ライトの目に映るホタイルは身長が高い上に体格が良く、長い槍を縦にし戦闘態勢で構えている様子では無かった。たかが16歳の少年に本気を出すつもりは無いと言わんばりの余裕さだ。
ライト 「お前、サバルと一緒にいた魔人か…?」
ホタイル 「お前の相手は俺だ。俺と同じ近接攻撃能力者みたいだし、お前の仲間2人に比べて対等な勝負だろう?」
ライト 「俺はどんな能力者が相手でも負けるつもりは無い。ネイリーとリリアもそう思っているハズだ」
鋭い目つきで剣を構え続けているライトにホタイルはようやく自分も槍を横にし構える。
ホタイル 「仲間の事は気にしないのか…?」
ホタイルの質問に先程まで険しい表情だったライトがニッっと笑い自身満々に返答をする。
ライト 「ネイリーとリリアは強い。そう簡単にお前らには負けないぞ?強い相手でも戦略を練って絶対に勝つ」
ホタイル 「じゃあ、全力でかかってこい」
一定の距離を保ったまま暫く見つめ合いながら話していた2人はようやく同時に動き出す。地面の砂が舞う程、ライトは物凄いスピ―ドの早さで飛ぶように剣を向けるとホタイルは冷静に槍でガードする。ライトは構わず剣を振る事を止めず、ホタイルの隙がある場所に早業で攻めるが槍で全てガードされカンッカンッカンッカンッ!!と武器が交じる音が激しく鳴る。
ホタイル (サバルと戦ってた時と何か妙だな…それに身体に薄い白いモヤを纏っているみたいだ。この能力は見たことがないな…)
激しい攻撃を槍でガードしながら考え事しているホタイルに、ライトは剣を振るワンパターン攻撃を一瞬止め、横から顔面に足蹴りをする。顔面を足蹴りされたホタイルはガハッ!と思わず声が漏れライトと一定の距離を保つため下がるようにジャンプで移動する。
ライト 「おっさん!何か考えているみたいだけど、戦闘に集中した方がいいぞ!」
余裕に笑いながら発言するライトにホタイルは顔が歪むが、冷静を保つために平常心を取り戻す。
ホタイル 「なんだ、煽って。お前、『
ホタイルは力むと身体の周りには元々、魔人化した時に黒いモヤが纏っていたがモヤが更に大きくなる。一定の距離を保っていた位置から再びホタイルは動き始め、移動する速度は先程よりスピードが増し、槍を振り回す。槍の先端で切り裂くように振るとライトは剣で受け止め武器が交じるとゴンッ!!と鈍い音が大きく鳴り、地面の砂も大きく舞う。
ライト 「っく!!少し力が増してきてるな…!!」
ホタイル 「一撃でも当たったらお前は闇に浸食されて命はまず助からないぞ!」
互いに武器が交じる中、ライトはホタイルの槍を受け止めていたが先程より力が増していた。砂で足が滑らぬように配慮しながら前へ前へ剣を押し出そうとするものの、ホタイルの力が強く押され気味となっている。苦戦しているライトにホタイルは槍を一瞬、剣から突き放す。驚いた表情をしているライトの隙にホタイルは顔面に目掛けて槍を突こうとするが目の前に特殊能力のシールドを張りカンッ!と音が鳴り攻撃をガードする。舌打ちするホタイルにライトは剣を横に振り、斬ろうとするが即座に黒色のシールドを身体を包むように張りガードする。互いに苦戦する中、再び一定の距離になるように同時にジャンプし離れる。2人の早い移動で砂が塵のように舞い、緊張感が続く中、ライトの表情から笑みが浮かぶ。
ホタイル 「お前、顔が笑い始めてどうしたんだ?頭狂ってるのか?」
ライト 「いや~、学校の時を思い出すなぁって。久々に強いやつと戦えるのが楽しいんだ!」
見くびっていた相手に笑いながら思わぬ言葉を掛けられ、ホタイルは常に平常心を保とうとしたが遂に勘に障りイラっとした表情を見せる。再び互いに動き始め、力が増しているホタイルに対し、槍の攻撃を全て受け止めるライトは既に動きについていける状態となり次第に感情的に槍を振り回す。激しく武器が交じる音が鳴り響く中、理性が段々と無くなるホタイルに隙が出来始めライトは剣で槍を遠くの位置まで振り払う。
ホタイル (感情的に武器を振り回してしまった。終わりか…)
遠くまで吹き飛ばされた槍は砂の上でバサッ!と突き刺さる音が鳴り、ホタイルはその場で跪き動く事を諦めた。ライトに対し、『惨敗』だ…と負けを認めた行動でもあった。
ライト 「おっさん。1つだけ教えてくれよ」
ホタイル 「……なんだ?」
ライト 「何故、ブルー村を不漁にさせたんだ?」
ホタイルが返答しようと口を開くと空から大きな声が聞こえ始める。
サバル 「そんなの決まっている。お前ら人間を困らせるためだ。そうすればあの方は喜んでくれるんだ!」
空に浮かんでいたサバルは2人の激しい戦闘の音で目覚めると、ライトに狙い定め剣を大きく振り、黒い衝撃波を放った。砂は嵐のように舞い、黒い衝撃波をガードしようとライトは特殊能力のシールドを目の前に張るが力任せで身体ごと吹き飛ばされ、再び隠れていた大きな岩に思いっきり当たり、ガハッッッ!!と衝撃の苦しみで気を失う。
サバル 「闇の能力を持ちながらも人間に負けてしまうとは。あの方に顔向け出来ないくらい屈辱だ…。しかも12
ホタイル 「本当にな…。あの方と顔を合わせられない」
サバルは空の浮かんだまま見渡すと、アサメラとアワードが血を流し横たわっている姿を確認し表情は歪み唇を噛みしめる。すぐ側で横たわっているネイリーとリリアにはほぼ傷が無く自分達の仲間であるアサメラとアワードは負けてしまったのであろう…と誰でも考えに至る程だ。
サバル 「アサメラとアワードもあんな子供みたいな奴らに倒されたな。…3人共、息の根を切ってやるか」
空に浮かんでいたサバルは地上に足をつけ、ライトの側へとゆっくり歩きながら握りしめている剣を構える。
サバル 「じゃあな」
太陽が段々と高い位置まで移動し日の光に照らされる中、気を失い横たわっているライトの姿を目障りな眼で見つめ、剣を振り落とす。
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